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センセイのセンセイ

塾講師だったころの思い出を細々とつづっています。

新卒で入社した場合、講師として現場に出られるようになるまでに本社での研修と現場の校舎での実習を修了する必要があった。今日は実習の際に出会った先輩について書こうと思う。

丸二ヶ月本社での研修を終えて、現場での実習をすることになった。私が配属された校舎は、県内でもトップクラスの成績を誇る公立中学校が近くにあり、やんちゃだが賢い中学生が集まる校舎だった。そのせいか、定期テストの時期になると生徒たちが質問に詰めかけたり、自習室はパンパンになったり、とにかく毎日バタバタと騒がしいところだった。

教室長は竹野内豊似の理科教師。そこにベテランの数学教師と、二年目の社会科教師、数少ない女性社員で、私のトレーナーとなった三年目の国語教師というメンバーが私を温かく迎えてくれた。先輩のことを仮にT先生と呼ぶことにする。私はこのT先生の「弟子」としての一歩を踏み出した。

配属初日。まだどんな校舎なのか、どんな先生たちなのか、先輩がどんな人なのか全く知らなかった私は緊張した面持ちで校舎の扉を開いた。たまたま先輩は生徒対応のため、事務所におらず教室長が案内してくれたのだが、何も置かれていないまっさらな銀色の机の上に、A5のノートが置かれていた。表紙にはかわいらしいイラストで、シロクマやペンギンや小鳥たちが私のことを見つめていた。

少し経ってT先生が戻ってきて、初めましての挨拶をしたあと、すこし照れくさそうに「これは、交換日記です」とノートをさして言った。
「かわいいでしょう?」と。
模擬授業や実際に生徒の前で授業したときの気づいたことを書いたり、私から悩みや質問を書いてくれたら返事を書きます。やりとりしましょうということらしかった。不安でいっぱいだった私には、ノートと先生のにこやかな顔が輝いて見えた。

結果的にT先生と過ごせたのは1ヶ月程度だったのだが、独り立ちした後も塾講師を辞めた今も、ノートの中にある、きれいで繊細な文字で書かれたT先生の言葉たちは私の宝物だ。


※校舎での実習や、本社での研修についてはまだまだ書きたいことはたくさんあるので、いつか書いていきたいと思います。


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