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しゃあしぃ(2023.10.18)

夕飯後、洗い物をしていると妻が隣に来て、義母が作った栗の渋皮煮を食べている。義母が完全に剝ききれていなかった皮を妻は流しにガンガン捨ててくる。シンクには今洗った食器類がまだあるというのに、無神経なやつだ。

そして
「もつ鍋は美味かったんか?」
「切干大根みたいなもんが一番美味いな」
「ケーキはシャトレーゼで十分やな」
「冷蔵庫のもずく食べるんか?」
などとしゃあしぃ。

「しゃあしぃ」というのは、うるさいだの煩わしいだのという意味を含んだ大分弁で、使い勝手が良い。毎日しゃあしぃ事だらけだ。

妻はインフルからの喘息で、ここしばらくまともに声が出ていなかったが、それもようやく戻り、今は普通に喋れるようになった。しかしその途端どうでも良いことをぼそぼそとよく聞き取れないボリュームで話しかけてくる。しかも頭のすぐ上では換気扇が動いているので、聞き取りにくいことこの上ない。

「もつ鍋は美味かったんか?味は薄かったか?」と、妻はまた今日の夕飯だったもつ鍋について訊いてきた。私は「美味かったよ」と適当に答えていたが、正直あんまり美味しくなかった。もつ鍋というより、いつも妻が時間がない時に作っている「適当な鍋」の具が一部もつに変わっただけのものだったから。味も確かに薄かったので、妻が見ていないところで味の素をこっそり振りかけていた。

私が適当に答えているのは多分とっくにバレていて、妻は「美味かったんか?」と執拗に訊いてくる。

しかしここで「いや~味が薄かったよね。キャベツもクタクタになって色も変わってるし。なぜか豚肉入ってるし。でも仕方ないよね。作ってくれているだけありがたいよ。ありがとう」などと答えようものなら一気に妻は機嫌を損ね、険悪モードになる事は目に見えている。今更私はそんな轍は踏まない。

ぼそぼそぼそぼそあーたらこーたら止めどなく隣で喋る妻。ぐちぐち言いながら渋皮煮を食べている。しゃあしぃ。うっとおしい。どっか行ったらいいのに。

しかし私がここで話を聞いてガス抜きしなければ、妻の鬱憤は他に行き場がないので、私はひたすらうなずいて時をやり過ごす。赤べこみたいに。

やがて満足したのか、飽きたのか、ようやくどこかへ行った妻。ああ良かった。これで洗い物に専念できると思っていたら、長女と次男のケンカが勃発。長女が遊んでいたアルファベットのパズルの「B」のピースを次男が奪ってどこかにポイしたとか言っている。

本当にしゃあしぃ事だらけだ。


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