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自然を楽しむ視点を教えてくれる、宮澤賢治のことば

自然の中を歩くのが好きで、自然からある種のときめきや感動を得られたらと思っている人は多いのではないでしょうか。宮澤賢治の作品が、より自然を楽しむためのヒントになるかもしれません。そんなヒントを集めた『自然をこんなふうに見てごらん 宮澤賢治のことば』2023年2月に刊行されます。

宮澤賢治は⾃然を楽しみ、それを⾔葉にすることが⾮常に上⼿な⼈でした。
賢治は自らの詩を「心象スケッチ」と呼んでいますが、それは、こころに映ったイメージを、そのとおりそのままに言葉でスケッチした、ということのようです。

つまり自然のなかで感じた「楽しさ」や「よろこび」「感動」を、そのままに書いている。エッセイストの澤口たまみさんは、こう書いています。

宮澤賢治の凄いところは、そのものを⾒たときの⾃分の⼼の動きを、ごく素直に書きとめていったことである。⾃然を、書く対象として向こう側に置いているのではなく、いったん⾃⾝の内側にとり込んでおいて、⼼のなかを⾒つめながら⾔葉を紡いでいった。

『宮澤賢治―雨ニモマケズという祈り』重松 清, 小松 健一, 澤口 たまみ 著 新潮社

実際、自然を見る人であれば、その言葉の的確さに感じいるでしょうし、「自然のことはよくわからない」という人も、自然を見る楽しさとはこういうことなのか、とよくわかるのではないでしょうか。

たとえば、自然の見事な情景を見て、

すべて天上技師Nature氏の
ごく斬新な設計だ

心象スケッチ『春と修羅』「樺太鉄道」

と言ってみたり、
あるいは枝いっぱいに花を咲かせるコブシを、

「枝にいっぱいひかるはなんぞ」
「天に飛びたつ銀の鳩」

 童話「マグノリアの木」

と書いてみたり。

有名な「銀河鉄道の夜」や「注文の多い料理店」などのおはなしも、自然のなかで感じた賢治の心象風景がもとになっているようです。

これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。
ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。

『注文の多い料理店』序の文より

このように考えると、当然、そこには自然を見ることの楽しさ、自然に触れるときに感じるおもしろさが詰まっている。さらには自然をより楽しむためのヒントもあるはず。だから、その言葉を読み解いていけば、もっと自然を楽しむ方法がわかるはず。

そう考えて、エッセイストの澤口たまみさんに本を依頼することにしました(なんと澤口さんは大学・高校と賢治の後輩でもあるとのこと)。宮澤賢治は相当な教養の持ち主で、また百年近く前に書かれたことばのためか、一見すると、どう解釈してよいのか、わからないところがありました(私の場合)。それが澤口さんのやわらかくやさしい文章で、「なるほど、そういうことだったのか!」「こういう視点はとてもすてき」と腑に落ちるようになったのです。

⽊の芽を宝⽯にたとえたり、春の速さを観測してみたり、⾵の指を⾒たり、風景を見て過去へと旅したり…

こういうふうに⾃然を感じとってみたい、こんなふうに季節を楽しみたい、と思わせてくれる魅力的なことば(視点)がたくさんありました。そんな宮澤賢治のフレーズを57個集めて解説した本が2月に刊行されます。

このnoteでも、これからいくつかご紹介していきたいと思います。興味をもっていただけたら、お手に取ってみていただけますと幸いです。

きっと、今より自然を見るのがもっと楽しくなると思います。

目次

中面サンプル

宮澤賢治のおはなしには、⾃然を⾒る視点の魅⼒が詰まっている!
岩⼿在住のナチュラリストが、その57の⾔葉を読み解き、⾃然を見つめる視点の魅力を綴る。

著 澤口たまみ
定価  2090円(本体1900円+税10%) 
発売日 2023年2月13日
四六版 208ページ

内容紹介

⽊の芽の宝⽯、春の速さを⾒る、醜い⽣きものはいない、⾵の指を⾒る、過去へ旅する…
⾃然をこんなふうに感じとってみたいと思わせる、宮澤賢治の57のことばをやさしく丁寧に紐といた⼀冊です。

「銀河鉄道の夜」も「注⽂の多い料理店」も、宮澤賢治は、おはなしの多くを⾃然から拾ってきたといいます。それらの⾔葉から、⾃然を⾒る視点の妙や魅⼒をエッセイストの澤⼝たまみさんが優しくあたたかな⽬線で綴ります。
読めばきっと、こういうふうに⾃然を感じとってみたい、こんなふうに季節を楽しみたい、と思わせてくれるはずです。

著者紹介

澤口たまみ
エッセイスト・絵本作家。1960年、岩手県盛岡市生まれ。1990年『虫のつぶやき聞こえたよ』(白水社)で日本エッセイストクラブ賞、2017年『わたしのこねこ』(絵・あずみ虫、福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受賞。 主に福音館書店でかがく絵本のテキストを手がける。絵本に『どんぐりころころむし』(絵・たしろちさと、福音館書店)ほか多数。宮澤賢治の後輩として、その作品を読み解くことを続けており、エッセイに『新版 宮澤賢治 愛のうた』(夕書房)などがある。賢治作品をはじめとする文学を音楽家の演奏とともに朗読する活動を行い、 CDを自主制作している。岩手県紫波町在住。

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