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複線型(クラウド型)授業をICT活用で成功させる~社会科4年:水はどこから

1.はじめに

授業におけるICT活用の大きなメリットは、「みんなの意見が同時に見られること」です。このメリットを最大限に生かせるのが複線型(クラウド型)の授業です。クラウド型のICTを利用すれば、子どもたちが個々に活動している様子を教師が確認し、必要な指導や支援を与えることができます。

一人一台端末活用新旧イメージ 従来授業+端末活用(2022 高橋純)をもとに作成

名人級の技量をもつ教師が行っていた全体や個々の活動の見取りも、ICTを活用すれば、経験年数の少ない若手であっても可能になります。また、学びの主体が「子ども」になるので、子どもたちの意欲が変わります。一人一台端末が整備された今だからこそ、こうしたクラウド型の授業づくりに挑戦してみると良いのではと考えています。

2.単元で考える

クラウド型の授業を行う際、授業は一時間単位ではなく、単元全体で考えるとよいと思います。

石井英真(京都大学)の図をもとに作成

単元の前半では教科の知識や技能がまだ不十分なため、教師側のアプローチが多くなりますが(上の画像①)、徐々に学びが蓄積されていくことで、教師・子ども・教材が三角形(上の画像②)のように協力して学びを展開する形が理想です。

学習環境のデザインによっては、下のように教師と教材の距離を変えたり、子どもたちへの指導のポイントを変えたりすることで単元冒頭から三角形を意識することもできます。私も練習中です、、、

石井英真(京都大学)の図をもとに作成

3.4年生社会科「水」の単元づくり

4年生の担任にお願いして1単元、一緒に授業をさせてもらいました。社会科の単元ですので、単元の始めはどうしても教師からの伝達が主になります。それを単元の進行とともに子どもたちが教材と向き合うように学びの場を調整していくのがいいと考えました。

単元を通して「どのように~」をためていき、単元の終わりに「総合化」していくイメージです。

1.生活のどんな場面で水を使っているか(交流)
2.学校のじゃぐち探し(調査)
3.学習問題づくり(一人一人が作成→分類)
4.水はどこから、どのように作られる(水源~浄水場~家庭まで)
5.使った水はどうやって処理する(下水処理場~川・海へ)
6.浄水場と下水処理場ではたらく人はどのように、どんな思いではたらいているのか(個人の気づきを班でまとめる※ピラミッドチャートで総合化)
7.水のじゅんかん(班ごとに課題を設定→個人で振り返り)
8.残された学習問題を解決しよう(一人一人が探究する)

4.それぞれの授業のこと

 (1)生活のどんな場面で水を使っているか(交流)→左側
「生活のどんな場面で水を使っているか」は子どもたちに付箋に書き出させて、自分たちで分類をさせた。一斉に付箋が動く様子は壮観だった笑
 (2)学校のじゃぐち探し(調査)→右側
「学校のじゃぐち探し」は端末片手に校内をうろうろ。見つけた蛇口の数を付箋に各自で記録していきました。最後はmiroのAIで付箋に入力した数字を合計。なかなかの多さに驚いていました。単元の最初としてはいい感じ

 (3)学習問題づくり(一人一人が作成→分類)

前時のふり返りを確認したのち、学校で使っている水の量を確認し、みんなで驚きました。学習意欲を刺激するには「驚嘆」を与えることが重要です。

そこから、単元を通して「知りたいこと」「調べたいこと」などをもとに解決したい疑問を学習問題として書き出しました。

みんなで考えた問題を整理して、単元を通して何を学んでいくかを確認しました。

 (4)水はどこから、どのように作られる(水源~浄水場~家庭まで)

最初の学習問題として「水がどこから、どのように届けられているか」を調べました。副読本で概要を掴んだ後、Googleマップで学校から水源近くのダムまで各自で移動しました。ダムにはストリートビューで降りられるのですが、「なんにもなーい」と子どもたち。

次に、浄水場の仕組みについても確認しました。NHKフォースクールの動画を視聴し、気付いた事をノートにメモし、その中から知らせたいことを付箋に書き出して情報共有しました。ちょっと詰め込み過ぎを反省した授業でした、、

 (5)使った水はどうやって処理する(下水処理場~川・海へ)

きれいな水の話の次は汚れた水の話です。まず、Googleマップで学校から市内の下水処理場まで各自で移動しました。住宅街から離れた場所にあることを確認しました。そして、下水処理の仕方をNHKフォースクールの動画で確認しました。動画を視聴しながらメモをとり、知らせたいことを付箋に書き出させました。その際、浄水場の仕事を調べたときの付箋をコピーしておきました。下水処理の仕事を整理する際に、浄水場との共通点や違いに気づけるよう工夫しました。

 (6)浄水場と下水処理場ではたらく人はどのように、どんな思いではたらいているのか(個人の気づきを班でまとめる※ピラミッドチャートで総合化)
前時の振り返りがよい感じだったので、二つの施設ではたらく人に共通することを考えました。これまでアイデアを拡散させる話し合いを多く経験している子たちですが、納得解をつくる総合化を目的とした対話に挑戦させました。手応えを感じる対話ができました。繰り返し取り組むことで精度を上げていけば、すごい高学年になりそうです。


 (7)水のじゅんかん(班ごとに課題を設定→個人で振り返り)

この時間の流れは以下のような感じです。社会科が好きな人間の悪い癖で資料過多になったことを反省しています。班で設定した課題については、「似た感じになるかな」と思っていたけど、意外とバラバラでした。こうした場を作ることで子どもたちが自分たちで学び合う様子が見られて、使い方がこなれてきたと感じました。
(1)単元の学習問題をふり返る
(2)今日の課題の設定
※班ごとにどんなことをこの時間で学びたいかを設定
※単元の学習問題から解決する問題の範囲を示している。何でもいいわけではない
(3)学習
(4)ふり返り

 (8)残された学習問題を解決しよう(一人一人が探究する)
単元の学習問題もほぼ解決されてきました。そこで、まだ未解決の問題や単元の学習を通してもっと調べてみたいことを自由に調べる「プチ探究学習」を行いました。

ダイナミックな探究学習ではありませんが、現在、学んでいる単元を振り返って子どもたちが自身の「もっと知りたい」「他に調べたい」といった課題に向き合う充実した活動ができました。

もちろん、課題もありましたが、概ね、ねらっていた活動はできていました。何より授業後に「今日の勉強楽しかった」そんなつぶやきが聞けたこと。授業後にお互いの調べた結果を見合ってコメントする子がいたこと。図書室に行ったとき調べていた内容に関連する本を読みふけっていたこと。そんなことが成果です。

5.おわりに

単元の残りはこんな感じです。

9、10.水の学習をすごろくに(miroを使ったり、手描きしたり→miroボードに集約)
11.単元のまとめ(ふり返り)
12.評価(テスト)

楽しく終われそうです。

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