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共通教養(科目)に〈デザイン〉を摂り入れる小さな企てについて。

2022年度の後期から、近畿大学の共通教養科目(原則として全学開講、ただし学部によって差異あり)の教養特殊講義Cの一つとして〈デザインマインドが拓く価値創造〉という講義を立ち上げました。

この科目ができたきっかけは、昨年度に本学のアカデミックシアターが実験的に開催した学部横断的なリベラルアーツ講座にあります。そこで本学バイオコークス研究所の冨田義弘先生とご一緒させていただく機会がありました。

その講座それ自体は、いささか急に開講が決まったこともあり、参加学生はそれほど多くはありませんでした。そのため、今年度は開催されなかったようです。しかし、私にとってこの機会はまことに大きいものでした。

というのも、サービスデザイン系の講義(ワークをともなうもの)をやろうと思うと、やはり何らかの「お題」が必要です。本学はもともと理工系を発祥としていて、しかも実学志向を謳ってもいます。その点で、いわゆるシーズはたくさんあるのですが、そことつながる機会はあまりありませんでした。縦割り思考が強いのは、やむを得ない部分もあるとはいえ、惜しむべきところです。

そんななかで、リベラルアーツ講座で冨田先生とご一緒できたこと、さらに冨田先生が乗り気になってくださったことは、重要な跳躍台でした。

経営学部の事務方もずんずんと進めてくれたので、スムーズに開講のための事務手続きもすみ、この9月から始まったわけです。

カリキュラム上の位置づけは、共通教養科目。純然たる全学開講というより、各学部がどれを受講可能にするか決めるスタイルのようで、今年度は経済学部、経営学部、理工学部、建築学部、国際学部の5学部の学生が履修できるようになってます。もちろん、1年生から履修可能。

経営学部から20名強、それ以外の学部から10〜15名が履修してくれてます。総計70名強。

最初の2回はオンライン(zoom)で、そのあと対面に。チームわけはできるだけ多くの学部の学生と一緒にできるように、あと学年や性別もいくらか配慮して、こちらで構成。

ワークをしはじめた頃は、なかなかぎごちないところがありました。今日(2022/10/27)で講義も7回目になり、だいぶグループでの議論も活発になってきました(もちろん、チームごとに盛り上がり度合いの差はあります)。

重視してるのは、ほとんどの受講生が、おそらく初めて体験する学びである点。たとえば、経営学部の学生だけであれば、ビジネスという点を基軸にもできるわけですが、多様な学部から受講してくれているので、ある意味で“安定的な前提”に立脚できません。

一方で、1回生なので、そこまで深く専門知識を得るところにも至っていないことを想定したほうが現実的。しかも、コロナ禍以来、なかなかいろんな体験もしづらい状況。そうなると、学生の〈知識の収納庫〉(川喜田二郎『続・発想法』17-18頁)も多くはないかもしれない。

で、そのこと自体はあまり問題ではなく、むしろそのことに本人が気づいて、そこからそれぞれの所属学部での専門知識であったり、それとはかかわらなくてもいろんな知見・知識であったりを、自分から獲得しにいくようになってほしい。そこがこの科目を開講した狙いでもあります。

実際、現時点では、なかなかアイデアが出てこない、広がらないという感想も寄せられてます。でも、「それが最初は普通なんであって、いろんな知見を重ねていかないと、着想には至らないってことをわかってくれたら、そしてそこから知見を広げていってくれたらええんやで」と繰り返し伝えてます。その意味で、私自身はデザインマインド(姿勢 attitude としてのデザインと似た意味合いで使ってます)があることで、専門知識の修得の入り口になるんじゃないかとも考えています。もっと言うと、専門知識の修得をへて、再び〈デザイン〉に戻ってくると、より学びとしての効果は大きいんじゃないか、と。このあたりは、特に測定してません。測定するとなると、けっこう長期にわたるし、追跡が難しそうなんで。

ともあれ、今回のここまでの展開は、そう悪くない感じ。来年度も継続したいと考えてます。

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