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西大分駅からフェリーのりばへ横断歩道を渡っている男女(2024.02.19)

タイトルのような男女を見た。

男、頭髪の生え際がすこし交代している。
女、厚めのメガネ。小太り。

二人ともでかいリュックを背負っている。多分テントとかも入っている。かなりまとまった旅行をしている感じ。横断歩道を渡りながら煙草を吸っている男。外野の視線・価値観などしったことではないという感じ。

二人の旅を想像する。二人は派遣労働者で、普段はライン業務に従事している。そこで出会った二人。お互いに男女として興味があるわけではないが、考え方や、嫌いなものが似ていて、一緒に旅行をするようになる。

二人でまとまった休みを取り、全国各地を旅行する。お互いの体臭や、食べこぼし、ゴミの片付け方など気にならないわけではないが、自分も似たようなものなので、一緒にいて楽だ。「おれたちは同じだ」と思う。

男は濁った水のような世界を生きていて、たまに水面から顔を出しては、また慌てて水の中に潜るような生活を長いこと続けている。手放すことができない煙草がそれに拍車をかけている。常に脳が痺れている。視界がぼやけている。

男は遠くへ行く時は船に乗ると決めていた。船に乗るのが好きなのには理由があって、その一つは長い時間世界と断絶できるからだ。夜中に甲板へ出て暗い海を見ていると、心が落ち着く。海の深い闇の向こうにある街の灯りがより他人事として感ぜられて良い。

もう一つの理由は、よく見る夢にあって、その夢というのが、海にぽっかり空いた大きな渦に吞み込まれてしまう夢。男はもうそんな夢を何度も見ていて、渦に巻き込まれて無重力の中を落ちて行く途中でいつも夢から覚めてしまう。しかし男はいつしかその夢を待ち焦がれるようになり、いつか実際に海で大きな渦に呑み込まれてしまうんじゃないかという妄想に憑りつかれて、好んで船に乗るようになってしまった。

それで今回も何喰わぬ顔して船に乗り込むのだが、実はその船に乗った全員が「大きな渦に呑まれる夢」に憑りつかれており、パートナーの女性も例外ではなかった。

という、想像です。

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