スターウォーズとディズニー


書かずにいられないので書きます!

ネタバレは最大限に避けてます。

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今日は午後から、
「スターウォーズ/最後のジェダイ」を観てきました。

スターウォーズが好きでなければ、全っ然興味のないだろう記事になる予感ですが、スターウォーズの内容というよりは、「スターウォーズとディズニー」という観点からちょっと考えてみようと思うので、もしよければお付き合いください。

エピソード7が公開される前までは、「旧3部作」と「新3部作」という分類が一般的でした。「旧」はエピソード4〜6で、「新」は1〜3という分け方でした。

それが、エピソード7(フォースの覚醒)が公開され、また昨日12/15にエピソード8(最後のジェダイ)が公開されてからはこの分類がさらに、「旧3部作」「新3部作」、そして「ディズニー3部作」という分類になったと思います。(世間では「続3部作」と呼ばれてるらしい。)

そして今回のエピソード8(最後のジェダイ)によって、「ディスニー3部作」という分類には、より強い意味が加わえられたのではないかと思いました。

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2012年にウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカスフィルムを買収したことにより、「ディズニー3部作」が製作されることになりました。スターウォーズファンからすると「新しい物語を観ることができるのか!!!!」と、興奮ものの発表でした。

エピソード7(フォースの覚醒)は、これまでの作品とはまったく毛色が違っていました。監督や脚本、製作総指揮といったポストにジョージ・ルーカスが参加しなかったことが大きな要因だと思います。

それによって生まれた大きな特徴が

・主人公が女性である
・重要なキャラクターに無名の黒人俳優がキャスティングされた

という点でした。

今回は、その傾向をさらに推し進め

・組織の上に立つ人物に女性がキャスティングされている
・重要なキャラクターとしてアジア系女性が登場した

という要素が追加されました。

白人中心のキャスティングで進んでいた物語に、演じる俳優の人種やバックボーンの多様性が追加されました。近年のディズニー映画では、ヒロイン像を従来の「王子様と結婚して幸せになりました」みたいなステレオタイプから脱却させようとしたり、一見悪役に思えるキャラクターの善の面といった人間の心の多様性を描いたりといったチャレンジがされています。

これはまさに、時代の流れに敏感に反応し、新しい価値観を吸収・提示していくという姿勢そのものです。ディズニーは、自社の他の映画と同様、「時代に合わせ、かつ時代の一歩先の新しい価値観を提示する」というミッションを、スターウォーズシリーズにも与えました。

新旧の6作では、「ジョージ・ルーカスが描きたい世界」が描かれることがもっとも重要な命題でした、おそらく。それと比べると、ディズニーが切った舵は、大きな進路変更であったと思います。

また、ディズニー特有のコメディの要素もたくさん盛り込まれました。

アナ雪でいうトナカイのスヴェンや、塔の上のラプンツェルでいうカメレオンのパスカル、白馬のマキシマスのような、「コミカルで愛らしく表情豊かな動物」みたいなポジションのキャラクターが追加されたのは大きな特徴だと思います。

新旧の6作にも、魅力的なドロイドや動物は登場しましたが、彼らが担うコメディの要素は、「ディズニー3部作」になってから織り込まれているコメディ要素とはまったく違う質のものです。

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ディズニーがやったのは「オールドファンが大好きな、ルーカスの世界観としてのスターウォーズを作る」ことではありませんでした。もちろん、ルーカスが手がけたスターウォーズへのリスペクトは最大限に盛り込みながらも、「スターウォーズという伝説的人気を持つ物語を使って、新しい客層や市場に作品をリーチさせていく」というチョイスをしたのです。

可愛いキャラクター(特にBB−8ね)しかり、女性の登用しかり、さまざまな肌の色を持つ俳優の起用しかり。

ルーカスのスターウォーズという「古典」の価値を十分に理解し、それを尊重しながらも、ディズニーが持っているマーケティング・データという資産をフルに反映させて、新しい時代のスターウォーズを作ろうとしているのです。

これは、なかなかできることではありません。

過去に作られたものの影響力が強く、またその完成度が高ければ高いほど、時代の変化に合わせてその作品の進む方向や要素を変えていくという選択は、とても大きな勇気を必要とする作業になります。ぶっちゃけ、リスクがでかい。

だって、保守的なオールドファンからのブーイングは、必至だから。

「こんなものスターウォーズじゃない」とか、「昔の方がよかった」とか、そんなことを声高にいう人たちがたくさん出てくるのは、必然だからです。

でも、ディズニーは、そのリスクを想定した上で、「新しい時代に合わせ、より多くの新しいファンを作るための作品づくり」をチョイスしました。目は、未来に向けられています。

スターウォーズファンの新規獲得、それによるスターウォーズ市場の拡大、ひいてはウォルト・ディズニー社としての利益の拡大も視野に入れてのことでしょう。当然ですね。

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オールドファンの保守的な思想によるブーイングが想定されているにもかかわらず、アウトプットを新しい時代に合わせて前に進めていく、ということ。僕としてはとても耳が痛いチョイスだなと思います。

日本のオペラ界のことを考えるからです。

オールドファンを満足させるためのアウトプットは、既存の市場のニーズに合わせた戦略です。でも、それだけをやり続けていくと、市場は自然に縮小していきます。新規のお客さんの流入量がどうしても少なくなるからです。

その危険を、ディズニーは知っていて、新たな顧客を得ることを選びました。事実、エピソード7(フォースの覚醒)はそれまでの新旧6作より、格段に多くの興行収入を記録しました。

「古き良きもの」を時代に合わせてモデルチェンジしていく勇気をもって、その選択をし続けることは、かなり難しいことです。でもやはり、その選択をし続けなければ「古き良きもの」は衰退し、朽ち果てた博物館の片隅でホコリをかぶって陳列されている過去の産物になっていってしまうのです。

「ディズニー3部作」となった新たなスターウォーズには、素晴らしいところがたくさんあります。同時に、個人的には「社会に迎合しすぎているな」と感じるような甘い要素もたくさんあります。でも、それはあくまで僕の感想であります。それに、全体的な感想で言えば、とてもエキサイティングで、楽しく、魅力的です。

「ルーカスのスターウォーズ」ではなくなったかもしれないけれど、「スターウォーズ」というサーガ自体は、2017年の世界に生きる人々に、しっかりと継承されています。そして、もしかしたら「新しいスターウォーズ」を入り口に、「ルーカスのスターウォーズ」を知りその魅力に気づくような新しいファンもたくさん生まれているかもしれません。いや、確実に生まれているでしょう。

オペラという「古き良きもの」の魅力にひかれ、今でもなお、オペラを歌うための技術を身につけ、いつかはオペラの舞台に立ちたいと思っている僕は、この「ディズニーの舵きり」から、たくさんのことを学びました。

「古き良きもの」をホコリまみれの遺物にさせないためには、リスクをとった「新しい時代に合わせたモデルチェンジ」が、絶対的に必要なのです。





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