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センセイは弟子

塾講師だった頃の思い出を細々とつづっています。

現場での実習の最初の1週間は、トレーナーであるT先生の後ろを着いて歩くことを指示された。
現場での1週間はどんな流れで進むのか、何曜日にどの学年の何の授業があるのか、何時に何年生が来て、何時に帰って行くのか、生徒が来るまでは何をしているのか、等々着いて歩いて学んで欲しいということだった。

授業の時間はT先生と一緒に教室に入り、1番後ろの目立たない席に座ってひたすらメモを取った。T先生はホワイトボードに何を書いたか、どんな問いかけをしたのか、生徒とどんな話をしたのか…。授業が終わればT先生の後について教室を出て、事務所に向かう。

3日ほど続けたとき、小5の男子に話しかけられた。
「ねえ、弟子はいつ授業するの?」
師匠であるT先生の後ろを着いて歩く私は正に弟子だったのだ。
その子はほかの先生に「こら、ちゃんとみかん先生と呼びなさい」と怒られていたが、私は弟子という言葉の響きがなんとなく気に入っていた。
先生としては生徒を指導しなければ行けない立場なのだが、「弟子」ってなんかいいなぁ、師匠について修行中ってなんかかっこいいなぁとのんきに思っていたのだった。

このときの私は、実習2週目に実際に授業をし始めて、「弟子」と呼んできた生徒に「弟子の授業つまんな〜い」と言われて凹んでしまうことをまだ知らない。

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