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自作モノローグ「お前なんか、ずっと暗闇のまんまだよ」

「お前なんか、ずっと暗闇のまんまだよ」

作/月見里りた

  ◼️友達二人が時間制の食べ放題ビュッフェで食事をしている。

そっかそっか…それは大変だね。そりゃ会うたびに白髪の数だって増えるよねえ…。白髪増えたよ?23歳でしょ?対して私と年が変わらないのに苦労してんだねえ…。

でもさ、結局またお父さんと同じで暴力振るうような人ってことでしょう?本当に今の人と結婚するの?

いやまあね、もう婚姻届け出しちゃったからしょうがないっちゃしょうがないけどね。もっと早く相談してくれれば良かったのに。彼のこと好きなの?あー好きなのか。どこか好きなの?私、女に手を出すような奴は何したって好感度0に戻るって思ってるけどね…。

あー、ごめんごめん、怒んないでよ。で、なんで結婚することにしたの?
「彼のことを変えられるのは私しかいないって」あーね、大抵DV被害者は口をそろえてそう言うのよ。

てか本当に変えられるの?そんな少し帰りが遅かったくらいで顔殴ってくるような男が。だって今日だってここ20時にでないといけないんでしょ。(時計をみて)ってあと15分くらいじゃん!早く食べちゃお、飲み放題も後一杯くらい追加いけるかな…。

え?何?なんできれてんの?迷惑ぶってないって。門限に関しては別に私は何とも思ってないけど、あんたが殴られるのが心配だからこういう風に言って…

は?偽善者?私が偽善者?生まれたときから幸せに愛されて暮らしている奴には気持ちがわかんないって?

あっそ…。そうだよね、初めての記憶は自分の父親が最愛の妻を殴っているところで、幼稚園の時も家庭が厳しかったことから友達の話題にもついていけず、中学では幼少期からのくせで自分のこといじめてくる奴には一つも言い返せなくて。あんたの人生ずっとそうだもんね。ずっとずっと暗闇でさ。

羨ましいよ。羨ましいよ!私からしたら。

私はあんたとは真反対の人生を歩んできた。小さいころから両親に愛されて、欲しいものは何でも買ってもらったし、やりたい習い事も何個もやってきた。でもね、私が社会人になって、家を出たら…一か月もしないうちに両親は離婚したの。私の前でね、二人とも仮面かぶってたんだって。仲良いふりして。

私が今まで経験してきた幸せな家族はぜーんぶ偽物だったってわけ!

しかも悪いことは立て続けに起こって、晴れて就職した会社でもそう上手くいかなくて、朝6時のアラームが鳴ると足がすくんで動かないの。精神科では会社でのストレスのせいだって。

いつもみたいに両親に相談した。もう会社を辞めたいから、一時的で良い、実家に帰らせてください…って!そしたらなんていったと思う?二人とも「今はもう、向こうがあなたの本当の親だからお金のことは向こうに頼りなさい」って。

お父さんもお母さんもね、新しい家族がいたのよ。

この気持ちがあなたにわかる?私は幸せな家庭しか経験したことないから、こんな暗闇に突き落とされて、どうしたら良いか分からない。ただの脳のない、箱入り娘だからもう頼る人も他所にいないのよ。

一緒にいてくれる人は、あんたしか…いなかったのよ。

でもあんたは私のことそんな風に思ってたんだね。
ずっと邪魔だった?妬んでた?
私と仲良いふりしてたんでしょ。

家族ごっこも友達ごっこも、もう沢山。
私は…あんたみたいにずっと変われないまま、誰かに執着して生きていく人生はやめるから。

あんたみたいのが、辛い暮らししか知らないあんたが、本当に新しい家庭を築いていけんのかね?

変わっていく姿を見せてあげるから。
私に執着して、その姿を目に焼き付けておきな。

悔しかったら…婚姻届けを破るくらいのパワーで、変わってみなよ。


※このモノローグは実際の体験をもとに書かれた作品です。特定の人物や団体、社会的概念に対して抗議するものではございませんのであらかじめご了承ください。

※基本、使用許可や上演料はいりませんが、設定の改変を行う際はご連絡ください。クレジットに「月見里りた」のお名前をお書きいただければ励みになります。

※作者を偽る行為や公序良俗に反する場や使用方法は固くお断りします。

月見里りた

lolita.frolita@gmail.com

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