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【読書感想文】賢治が問う人間の愚かさと欲望の行方『注文の多い料理店』

二人の紳士が山奥で遭遇する奇妙な出来事を描いた短編です。ある日のこと、山奥へと猟に出かけた二人の紳士。しかし、彼らの狩りは不調に終わり、連れていた犬は泡を吹いて倒れてしまいます。疲れ果て、空腹に苛まれた2人の前に突如として現れたのが「西洋料理店 山猫軒」でした。空腹に苛まれた彼らは喜んで店に入りますが、そこで予想外の展開に遭遇します。

不思議なことに、店内には「着ている物を脱いでください」「金属製の物は外してください」といった、料理を提供するはずの店としては不自然な張り紙が次々と現れるのです。紳士たちは空腹のあまり、戸惑いながらもこれらの指示に従うのですが、最後の扉を開けた瞬間、彼らは恐ろしい真実が待ち受けていたのでした。

この物語の見どころは、人間の欲望や無知が引き起こす危険を、紳士たちのコミカルな行動で表現しているところです。序盤こそ単なる珍道中の雰囲気ですが、読み進めるうちに徐々に不気味さを増していきます。そして、最後の真相が明かされた時の衝撃といったらありませんでした。

また、私はこの物語は、人間の傲慢さや自然界における食物連鎖の厳しさを鋭く指摘しているようにも感じました。都会から来た「狩る側」である紳士たちですが、自然の中では逆に「食べられる側」になるという逆転の構図は、人間中心主義的な世界観への警鐘とも取れます。

賢治の他の作品同様、賢治独特の世界観と、巧みなストーリーテリングが融合した本作は、年齢を問わず楽しめる名作と言えるでしょう。

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