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地域別にみた労働生産性の動向(令和元年版「労働経済の分析」より)

本日は、地域別にみた労働生産性の動向について紹介します。
以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

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●1970年から2010年までの40年間で、労働生産性の地域間格差は、東京都を除くその他の46都道府県間では格差が縮小している一方で、東京都が、他の都道府県と比較して飛び抜けて高い労働生産性となっている

ここまで、人手不足企業の多くは、人手不足を契機として、労働生産性の向上により一層積極的に取り組む意向が強い傾向にあるものの、一部の人手不足企業では、日々の業務遂行に追われ、労働生産性の向上に取り組む余裕がないだけでなく、労働生産性の向上に関するノウハウを有する人材の不足等により、労働生産性の向上に「取り組めない」状況にある可能性を指摘してきた。他方、前述したとおり、人手不足感は地方圏の企業で相対的に高まっているため、これ踏まえ、地域間の労働生産性をめぐる状況について、地域差を生んでいる要因も含めて、整理していきたい(注)。
(注)本稿の作成にあたっては徳井(2018)を参考にした。

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第2-(1)-10図は、労働生産性を、産業計資本労働比率(以下「資本装備率」という。)の違い、労働の質(注1)の違い、産業計全要素生産性(注2)(以下「TFP」という。)の違いに分解し、労働生産性の地域間格差の要因をみたものであり、図中の「労働生産性(注3)」は、各都道府県の労働生産性の全国平均からの乖離率を示している(注4)。
(注1)ここでの労働の質は、労働者の性、就業上の地位、学歴構成、就業している産業といった労働属性ごとの限界生産性の違いを考慮した「質を考慮した労働投入」の概念を採用している。
(注2)全要素生産性(TFP)は、経済成長率を要因分解した際、資本や労働といった生産要素の投入量の増減では計測することができない全ての要因による寄与を指している。
(注3)労働生産性を測るときの分母の労働投入量は、マンアワーベースである。
(注4)数値は、経済産業研究所「都道府県別産業生産性データベース2017」より引用。

1970年と2010年の労働生産性の全国平均からの乖離率を比較すると、この40年間で、東京都を除くほぼ全ての都道府県で全国平均からの乖離率は縮小しており、労働生産性の地域間格差は、東京都を除く46都道府県間では縮小傾向にあるものの、この40年間で、東京都の労働生産性の全国平均からの乖離率だけは拡大しており、このような東京都の一人勝ち状態が、東京都と比較して地方の格差を感じさせる原因となっている可能性が考えられる。
次に、1970年時点の労働生産性の全国平均からの乖離率をみると、神奈川県の値が最も大きくなっており、これは京浜工業地帯を擁する当該地域の高い資本装備率が、労働生産性を押し上げる大きな要因となっていたことが考えられる。このように、1970年時点では、資本装備率の地域間格差が、労働生産性の地域間格差を説明する重要な要因となっていたことが示唆されるが、その後の40年間で、資本装備率の地域間格差は大きく縮小しており、詳細は後述するが、2010年時点で労働生産性の値が最も大きな東京都の資本装備率は、全国平均を下回っている状況にある。
他方、2010年時点の労働生産性の全国平均からの乖離率をみると、東京都の値が最も大きくなっており、労働生産性を押し上げている要因をみると、他地域に比べて高い労働の質と、飛び抜けて高いTFPが大きく寄与していることから、資本装備率に代わって、TFPが労働生産性の地域間格差を説明する主な要因となっていることが示唆される(注)。
(注)徳井(2018)では、労働生産性の地域間格差の分散に対する寄与度を、「資本装備率」「労働の質」「TFP」の要因にそれぞれ分解した上で分析を行っており、当該分析結果によると、1970年において労働生産性の地域間格差を生み出していた最大の要因はTFPと資本装備率の格差であったが、資本装備率格差の寄与は、1980年以降急速に減少した一方で、TFP格差の寄与は1990年まで変化がなく、その後はおおむね半減したものの、2010年では下げ止まりがうかがえる状況にあったことから、結果的にTFP格差の寄与の重要度が相対的に高まり、今日では、労働生産性の地域間格差のほとんどをTFP格差で説明できるようになったとしている。

なお、近年の「労働経済の分析」においても、我が国の労働生産性が伸び悩んでいる要因については、情報化資産や人的資本などの無形資産への投資(注)が国際的にみて不足していること等を指摘しており、我が国の労働生産性を引き上げて行くには、TFPの上昇率を高めていくことが重要となる。
(注)「平成28年版 労働経済の分析」において、TFPの上昇に対しては、無形資産への投資が波及効果を持つことを指摘している。なお、無形資産は、①情報化資産(受注・パッケージソフト、自社開発ソフトウェア)、②革新的資産(R&D、著作権、デザイン、資源開発権)、③経済的競争能力(ブランド資産、企業が行う人的資本形成(OFF-JT)、組織形成・改革)から成る。
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1970年から2010年までの40年間で、労働生産性の地域間格差は、東京都を除くその他の46都道府県間では格差が縮小していますが、東京都は他の都道府県と比較して飛び抜けて高い労働生産性となっているそうです。
大企業の本社が東京都にあることとも関係がありそうです。

これは、TFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)というものが大きく寄与しているとの分析です。全要素生産性は、経済成長率を要因分解した際、資本や労働といった生産要素の投入量の増減では計測することができない全ての要因による寄与を指しているそうです。

TFPというのは、以下のページに詳しく掲載されています。
本分析の元データの調査を行った、経済産業研究所のQ&Aです。

このページでは「全要素生産性、すなわち、TFPの場合、労働のみならず、機械設備や原材料投入も考慮した生産性指標なので、TFPの改善は、物量投入に依存しない生産効率の改善(中略)や、同じ機械設備でもより多くの生産が可能となるような技術革新を示す指標であると考えられます。」とされています。
TFPの上昇のためには、無形資産への投資が影響を与えるそうです。
例えば、
①情報化資産(受注・パッケージソフト、自社開発ソフトウェア)
②革新的資産(R&D、著作権、デザイン、資源開発権)
③経済的競争能力(ブランド資産、企業が行う人的資本形成(OFF-JT)、組織形成・改革)
などがあげられます。

東京都に本社を置く企業が、TFPが高いという点、よく研究し、我々もどんなやり方で「刃を研ぐ」必要があるのかを考えなければなりません。

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