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『読語り#2』 「なぜ銅の剣までしか売らないんですか?」を読んで印象に残ったこと

Youtuberが本を書く流行

今日、ご紹介するのは、こちら。

エフというYoutuberが書いた著書。
前回は「F」という作家だったが、別人です。
前世エフって名前やったんか、て感じですが、たまたまです。

このエフという方、Youtuberで、
「Fラン大学就職チャンネル」という名前でやっている方。

Youtuberさんは、日々自分の作品の起承転結を意識しているからか、
本を書くのもすごくお上手で感動します。(どこから目線?)

この本は、RPGをやったことがある方なら理解できるかと思いますが、
なぜ序盤の町は弱い武器しか販売されていないのか?
という疑問から始まり、RPGの裏に迫っていくお話です。

なにより、非現実と現実が入り混じった、
現代社会風刺ファンタジー小説、めちゃ面白かったです。
現代社会の黒さを読みやすく表現されています。

主人公の商人、マルが出会う出来事ベースで感想を述べていきます。

1.花バブル

主人公マルはまず初めに、なんでもない花が高騰している街へ訪れる。

この話はまさに、1630年代にドイツで起きたといわれる、「チューリップ・バブル」を小説に落としたお話。
この出来事は今も資産価値がその内在価値を逸脱するような大規模なバブル経済の比喩で使われたりもする。

最近のInstagramのインフルエンサーはこれをしている気がする。

あなたが買おうとしているモノは本当に価値があるでしょうか。
インフルエンサーが着ているから良いものと思っていませんでしょうか。

すぐに思いつくのが、菅田将暉さんがドラマで着用し、価値が高騰した
・Needlesのトラックパンツ
・Hender Schemeのグラスコード
なんてものにも同じ匂いを感じる。

こんなんだからかっこつけて「オレ、アマノジャクだからさあ」
とかいうやつが世の中にたくさんでてくるわけです。

新入りブランドはこの「バブル」に昨今はさぞ助けられているでしょう。

2.玉屋

次の街では、「怒り」を売る者が出てくる。

社会で汗水たらして働いている人たちを罵倒し、
罵倒したものに玉を投げる商売。投げる用の玉を買わせる商売。

人間の感情は「怒り」だけでなく、「喜怒哀楽」ある。
どの感情も商売のトリガーにできるが、
企画力や芸術的センスがない人は、「怒り」を商売に使う。

SNSの炎上商法、これはまさに「怒り」を売る商法だと思う。
マルはこのように言っています。(P.1,384より)

"怒り"を売る側も買う側も、どこか貧しているように見えるのです。
能力があるなら"怒り"を売り物にする必要などありませんし、
心に余裕があれば"怒り"を買うこともないでしょう。
ですからこれは、努力によって三津からの状況を改善させようとしない、貧した人たち同志の商売なんだなと思いました。

3.魔物奴隷

次に魔物を奴隷として雇い、採掘したものを売る者が出てきます。

この作品の世界でも、奴隷制度は禁じられているようだが、
勇者に倒される対象である”魔物”を奴隷にすることは禁じられていない。
もちろん最低限の賃金(餌)は与えている、とのこと。

商人にとって、コストパフォーマンスが良い人材は
喉から手が出るほど欲しいものだろう。

ファストファッションが流行の今、
時間通りに届く宅配便、
安くて品質の良いサービスには裏があるような気がしてくる。

それにしてもRPGの世界で魔物に働かせて、
奴隷を風刺するという発想がすごい。

そういえばポ〇モンでカイ〇キーが働いている場面が
あった気がする。

4.麻薬商売

依存性のあるものを販売することが正義か否か。

そんなことよりも登場人物の"骸骨"の台詞が個人的に響いた。(P.2,297)

きみのやっている商売だって、遠いところにいる誰かを害しているかもしれない。そんなことは一切していないと、君は断言できるのかい?

ITで働いている身としては、気づかないふりをして働くしかないが、
便利になることで、人の稼ぎをなくしていることをたまに感じる。

「人件費の削減で十分ペイできるシステムです。」

という営業は、誰かの仕事を害していることを気づかないふりをする、
もしくは害しているかもしれない人たちのことを頭から切り離す
必要がある。

なんとも難しい業界だ。

ユーモアな皮肉

エフさんはYoutube上でもユーモアな皮肉で社会を風刺する。
この本でもそれが感じられた。
人によっては胸焼けする人もいるかもしれないが、個人的には好きだ。

ただ、レビューにも書いてあるが、若干掘り下げが少なく、
消化不良に終わる感じもある。

社会の黒い現実を面白おかしく実感できるので、おすすめです。

それでは、今日はこの辺で。またっ。



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最後まで読んでくれてありがとう。 誰かとの会話のきっかけになったかな。 また勝手に喋ってるので、遊びにきてな〜。またっ。