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鉄のサボテンは何を語る?


鉄鋼メーカーで働く新社会人


 私が新卒入社で鉄鋼メーカーに働きちょうど一ヶ月となる。鉄は、玩具から高層ビル、自動車、ロケットなどの材料として徹頭徹尾幅広く使用されている。また、鉄資源は地球総重量の約35%を占め、加工のしやすさからも需要は常に一定数あるようだ。昨今では、カーボンニュートラルの影響を受け、CO2を排出しない製造方法を各会社で躍起になって開発しているらしい。

ざっとこんな業界である。お分かりいただけただろうか?
そして私は、そんな規模の大きい鉄に携わることができ、とても誇りに思っている。そしていつか私自身も世界を変える材料・システムを創造したいと夢を見ている。


サボテンを枯らす人


 サボテンとは、育てるのが簡単な植物の代表例とも言える。品種にもよるが、水やりは他の植物と比べ圧倒的に少ない。月一回程度で良いものもある。それでいて見た目が良い。つまり、手入れが少なく、おしゃれなインテリアである。

めんどくさがりな私にはぴったりだ。しかし、買うことはしない。なぜならそれすら億劫に感じるからだ。私の弟は、大学の寮でサボテンを枯らした。簡単が故に手入れを怠ったのだ。そして私もおそらく同じ轍を踏むだろう。

はい、ここまで話を聞いてわかる通り、私はサボテンすら(サボテンすらと言ったら怒られるかもしれないが)枯らす人なのだ。


鉄粉が舞う街

 私が住んでいる街は、会社の工場の近くにある。工場からは毎日のように鉄粉が放出され、車や家の表面には、黒い層を形成することも珍しくない。白い雪であれば見ていて楽しいが、一年中降る黒い雪は鬱陶してくてしょうがない。そして被害は、人にもある。多くはないが鉄粉によって咳き込む人もいる。

さてここで質問だが、どのようにすれば鉄粉から生活を防ぐことができるだろうか?

・車や家に網(カバー)をかける?
・風を常にかけ鉄粉を吹き飛ばす?
・磁石で引きつける?

色々考えたかもしれない。聞いておいてなんだが私も答えは知らない。
ただ、私にとって大事なのは、手入れが少ない、それでいて見た目も良いものだ。つまりペルソナ(顧客層)はサボテンを枯らす人だ。

例えば、鉄で構成されたサボテンはどうだろうか?鉄でできてるため、水やりはいらない。そして見た目は可愛らしいオブジェとなるのではないか!?

肝心な機能は何か?

そうだ、内部にマグネットでも入れておこう。
そうしたら周りの鉄粉を引き寄せることができるのではないだろうか?
とりついた鉄粉がサボテンのトゲとなればオシャレにはならないだろうか?


鉄のサボテン

こうして、私の想像の中にできたのがこの鉄のサボテンである。
この解像度ではまず実現はしないだろう。

しかし、私はサボテンのトゲのように尖り続けることはできると感じてる。
まだ入社一ヶ月、会社のために貢献したことは何もない。
どのようなサボテンになるのか、どのような機能を持つのか楽しみである。


新社会人へ

 ところで「鉄は熱いうちに打て」といった言葉がある。これは鉄に圧力をかけ加工する鍛造品を指している。鉄を単に型に流し込んでできる鋳造品とは異なり非常に強固な材質となる。そしてご存じの通り、鉄が熱いうちは変形がしやすく加工がしやすい。

要するに鉄が熱い最初の一年が今後の社会人生活を形成する上で重要な期間であることを意味している。
“より強固で尖った人、それでいて周りから信頼・必要とされる人“
それが私が望む人物像なのかもしれない。

そしてここまで見てくれた大学生・社会人の皆さん、私と共に日本の産業を支えていきましょう。その考えを鉄の掟にしておきます。


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