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ショートショート チャリンチャリン太郎

フワフワの茶色い毛。クリクリの黄色い目。
「これからよろしく、太郎」
「にゃーん」
俺が8歳の時、新しい家族を迎えた。


「シャー!」
「ご、ごめん」
うっかり太郎を踏んづけた事があった。

チャリンチャリン

俺は、太郎の首に小さな鈴をつけた。
これで居場所が分かる。
太郎は不思議そうに駆け回っていた。


そんな太郎が去年の夏、亡くなった。
両親曰く寿命だったらしい。
17歳だった。


「うち、夏休みとかないから」
「そうですよね…」
現在、俺は日々激務に耐えていた。ここ数年帰省もしていない。
…俺は、この生活を一生続けていくのだろうか。
帰宅後、すぐベッドに倒れ込んだ。


チャリン


チャリンチャリン


懐かしい夢を見た。
なんだか暖かく、フワフワの夢。
「丁度この時期だっけ…」
いつも自由で、たくましい子だった。


「もしもし母さん、俺今年帰るから。
仕事?…まぁ、なんとかなるでしょ」
俺も見習って少し自分勝手にやってみようか。

目を閉じると、鈴の音が聞こえてくるような気がした。


【412文字】

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