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従業員への事業承継に当たり、全従業員アンケートにより後継者を選定した企業(中小企業白書2021年度版より)

本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第3章 事業承継を通じた企業の成長・発展とM&A による経営資源の有効活用」の続きです。
「第1節 事業承継を通じた企業の成長・発展」より、今回は「従業員への事業承継に当たり、全従業員アンケートにより後継者を選定した企業」の事例について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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従業員への事業承継に当たり、全従業員アンケートにより後継者を選定した企業
所在地:大阪府東大阪市
従業員数:12名
資本金:2,200万円
事業内容:プラスチック製品製造業
株式会社ユニックス

親族内に後継者が見付からず、従業員への事業承継を決意
大阪府東大阪市の株式会社ユニックスは、現会長の苗村昭夫氏が1984年に設立した、表面処理加工業を営む企業である。

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同社はポリウレタンの表面処理技術を強みに産学連携にも積極的に取り組むなど、研究開発型企業として長年事業展開してきたが、苗村会長が高齢になってきたこともあり、事業承継について検討し始めた。過去には親族への承継を考えたこともあったが、親族内に適任の後継候補者が見付からなかったため、従業員へ事業を承継することに決めた。

従業員アンケートで「私の次」を尋ねる
後継者選定に際して苗村会長は従業員アンケートを行い、後継者として誰が適任であるか従業員に尋ねることにした。アンケートでは本人以外の全従業員が現社長の町田泰久氏の名前を記入、苗村会長の意中の人も同じで、迷うことなく後継者に抜てきした。町田社長は当初はプレッシャーが大きいと社長就任を拒んでいたが、苗村会長による1年にわたる説得を受け、承諾した。3年間の準備期間のうちに町田社長は中小企業大学校などで経営について学び、2016年、代表権を苗村会長に残したまま社長に就任した。

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苗村会長は「アンケートを通して、従業員が自ら選んだ人が社長になったことで会社としての一体感が高まり、更に新社長にとっても私だけでなく従業員から選ばれたという社内からの強い信頼を感じるなどのメリットがあった。」と語る。また同社では、株式の承継に当たって、事業承継ファンドを活用した。これまで同社ではファンドの活用について検討したことがなかったが、メインバンクの大阪信用金庫よりアドバイスを受け、同信金などが組成した「おおさか事業承継・創業支援ファンド」の出資を受け入れた。会長や会長の家族が保有する株式を同ファンドが無議決権株式として買い取ることで、後継者が議決権のある株式の3分の2を保有することを容易にした。

事業承継を果たし、次の展開を見据える
そして社長交代から4年半後の2020年10月、代表権を会長から社長に移し、町田氏が代表取締役社長となった。現在は町田社長を中心とした新体制の下で、粉砕機、タンクなど粉体関連の新市場で販路開拓に取り組み、事業拡大を目指している。事業承継を果たした苗村会長は、「メインバンクを始め関係者の支援もあり、無事に事業承継が完了したことにほっとし、感謝している。町田社長の下で当社が更に発展を遂げるよう、自分も引き続きバックアップしていきたい。」と語る。

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同族の後継者のいない中小企業が従業員に経営を承継した事例です。
後継者候補の従業員を説得するために全従業員のアンケートをとったのではないかと推測します。
従業員を後継者にする場合に問題となるのは、先代からの株式の買い取りです。
同族の場合は、事業承継税制や、相続時精算贈与等、最終的に相続することを利用することができますが、同族外の場合はこれができません。
この事例では、金融機関のファンドが無議決権株式として買い取ることで後継経営者の資金面での負担を減らしています。
後継者不在で廃業する企業が多い中、大変幸せな事業承継ができた事例といえるでしょう。

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