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街中の岩石“石材”観察も面白い!|くらべてわかる岩石 制作裏話

私たちにとっていちばん身近な石・・・
それは建物の石材ではないでしょうか?
現在制作中の『くらべてわかる岩石』の著者である西本昌司先生は、自然界で採集する石だけでなく、ビルの石材や城の石垣なども研究対象とする"街角地質学者"。
そして弊社のある神保町三井ビルディングは、壁も床も石だらけ!
…ということで、西本先生にご来社いただいた際に、ビルの石材について教えていただきました!


(西本先生→西本、編集→
 それでは早速ですが、先生。エレベーターホールのこの白い石、なんでしょう?

エレベーターホールの壁

西本 これはシェルベージュ(イラン産)ですね。よく見ると、白亜紀にいたアツバニマイガイの化石がたくさんありますよ。

先生の指先に、U字の化石がたくさん

 これって化石なんですね。これまであまり意識していなかった……。
西本 コップにフタがついているような形をしています。丸く見える化石は断面ですね。それから赤みのある線は、応力集中を受けて炭酸塩などがとけた部分です。このへんとか。

赤い線は炭酸塩などが融けた部分

 本当だ、赤い線が入っている! 石材は広い面に貼ってあると、いろいろな特徴が観察できていいですね。

 次はエレベーター内の床です。これも石ですよね?

エレベーターの床は3種類の石が貼り分けられている

西本 お、本物の石の床エレベーター、貴重ですよ! 最近はプリントが多いですから。
一番外側はオイスターパール(インド産)、その内側はブルーオリッサか、ラベンダーブルー(ともにインド産)。中央のオレンジ色はロッソマニャボスキ(イタリア産)じゃないかな。
 いま私、インドから来た石の上に立っているんですね。なんだか不思議な気分……。

 では次は、この赤茶の壁が気になります。

エレベーターホールを出たエリアの壁

西本 これもロッソマニャボスキ(イタリア産)ですね。大理石の一種で、人気があるよく見かける石材です。

 この緑色の壁も、気になります!

緑色が特徴的な壁

西本 ティノスグリーン(ギリシャ産)ですね。これは蛇紋岩です。
 川原で拾える蛇紋岩も綺麗ですが、石材となると豪華ですね!カッコいい〜!

 次はエントランスホールです。この2つは色が違うけれど、どちらも花崗岩でしょうか?

ベージュ色の壁
茶色っぽい壁

西本 そうですね、どちらも花崗岩で、ベージュ色の方がオーロガウチョ(ブラジル産)、茶色い方がカレドニア(カナダ産)です。白い粒が斜長石、ベージュの粒がカリ長石、グレーの粒が石英です。
 なるほど、石材として磨かれていると鉱物の粒もよく見えますね。

 最後に、ビルから出て神保町駅まで歩いている時、気になった石があるんです。この赤い石はなんですか?

真っ赤な石材がよく目立つ

西本 これはニューインペリアルレッド(インド産)です。いっときかなり流行った石材ですね。これも花崗岩ですよ!
 インドにはこんなに赤い花崗岩があるとは、驚きです!
西本 海外には日本で見られないようなカラフルな石がたくさんあるんですよ。
 街中での石材観察も、面白いですね! 

<西本先生、ありがとうございました!>

『くらべてわかる岩石』、いよいよ発売です!
本書では川原や海で拾える身近な岩石30種を紹介しています。
そして巻末には、街中でよく見かける石材48種も紹介しています!

プロフィール:西本昌司(にしもと・しょうじ)
愛知大学教授、博士(理学、名古屋大学)。広島県三原市出身。筑波大学大学院地球科学研究科修士課程修了。名古屋市科学館学芸員などを経て現職。名古屋大学博物館研究協力者。NHKラジオ「子ども科学電話相談」回答者。著書に『観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑』(ナツメ社)、『東京「街角」地質学』(イーストプレス)、『街の中で見つかる「すごい石」』(日本実業出版社)など多数。