【読書感想文】花と鳥が描く、人間社会の縮図『まなづるとダァリヤ』
花と鳥の世界を通して人間社会の縮図を描いた物語です。庭に咲く3本のダリヤの花と、その上を飛ぶまなづるとの関わりを軸に展開します。
中央に立つ赤いダリヤは、女王のように威厳を放っています。その両側には、お付きのような2本の黄色いダリヤが控えています。少し離れたところには、白いダリヤが静かに咲いています。この花々の上を、まなづるが優雅に飛んでいきます。
赤いダリヤは自分の美しさを誇り、周囲からの賞賛を当然のものと考えています。「もっと輝くわよ!」と意気込むが、日が経つにつれて疲れが見え始めます。他の花たちも、それぞれの思いを抱えながら日々を過ごしていきます。
本作の見どころは、花と鳥という自然の存在を通して、人間社会の様々な側面を鋭く描き出している点です。権力や名声に溺れる者、それに追従する者、そして静かに自分の道を歩む者。それぞれの姿が、ダリヤたちの描写に巧みに投影されています。
また、まなづるの存在も興味深いです。花々の上を飛びながら、その様子を冷静に見つめているまなづるは、まるで物語の語り手のようです。時に花々と交流しながらも、一定の距離を保つその姿勢は、社会を客観的に観察する視点を提供しています。
私はこの物語を読んで、自然界の中にも人間社会と同じような喜怒哀楽や権力構造が存在するのではないかと思いました。同時に、それぞれの存在が持つ美しさや尊さも感じ取ることができました。賢治の繊細な観察眼と豊かな想像力が、この短い物語の中に凝縮されています。
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