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副業の功罪

最近、規制緩和やWEBでの気軽な求人も相まって、副業をするのが当たり前とでも言えるほど、副業をしている人が増えているように感じる。副業をすることは決して悪いことではないし、僕自身若い時にはしていてメリットも多く享受してきた。ただ、副業は万能ではないし大きな副作用を持った劇薬だと僕は考えている。今日の記事ではその功罪を両面から描き、副業をせず自分の会社をやるという判断をした理由についても語りたい。いま自社で副業を雇っている経営者として、これを整理して真摯に伝えることが僕なりの誠意になればと思う。

副業とは

SEO記事っぽい第一章になってしまったが、ひとまず副業を語る前にその定義をはっきりとさせたい。Wikipedia先生いわく

副業(ふくぎょう、英: side business)とは、収入を得るために携わる本業以外の仕事を指す。兼業、サイドビジネス、ダブルワーク(Double work)ともよばれる。副業は就労形態によって、アルバイト(常用)、日雇い派遣、個人事業主、在宅ビジネス、内職などに分類される。所得は給与所得や雑所得などに分類される。

とのこと。つまりは、本業が正社員である必要もなく、何かメインの収入以外に仕事をしてお金(またはそれに類推するもの)を受け取っていれば副業をしていると言えるのだろう。

そもそも雇用契約自体、「時間とお金を交換するサブスク契約」くらいにしか捉えていない僕にとってこの契約形態は不思議でもなんでもない。むしろ「俺はAmazon Primeに忠誠を誓っている」なんて奴がいたらちょっと気持ち悪いと思うし契約なんて法律と倫理に反しない範囲ならテキトーに接していれば良いと思う。

ひとまず、本項において副業とは、「自営業・業務委託・正社員などの何らかの形式で生活費を得ている人が、余暇時間を使ってさらに収入を得るための手段」として定義をしたい。そのため、前提として本業をサボって副業をしているような状態は無視するものとする。
(そういうの普通にバレるし、相手によっては法律の話になるからやめた方が良いとは思いますよ)

副業のメリット

改めて書く必要もないと思うが、副業のメリットも紹介していこうと思う。人によっては非常に有用なアプローチであるのは間違い無いので。簡単だし一般論だからここは別に読み飛ばしてもらっても問題はない。

1. 収入が増える

まあこれは当たり前だろう。そもそも時間を売るのだから収入が増えないなら単なる奴隷労働だ。ただし、それに加えて大抵の場合「本業よりも時給が良い」というケースが多いだろう。これは業務委託だと、福利厚生や事務手続きのコストが安く済むし、一般的に高単価である場合が多い市場に照らしているからだ。「業務委託は社員の2倍が相場」という人もいるくらいだし、大抵の場合は時給が良い仕事をすることになるだろう。

2. スキルが延ばせる

こっちの目的で副業をする人は多いかもしれない。自分に自信があるけど大企業で裁量権がないという若手が、ベンチャーで責任者レベルの仕事をするというパターンはわりかし見かける。また、未経験で転職は怖いという業界であっても、副業からなら関われるということもあり、実質の採用窓口として機能していることも多いように感じる。何にしろ、大企業によって仕組み化された現代社会において歯車として動きたくないという思いがある場合には副業をするのが最もハードルの低いアプローチであるだろう。

3. 本業以外のタイプの人と関われる

これはスキルと似たような話でもあるが、本業以外の社風や業界と関わっていきたいというモチベーションも見かける。例えばベンチャー企業なら、同じような業界でもシリーズAとかシリーズCとかで全く別のステータスにあることも多いし、繋がりを増やしたいなら社会人サークルをするよりも良い選択肢かもしれない。僕も副業を通して、多くの伸び盛りベンチャーやレガシー業界の重鎮など、普通だと会えない人に会うことができたのでこれは非常に大きな資産になっていると思う。

どうやって後30年働くの

ここで一度、嫌なジジイのような説教を始めたいと思う。みなさんは30年間、自分が社会に対して何を売ってお金をもらっていくのか考えたことはあるだろうか。ここで、今働いているように「時間を売る」と答える人は、年々貧しくなることを覚悟してほしい。当たり前だが、歳をとるほどに売れる『時間の在庫』は減っていく。この在庫は絶対に普通増えることはない。

また、合わせてになるが『時間あたりの提供価値』も年齢と共に劣化していく。スキルアップというのはいうほど簡単ではない。WEB業界にいる人ならひしひしと感じるだろうが、5年前の広告運用スキルや開発フレームワークに超絶詳しくてもそこまでの価値はない。常に最新の知識を振るうことに価値があるのだ。その点、高齢になった時も同じパフォーマンスで学習を続けられるのかは考えた方が良い。

他方、いまの50代はなんでお金を稼げるのだろうか。終身雇用制度のおかげだろうか。解雇規制のおかげだろうか。
その観点は否定しない。無能なのにお金をもらい続ける窓際族は沢山いるだろう。しかしながら、多くの「おじさん」が提供する価値は多くの場合、『組織の維持』という価値に収束する。経営者にとって、
 1. すぐ辞めない
 2. 今まで通りで文句を言わない
 3. 上手くいってた時の事を知っている
というかなり大きなバリューを持っている。
仮に自分が毎日500名の予約を捌く大型レストランの経営者だとして想像してほしい。若くてイケイケの天才料理人よりも、毎日安定した料理を作ってくれるベテラン料理人が20人居た方が安心しないだろうか。おじさん同士で細かいことまで共有できており、変わったアレルギーを持ったお客さんが来ても「あーそのパターンね」って解決してくれる。ある種、安定した経営をするなら、そんなおじさんを抱えることこそが勝ち筋とも言える。

副業の落とし穴

ここまで書いたらもう結論は分かっていると思うが、副業をした時のデメリットはシンプルだ。「本来、本業へのコミットによって得られるはずの年老いてから役立つ価値を得ることができない」という点に尽きる。これは組織の合理性というか、ある種伝統をもったコミュニティはそういう仕組みになっているのだ。村社会をイメージすると分かりやすいが、都会に憧れて上京する気満々の若者に村の大事な祭事は任せない。村の祭事は若者から見るとしょーもない雑務だが、これをこなした人間だけが村では、組織を維持するのにコミットし続ける大人として看做される。

なので、本気で考えるときには以下のような比較が要るかもしれない

[本業コミット]
20~40歳 : 年収400万円
40~60歳 : 年収800万円

[副業コミット]
20~40歳 : 年収700万円
40~60歳 : 年収500万円

まあ、ここまで単純化もできないし、本業が潰れたり、出世に失敗するリスクも一定存在するとは思う。とはいえ、何だかんだで「一つの会社でコミットした」という経験はそれなりに有用だ。そして、世の経営者はそういった属性・能力に驚くほど敏感である。馬鹿らしいという風潮もあるが、いまだに転職経験がなく経歴が綺麗な人が採用に強いのもそういうことだと考えられる。

僕も副業・フリーランスとして働いた後、こういった考えから「自分で会社を経営する」のが、手取りは減るけど長期的には最適ではないかと考えるようになった。いま副業・フリーランスでこの世の春を謳歌している若手諸君にも、今一度このままで良いのかというのを考え直してみてほしい。勿論、現場で最強スキルの人間として一線で戦い続けるという強気な意思決定も僕は良いと思う。

ということで最後に広告。弊社では広告代理店の立ち上げメンバーを探しています。副業・フリーランスがとても多い業界ですが、一緒に正社員/役員としてキャリアを作っていきたい方大歓迎です。