【読書感想文】痴漢冤罪に仕組まれた男の運命は?新人巡査と老弁護士が挑む正義の物語『白日の鴉 条川署クロニクル (光文社文庫)』
仕組まれた痴漢冤罪事件に巻き込まれた男と、彼を逮捕した新人巡査の運命を描く警察小説。主人公の新田真人は、電車内で痴漢の疑いをかけられた製薬会社のMR・友永孝を逮捕しますが、彼の無罪を主張する言葉に疑問を抱きます。やがて、友永の事件には裏があることが判明し、新田は老弁護士の五味陣介とともに真相を追求することになります。留置場から拘置所、そして法廷へと移動する友永の運命はどうなるのでしょうか?
この本のテーマは、正義とは何か、という問いに挑むことです。新田は、友永の無実を信じて彼を救おうとしますが、その過程で自分の正義が揺らぎます。一方、友永は、自分の正義を貫こうとしますが、その結果が自分にとって本当に幸せなのか疑問に思います。そして、五味は、正義のためには手段を選ばないという姿勢を貫きますが、その背景には過去のトラウマがあります。このように、登場人物たちはそれぞれに正義の意味を模索し、苦悩し、成長していきます。
本書を読んで、私は特に、友永と新田の関係が印象的でした。友永は、新田に対して最初は敵意を持っていましたが、次第に心を開いていきます。新田は、友永に対して最初は同情を持っていましたが、やがて友情を感じるようになりました。二人は、互いに支え合い、時にはぶつかり合いながら、事件の真相に近づいていきます。その過程で、二人の心の変化が丁寧に描かれていて、読んでいて胸が熱くなりました。
総評として、この本は、痴漢冤罪事件という社会問題を題材にした、スリリングで感動的な警察小説です。登場人物たちの人間味あふれる描写や、事件の謎解きの展開が見事で、読み始めたら止まらなくなります。福澤徹三さんは、警察や法律の専門知識を駆使して、リアリティのある物語を作り上げています。この本は、警察小説のファンはもちろん、正義とは何かという問いに興味のある人にもおすすめです。
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