紅嬬涙枯

紅嬬涙枯

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自作詩「鯨とネオンライトに浸ちゃって」

銀座の海。海の上。私は、泳ぐ。 京橋から銀座一丁目まで泣きながら歩いた。 街の人々は程よく私を無視し、 程よく驚いた顔を向けた。 銀座の街はきらびやかなオフィスカジュアルの布をひるがえし、 スカスカの街をすりぬけていく。 ここにいるのに、ここにいない。 スカスカのスルスルの。 飲みかけのビールの缶を、ベコベコへこます。 涙が落ちそうになったら、一気にアルコールを喉に注ぐ。 涙が溢れるよ。ビールが零れるよ。 溢れて、溜まって、海になる。 しょっぱくて、苦くて、気持ち良い

    • 自作モノローグ「はっ倒すぞ、てめぇ」

       発話者は美味しそうに食事をしている。  ふとしたときに思うんです。また首を吊ったらどんな感覚がするのかなって。  生きている苦しさが、喉元に食い込む紐の感触を恋しがるんです。  え?不思議ですか?そうですか。「あなたのような明るい人が…」って?  笑わないでくださいよ。私は嘘を言わない人間です。それは知っているでしょう?  …私が嘘をつけない人間だということは理解できるのに、私が何もかも上手くいっていないということは分かってもらえないなんて。  あ…私、中学も高校も

      • 自作モノローグ「厨二病★クラブ」

          制服を着た「厨二病クラブ」の部長が、部活見学の生徒に声をかける。  ようこそ、「厨二病クラブ」へ!  私がこの牢獄の騎士団長…君たちの世界の言葉でいうなれば「部長」という存在だ。  今日この牢獄の見物をしたいという物好きな生徒は君だね。入部するかどうかは見物を終えた後に決めると良い。  おっと、不思議そうな顔をしているが、ここに所属する他の十傑…君たちの世界の言葉でいうなれば「部員」を一目見れば、ここの魅力がよくわかるだろう。   部長はこれから紹介する部員の特

        • 自作モノローグ「来世」

          作/紅嬬涙枯     女は人形を抱えている   人形に話しかけている ランゼ、あのお星さまを見てごらんよ 瞬く星は燃えて流れて美しく消える ランゼ、あの鳥を見てごらんよ 番を見つけて遠くでさえずり合う ランゼ、あの薔薇の花を見てごらんよ 花粉を飛ばすこともせず、小さく独りで咲き誇る …面白くない 本当、面白くないもんだよ いやきっと…何か…思っているのかな そう、私は何かを思っている 私はこの感情を… 違う、「あの人に対しての」感情を 握りつぶしている 最後は酷

        自作詩「鯨とネオンライトに浸ちゃって」

          自作モノローグ「お前なんか、ずっと暗闇のまんまだよ」

          「お前なんか、ずっと暗闇のまんまだよ」作/紅嬬涙枯   ◼️友達二人が時間制の食べ放題ビュッフェで食事をしている。 そっかそっか…それは大変だね。そりゃ会うたびに白髪の数だって増えるよねえ…。白髪増えたよ?23歳でしょ?対して私と年が変わらないのに苦労してんだねえ…。 でもさ、結局またお父さんと同じで暴力振るうような人ってことでしょう?本当に今の人と結婚するの? いやまあね、もう婚姻届け出しちゃったからしょうがないっちゃしょうがないけどね。もっと早く相談してくれれば良

          自作モノローグ「お前なんか、ずっと暗闇のまんまだよ」