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リカバリー経験(休み方)と「働きがい」との関係性(令和元年版「労働経済の分析」より)

リカバリー経験(休み方)と「働きがい」との関係性について紹介します。

以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

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1 リカバリー経験(休み方)と「働きがい」との関係性について
●「心理的距離」「リラックス」「コントロール」「熟達」といったリカバリー経験(休み方)が出来ている場合には、仕事中の過度なストレスや疲労を回復させ、後日再び就業する際に、働く方のワーク・エンゲイジメントや労働生産性の向上を実現させる可能性が示唆された


本節では、リカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコアとの関係性を分析し、「働きがい」を向上させるために、リカバリー経験(休み方)の在り方が重要であることを明らかにしていく。本節の流れとしては、まずは、リカバリー経験(休み方)に関する考え方や、リカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性に関する先行研究の分析結果を紹介した上で、(独)労働政策研究・研修機構が2019年に調査を実施した「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」においても、先行研究で確認されるようなリカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性が確認されるのか検証していく。その上で、我が国におけるリカバリー経験(休み方)の現状について概観しつつ、いくつかの課題の所在を明らかにしていきたい。
まず、第2-(3)-29図では、リカバリー経験(休み方)に関する考え方や、リカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性に関する先行研究の分析結果を整理していく。

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同図の(1)のフローチャートのように、働く方は、就業を続けることによって、次第に疲労やストレスが蓄積していき、仕事から活力を得ていきいきとすることが難しくなり、レジリエンス(屈せず、立直り、乗り越えること)や楽観性などの「個人の資源(心理的距離)」も枯渇していくため、リカバリー経験によって、「活力」や「個人の資源(心理的資本)」を回復・向上させる機会を得ることで、後日再び就業する際に良質なパフォーマンスを発揮することができる。Sonnentag & Fritz(2007)によると、そのリカバリー経験(休み方)には、「心理的距離」「リラックス」「熟達」「コントロール」といった4つの種類がある。
「心理的距離」とは、仕事から物理的及び心理的にも離れている状態であり、仕事に関することを考えない状態を指す(注)。
(注)Sonnentag & Fritz(2014)では、Sonnentag & Bayer(2005)の中で、「心理的距離」というコンセプトが、ストレスやリカバリー経験に関する研究に導入されたと記載している。

「リラックス」とは、心身の活動量を意図的に低減させて、くつろいでいる状態を指す。
「熟達」とは、余暇時間における自己啓発の実施を指す。
「コントロール」とは、余暇時間に何をどのように行うのかを、自分で決められる状態を指す。本稿では、リカバリー経験(休み方)について、こうした4つの種類があるといった先行研究における考え方を踏まえながら、考察を進めていく。

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次に、同図の(2)では、Shimazu, Sonnentag, Kubota, & Kawakami(2012)において、日本人労働者2,520名を対象とし、リカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性を分析した結果を紹介しており、表中の値は、計量分析により推定した相関係数として、絶対値が1に近い方が変数間の関連が強く、0に近い方が変数間の関連が弱い
ことを示している。その分析結果をみると、「心理的距離」「リラックス」「熟達」「コントロール」のいずれについても、「精神的ストレス」「身体的疲労(身体愁訴)」との相関係数は統計的有意な負の値となっており(注)、また、「仕事のパフォーマンス」との相関係数は統計的有意な正の値となっている。
(注) 「熟達」 については、身体的疲労(身体愁訴)が高まる印象を受けるかもしれないが、好きなことについて学ぶ時間が得られたこと等によって、気持ちが前向きになり、身体的疲労(身体愁訴)の一部が失念されることや、仕事に関連する知識やスキルを習得することで、仕事をより円滑に進めることができ,その結果として心身のストレスが低減することなどが想定される。

他方、「リラックス」「熟達」「コントロール」とワーク・エンゲイジメン
ト・スコアとの相関係数は統計的有意な正の値であるが、「心理的距離」とワーク・エンゲイジメント・スコアとの相関係数が統計的有意な負の値となっていることが分かる。「心理的距離」とワーク・エンゲイジメント・スコアとの関係性に関する分析結果は、それまでの先行研究とは異なる結果を示しており、同論文では、この点について、「個人が、余暇時間において、
精神的に仕事から離れようとした際、実際には仕事から離れることに困難が生じており、ワーク・エンゲイジメントの向上に繋がるように、仕事に対する活力を回復させるためには、より多くの時間を要する可能性があるのかもしれない」と指摘している。すなわち、日本人労働者を対象とした調査を活用した同論文の分析結果において、それまでの先行研究とは異なる結果が示されたことは、我が国で働く方の中で「心理的距離」というリカバリー経験について、何らかの課題が生じている可能性があることを示唆しているとも解釈できるだろう。

さらに、第2-(3)-30図では、リカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性に関する先行研究の分析結果を踏まえつつ、(独)労働政策研究・研修機構が2019年に調査を実施した「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」においても、先行研究で確認されるようなリカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性が確認されるのか検証していく。

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同図の(1)では、「心理的距離(注1)」「リラックス(注2)」「コントロール(注3)」「熟達(注4)」について、「出来ている」又は「出来ていない」と回答された方に分けつつ、ワーク・エンゲイジメント、仕事中の過度なストレスや疲労、個人の労働生産性をスコア化した値を比較している。
(注1)「仕事の休憩時間や休日等の余暇時間において、仕事のことを考えることなく、心理的に仕事から十分に離れることが出来ていますか」といった質問項目が含まれている。
(注2)「仕事の休憩時間や休日等の余暇時間において、リラックスすることが出来ていますか」といった質問項目が含まれている。
(注3)「仕事の休憩時間や休日等の余暇時間において、どのような過ごし方をするのか、自分自身で決めることが出来ていますか」といった質問項目が含まれている。
(注4)「休日等の余暇時間において、自己啓発(会社や職場の指示によらない自発的な勉強)を行っていますか」といった質問項目が含まれている。

同図の(1)によると、「心理的距離」「リラックス」「コントロール」「熟達」のいずれにおいても、同項目が「出来ている」と回答された方は、「出来ていない」と回答された方と比較して、仕事中の過度なストレスや疲労に関するスコアの水準が低く、個人の労働生産性に関するスコアの水準が高いことが分かる。また、「リラックス」「コントロール」「熟達」では、同項目が「出来ている」と回答された方は、「出来ていない」と回答された方と比較して、ワーク・エンゲイジメントの水準が高い一方で、「心理的距離」のみは、同様に比較すると、ワーク・エンゲイジメントがおおむね同水準(あるいは、若干のマイナス)であることが分かる。すなわち、(独)
労働政策研究・研修機構が2019年に調査を実施した「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」においても、リカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性については、先行研究とおおむね同様の結果が確認されたと評価できるだろう。

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その上で、同図の(2)(3)では、上記のようなリカバリー経験(休み方)とワーク・エンゲイジメント・スコア等との関係性が、「調査対象計」と「労働強度が高い人手不足企業(注)」において異なるのか検証している。
(注)企業が自社の正社員について「大いに不足」「やや不足」と回答しているとともに、同企業に所属する正社員が、主な仕事に対する認識に関する「労働時間の少なくとも半分以上は、ハイスピードで仕事している」といった質問項目に対して、「いつも感じる」「よく感じる」と回答している企業を指す。

同図の(2)は、同図の(1)におけるワーク・エンゲイジメント、仕事中の過度なストレスや疲労、個人の労働生産性について、リカバリー経験(休
み方)が「出来ている」と回答された方のスコアから、リカバリー経験(休み方)が「出来ていない」と回答された方のスコアを差し引いたギャップを示している。同図の(3)は、「労働強度が高い人手不足企業」を対象とし、同様のギャップを示している。同図の(2)と(3)を比較すると、「労働強度が高い人手不足企業」では、「調査対象計」と比較し、「心理的距離」「コントロール」「リラックス」が出来ていることで、ワーク・エンゲイジメント・スコアや個人の労働生産性に関するスコアが向上する度合いが、より一層高いことが分かる。また、「労働強度が高い人手不足企業」における「熟達」については、「調査対象計」と比較し、ワーク・エンゲイジメント・スコアや個人の労働生産性に関するスコアが向上する度合いがやや低いものの、仕事中の過度なストレスや疲労に関するスコアが低下する度合いが高いことも分かる。すなわち、仕事中の過度なストレスや疲労の回復を図り、後日再び就業する際に、働く方のワーク・エンゲイジメントと労働生産性の向上を実現させる観点からみると、「労働強度が高い人手不足企業」こそ、従業員がリカバリー経験(休み方)をできるように様々な支援を講
じていくことが有用だと考えられる。

以上のように、先行研究や今回の分析結果を踏まえると、「心理的距離」「リラックス」「コントロール」「熟達」といったリカバリー経験(休み方)が出来ている場合には、仕事中の過度なストレスや疲労を回復させ、後日再び就業する際に、働く方のワーク・エンゲイジメントや労働生産性の向上を実現させる可能性が示唆された。つまり、働く時はしっかりと働き、休む時はしっかりと休むことで、後日再び就業する際の良質なパフォーマンスの発揮に結びつけていき、その両方の時の間にポジティブな循環を生み出していくことが肝要だと考えられる。特に、「労働強度が高い人手不足企業」では、こうしたポジティブな循環を生み出していくことが有用であることが示唆され、「労働強度が高い人手不足企業」こそ、従業員がリカバリー経
験(休み方)を得られるように様々な支援を講じていくことが有用だと考えられる。
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「心理的距離」とは、仕事から物理的及び心理的にも離れている状態であり、仕事に関することを考えない状態。
「リラックス」とは、心身の活動量を意図的に低減させて、くつろいでいる状態。
「熟達」とは、余暇時間における自己啓発の実施。
「コントロール」とは、余暇時間に何をどのように行うのかを、自分で決められる状態。

リカバリー経験(休み方)について、こうした4つの種類があるという研究があります。これらの4種類のリカバリーができている人が、ワーク・エンゲージメントが高いんですね。

伍魚福でも有給休暇の取得促進を行ってきました。

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2019年度の有給休暇取得率は上記のとおりとなっています。
全社で91%の取得率となっています。
各メンバーの休暇、「心理的距離」「リラックス」「熟達」「コントロール」の状態については現在はつかめていませんが、エンゲージメント調査によって見えてくる部分がありそうです。
有給休暇の取得率だけではなく、その内容についてもレベルアップできるようにしたいです。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan