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文学館の学芸員さんのお仕事

山梨県立文学館のPR活動に参加させていただく機会が増え、「山梨文学館文学館で印象に残っていることは何だろう?」と思い返すと、展示を楽しむのはもちろんのこと、毎回の学芸員さんとのお話も楽しみの一つでした。そこで、学芸員さんが具体的にはどのようなお仕事をされているのか、どのような方なのか知りたいという気持ちからインタビューの機会をいただききました。

今回ご協力してくださったのは学芸員さんの中野和子さんです。私(谷)は中野さんにお会いするのは3回目でしたが、少し緊張しながら取材へ向かいました。インタビューは2021年6月24日、文学館と同じ敷地にある茶室「素心菴」で行われました。

学芸員のお仕事はどんなもの?

私からは「学芸員さんの仕事内容」についてお伺いしました。以前お邪魔した際には展示品の配置や照明の加減を調整されている様子から、展示品の説明に限らずレイアウトまでがお仕事なのだと考えていました。

「一日の仕事の流れを教えてください」と聞いてみると、予想外の答えが返ってきました。「ルーティンのように決まっていないんです~!わりと不規則で!」とのこと!!

展覧会が近づくにつれてそちらに力を入れるので、時期によって仕事の波があるそうです。展示の内容によっては、ほかの文学館や個人で所有されている方の元まで出張することも多いそうで、文学館内だけがお仕事のフィールドだと思っていた私はびっくり…。

一番印象に残ったのは中野さんの「実際、資料を借りてくるときに業者さんの美術品専用車に一緒に乗って借りに行くこともあるんです」というお話でした。「は!映画とかでよく見るお仕事!非常に重要な任務だ!」という気持ちと「学芸員さんが助手席に座ってたりするのかな~」と想像すると、「なんかかわいいな~」なんて思ったり。自分が同乗するとなったらドキドキでそわそわしちゃいますね。(中野さん談:実際は助手席ではなく、後部座席に座っています。)

ところで、貸していただくにはその方々との人間関係も築いていかなければなりません。初めてお会いする人にお願いをすることに戸惑っていた時期もあったそうです。ただ、普通の生活をしていたら出会えないような方々とお会いできるぶん、お一人お一人を大切にしていらっしゃることが伝わってきました。

資料を残すために日々収集・保存に励みながら実物を間近で見て触れることができるという特権と色々な繋がりができるというのは文学好きの方にとってはたまらないものなのではないでしょうか。私だったら自慢して歩いちゃいます。

館内の展示や仕事内容に目を奪われがちですが、展示されるまでに貸していただく交渉や責任を持って届けることまで担っていらっしゃることを今回の取材で知ることができました。

この年は〇〇の生誕何周年かという作家の情報を事前にチェックしておいて記念の企画展・特設展が考えられるそうです。文学に詳しい方は告知を見なくても、そろそろ誰かの展示が始まるんだろうな~と予想がついちゃうかもしれませんね。

文:谷双葉(山梨県立大学国際政策学部2年)

学芸員になったきっかけは?

今回のインタビューでは、ゼミのメンバーであらかじめ質問を考え、質問ごとにメンバーで分担し質問させていただきました。事前に質問を考える段階で、私(山﨑)は学芸員というあまり知られていない仕事をしている人はどんな人なのか興味を持ちました。そこで、人間性を引き出せるような質問を複数作りました。私の担当する質問パートは「学芸員になったきっかけと理由」です。以下、やりとりをご紹介します。

山﨑
「学芸員になられた理由ときっかけはなんですか?」
中野さん
「元々大学生の時に国文学を専攻していました。一方で学芸員課程があり、資格をとりました」
「就活をしているときに、たまたま山梨県立文学館で学芸員を募集していて、応募しました。なりゆきですね。」
山﨑
「元々文学館などに興味があったのですか?」
中野さん
「はい。博物館や美術館は好きで、学生の頃からよく行っていました。」
山﨑
「その当時や子供の頃の夢はなんでしたか?」
中野さん
「図書館で働きたいと思っていて、図書館でアルバイトをしていた時もありました。幼いときは、探偵とか農業にも興味がありました」
山﨑
「探偵ですか。好奇心旺盛ですね(笑)」
中野さん
「そうですね(笑)。いろいろなことに好奇心がありましたが、なかなか絞れなかったです。一つの夢を突き詰めて追いかけていたわけではないですね。」
山﨑
「そーなんですね。学芸員という仕事が決まったときの身近な方の反応はどうでしたか。」
中野さん
「両親は学芸員について詳しく知りませんでしたが、それほど驚かれたりはしませんでした。」

(余談…)
山﨑
「ランチはどうしてるんですか?」
中野さん
「いつも簡単なお弁当を作っていますね。粛々と食べています。」
(感想)
インタビューをさせていただくまで、個人的に学芸員さんは固い人というイメージがありました。実際にお話してみると中野さんは物腰が柔らかく、探偵や農業をやるのが夢だったとおっしゃっていたので、好奇心の強さが伺えました。その好奇心が中野さんを文学の世界に引き込み、学芸員という職業につながったのだと思いました。

文:山﨑倫太朗(山梨県立大学国際政策学部2年)

企画展・特設展はどうつくられるのか?

私(望月)からは、企画展・特設展について伺いました。

企画展・特設展は4月〜5月末にかけて、次年度に向けての企画を行うそうです。企画案は、みんなが興味を持ちそうなテーマを考え、相談してつくります。年2回の特設展と秋の企画展、1月から3月に行われる新収蔵品展の計4回の各展示において、それぞれ担当の学芸員さんがついています。

展示作品のレイアウトから内容まで計画するのはとても大変なのに、毎回興味深い作品展を作り上げているのがすごいな、、と思ったし、学芸員さんとしてのプライドを持ってお仕事をなさっているということが伝わってきました。

また、担当者1人だけで展示の計画を行うのではなく、他の芸員のメンバーの方々(山梨県立文学館は4人の学芸員さんがいらっしゃいます)がフォローしながら進めているというのが印象的でした。チームとして1つのものを作り上げるというお話から、高校生の時に苦労した学園祭の企画展準備を思い出して、大変だけど素敵なお仕事だなあと思いました。

学芸員さんは展示の企画だけではなく、来館したお客さんへの対応も素晴らしいです。あらかじめテーマをもらったときは、来館者の方に展示物の前でどんなことをお話しようか考えてくださっているそうです。

「見知らぬお客さんに話しかけるのはやっぱり勇気がいりますか?」と聞いてみたところ、「初対面の方のところに展示資料を借りに行くこともよくあり、鍛えられているので大丈夫ですよ!」とおっしゃっていました。学芸員さん、パワフルですね。

これまでに展示の企画を行うにあたって、印象に残った企画展はいくつかあったそうです。やはり、文学作品にまつわる有名な方と、仕事をきっかけにお会いすることができたときはとても印象に残ったそうです。私も将来自分の仕事をきっかけに、推しにばったり会えてしまうなんてことがあったら、鼻血5リットルものです。学芸員さんのお気持ち、とてもよくわかりました(笑)

今後やりたい企画展についてお伺いすると、「『親しみやすい切り口で、広い年齢層に受け入れられる企画展』をやりたい」とおっしゃっていました。現状は、常連のお客様はご年輩の方がほとんどで、若者を呼び込むために若者に視点を絞った企画展を行うことが難しいそうです。

広い年齢層に親しまれるようなアイデアを出す手助けに少しでもなれるように、私たち若者から文学館さんとアイデアを交流する機会を大切にしていきたいと思いました!

文:望月春花(山梨県立大学国際政策学部2年)

本と文学について

私(渡邊)は、本と文学について、お話を伺いました。

中野さんは、幼少期は親によく読み聞かせをしてもらっていたそうです。また、本を買ってもらえる環境にあったそうです。デジタルの本はほとんどなく、紙の本がほとんどだったため、幼少期から本に触れる機会は多かったとのことでした。

次に学生時代について伺ってみたところ、国語や古文、作文などの科目は得意だったわけではないそうです。

好きな本、推し作家さんについて、仕事関係の本から優先して読むため、あまりぱっとは思い浮かびませんが、『新聞小説で自分が読んでいた池澤夏樹さんとイベントで会えたことは宝物だ』と語ってくださいました。

(余談)
最近、家の近くにいた野良猫を飼い始めたそうです。家の近くの高架下にいる野良猫も心配で飼おうか迷っているそうです。また、お子さんが勧めてくる漫画やアニメをみることがマイブームだと教えてくださいました。

文:渡邊美月(山梨県立大学国際政策学部2年)

文学館とはどんなところ?

文学館のどんなところが好きかをお聞きしたところ、「環境」が好きだとおっしゃられました。四季の変化を感じることができるからだそうです。特に、新緑の時期が好きだそうです。

次に、熱狂的なファンの方の来館についてお聞きしました。結構な数の方が来られるそうで、特に太宰治のファンの方が多いそうです。年齢層の高い方のリピーターが多く、その方達からお話をうかがうことも多いそうです。

若い方にも興味を持ってもらいたいと考えており、小中の校外学習で訪れてもらい、大人になってからまた来てもらうというように、長期的な視点でリピーターを増やしていきたいとおっしゃっていました。

最後に、文学館がどういう場所であってほしいか、お聞きしました。県外の人には山梨の文学者をアピールする場に、県内の人には誇りを持ってもらう場に、それだけでなく企画以外でも日常的に来て楽しめる場所であってほしいとおっしゃっていました。

文:秋山由布子(山梨県立大学国際政策学部2年)

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