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第1回芸備線再構築協議会

広島県・岡山県を走るJR芸備線の備中神代駅(岡山県新見市)から備後庄原駅(広島県庄原市)までの特定区間の存廃について話し合う「芸備線再構築協議会」3月26日に開かれた第1回を取材しました。この協議会は国(国土交通大臣)が組織し、広島・岡山両県と庄原・新見両市とJR西日本が、この区間について路線を存続させるか、バスなどへ転換するかを話し合います。再構築協議会の開催は全国で初めてのことで、全国のローカル線のあり方に影響するとして注目されています。

再構築協議会では実務的な下部組織として幹事会や区間毎の部会を置いて調査・実証事業などを行い、幹事会でとりまとめた再構築方針を再構築協議会で決定します。芸備線再構築協議会では特定区間に備中神代駅から広島駅(広島県広島市)までの区間を加えた全線を対象とした議論も行うことになり、特定区間外の自治体として広島市と三次市も議論に参加しています。

初回の会合の冒頭で議長を務める中国運輸局長が「廃止・存続の前提をおかず、具体的なファクトとデータに基づき議論する」と挨拶をしました。JR西日本広島支社長は、芸備線の特定区間の利用状況や沿線地域の人口動態・移動特性、これまでの利用促進策などについて説明し、「大量輸送、拠点間輸送という鉄道の特性を発揮できておらず、地域から鉄道が選ばれていない。利用者にとって利便性の高い交通手段を共に創っていきたい」と話しました。

岡山県副知事は「大量輸送特性を前提とした協議会設置には異議がある。住民にとって重要な交通手段なので今後もJRに運行を続けてほしい。利用促進の結果はデータを全て提供する。コロナ禍後の最新の状況など、JR西ももう少し詳細なデータを示してほしい」。広島県副知事は「収支だけでなく住民への影響も考慮が必要。芸備線の可能性を最大限に追求し、観光での実証事業も行ってほしい。JRには業績予想が伸びる中、内部補助がなぜできないか説明してほしい」など意見を出しました。

再構築協議会の構成員として出席した呉工業高等専門学校の神田佑亮教授は、学識経験者の立場からこう述べました。「私は特定区間である庄原市東城町の出身で、芸備線を利用していたのでその利用状況や需要について肌感覚で理解している。交通だけを考えるのではなく、まちづくりから考える必要がある。なぜ利用者が減り続けていったのかをしっかりと検証しなければならない。人口減少や道路整備もあるだろうが、目的地に魅力があるか。人がちゃんと出てこれる町の構造になっているか。20年後、30年後に地域がどうありたいかというビジョンを描き、実現したい地域の中で鉄道交通が役立っていくのか。人口減少を前提として考えるなら、今後もまた他の問題が生じる。交通手段の議論ではなくまちづくりの議論。ビジョンをしっかり描き、実行する必要がある」。

住民一人ひとりが、将来どんな町に住んでいたいのかを考えて、伝えることが重要だと感じました。あきらめて受け身で流されるのではなく、希望を持って将来を考え、語る。それをどう実現していくかは、改めて専門家を含め、皆で考えていけばよいのではないでしょうか。

芸備線再構築協議会は現時点で来年度2回、幹事会も数回行われる予定です。

※3月29日追記 中国運輸局ウェブサイトに、当日の配付資料が公開されました。

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