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いつか海外の人と一緒に働きたい

私には、ヤミンちゃんと花子ちゃんという友だちがいます。

2人はともに技能実習生として、それぞれこの冬、この春まで私が住む町に住んでいた外国人です。

ヤミンちゃんはミャンマー出身の26歳。いつも無邪気で愛らしい笑顔が特徴的。そこにいるだけで周りが華やかな気分になる妹的存在。

花子ちゃんはベトナム出身の28歳。いたずらっぽい性格で、冗談を言っては常にみんなを笑わせてくれる、細やかな気遣いができるお姉さん気質な性格。ちなみに「花子」という日本人らしい名前ですが、本名は「クイン」。「花」という意味があるそうで、日本に来てからは自分で「花子」とニックネームをつけていました。

2人は町内の別々の会社に勤務をしていたにもかかわらず、この町で知り合い、大親友になって、町を離れていきました。

日本語教室のメンバーで「Tシャツアート展」へ。
2人が仲良しなことがうかがえる写真でお気に入り。

2人との出会いは、2年前の春、この町でできた日本語教室でのこと。私が前職で担当していた教室のプレオープンにそれぞれが来てくれたことが初めての出会いでした。

それから1〜2カ月後のこと、花子ちゃんとペアになり、日本語の勉強をしていた時、「お姉さん、私、あの子と友だちになりたいです」と花子ちゃんが言いました。「あの子」は、ヤミンちゃんのこと。花子ちゃんをヤミンちゃんの元まで連れて行き、紹介しました。

当時、2人はそれぞれ日本語能力試験の勉強をしていて、めざしているレベルも一緒だったことからすぐに意気投合。その後、どんな風に、どのくらいのスピードで仲良くなっていったのかまではわからないのですが、その後の2人を見ていれば、きっとあっという間に仲良くなったんだろうなと想像ができました。

それからさらに数ヶ月後。

「お姉さん、平日の夜におしゃべりできませんか?」

日本語をもっと覚えたい、上達したいという2人は、日本人と会話をすることが一番の近道だと思ったのだと思います。そうお願いされ、”仕事”でおこなっていた日本語教室とは別に、”完全プライベート”で「おしゃべり会」を毎週水曜日の夜に行うようになりました。

オンラインで1時間、
ただただ楽しくおしゃべりを繰り返した思い出

2人は、出会ってからの2年間で、2回の試験を合格しています。
例えば、漢検2級に合格して、さらに漢検1級に合格するというような、2レベルアップするイメージですが、母語ではない日本語の試験でレベルを2つ上げるということは、簡単ではないと思います。

では、日本語教室やオンラインのおしゃべりで、がっつり日本語を教えていたかと言えば、違います。

私たちの日本語教室に来る外国人のほとんどは、「おしゃべりがしたい」という希望が多く、テキストを見ながら1から勉強していくというイメージではありません。また、週1回のオンラインのおしゃべり会は、もっと砕けたもの。仕事の話をしたり、生活の中でふと気になっていることを話したり、恋バナをしたり。時々、「お姉さん、「やっと」と「とうとう」と「ついに」の違いを教えてくれませんか」なんて、日本人が感覚で使っている言葉の違いを考える少し難しい質問もありましたが・・・。

つまり、日本語能力試験の合格や日本語の上達は、ほとんど彼女たちが独学で成し得たもの。仕事終わり、日をまたぐまで勉強し、翌朝も早朝5時に起きて勉強。8時過ぎには出勤して、また仕事をする。


彼女たちと関わるようになるまでは、彼女たちは「たまに見かける技能実習生たち」で「ベトナム人かな?」という認識程度でした。

でも、彼女たちと出会い、深く関わる中で、たまに見かけていたベトナムの女の子は「花子ちゃん」になり、ミャンマーの女の子は「ヤミンちゃん」になりました。


2人と過ごす時間の中で、印象的だったできごとがあります。

オンラインでおしゃべりをしていたある日の夜。

「嫌な人、苦手な人にもありがとうと言います。嫌なこともあったけど、その人たちのおかげで成長できたこともありますから」
私より年下の花子ちゃんが言います。


また、ヤミンちゃんがこの町を離れる前の最後の日本語教室でのこと。

メモ用紙に事前に書いてきた別れの挨拶を一生懸命に読み、感謝の気持ちを伝えてくれました。その中で、彼女が言った言葉。

「私が「日本で一番好きな場所はどこですか?」と誰かに聞かれた時、私は「黒潮町役場」と答えます」

好きな場所を「役所」と答える人は、きっと日本人にはいないと思いますし、そこで働いている人たちの中にも、きっといないのではないでしょうか。

それだけ、いつもあたたかい心で通ってくれていたことに、感謝の気持ちがグッと湧いてきました。

私が前職を辞め独立することを考え出した頃、これからの未来、大切にしていきたいと思っていたことがあります。それは、「誰と仕事をするか」「どんな思いを持って働くか」ということ。

コロナ禍で世の中は大きく変わり、リモートでも、どこにいても仕事ができるようになりました。人との関わり方は制限されるようになったものの、逆に言えば、世界のどこにいる人とだって関われるようになったし、仕事ができるようになりました。

そんな世の中だからこそ、「この人と一緒に何かをしたい」「この人と一緒に働きたい」と思う相手と自分の思い描く仕事をしていきたいと思うようになりました。

そして、そんな人とだからこそ、「こうしたい」「ああしたい」が実現できるような気がしています。

ヤミンちゃん、花子ちゃん、2人との出会いは私の黒潮町での人生にいつも輝きをくれました。年下の2人が発する言葉や行動に、いつも勇気づけられ、自分も頑張らないと、見習わないとと思わせてもらいました。

この記事には、技能実習生という制度を批判するしないという要素は一切ありません。そういうことではなく、何でもなく、私はただ彼女のような人たちと同じ立場でいつか一緒に黒潮町で働き、ものごとを生み出していきたいなと思っています。

ヤミンちゃんや花子ちゃんに限らず、アジアの人に限らず、世界中の人と、黒潮町という素晴らしいフィールドで働けたらと思います。

「お姉さんのお店はいつできますか?できたら働かせてくださいね」

冗談で無邪気に言う2人が可愛くって。
いつか一緒に働いてくれるかな?

いつか2人のような海外の人たちと働けたら。


※2人に許可をもらって掲載しています。

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