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降り落ちる雨は、黄金色#13

「今週のMステにちょっと映るかも」

 取り巻き達は鈴木奈津美の話に、おおげさにうなづいている。みんな身近のキラキラした人に吸い寄せられる、蛍光灯に群がる蛾みたいだ。くだらない。一箇所にあつめて殺虫剤をかけてやりたい。

 彼女の父親は海外で働いている為、奈津美は日本で未発売のブランド品を持っている。クラスメイト達はいつも、奈津美を眩しそうに 見つめる。私はその眼差しが気に入らない。 心底軽蔑する。 しゃらくせえ。奈津美に見えないようにして中指を立て、無心で本を読んで逃避した。

 こんな場所さっさと卒業したい。彼女は何でも持ってるから苦手だ。なにもしなくても愛される。私はそれが許せない。

 本を読んでいる間は見えないバリアに守られている自分を、一生懸命にイメージしてやり過ごした。私の心はどこかに牢獄に囚われている。

 本に夢中になり過ぎ、佳代からの LINE の返事を忘れてしまい怒られた。

「またミステリー読んでたんでしょ」

すぐに同意のスタンプを送信した。

 ミステリー小説は謎を追いかけていくと自然にページがめくられ、謎解きと答え合わせのバランスのとれた話は私を安心させてくれる。小説を何度も読むうちに私にある欲望が生まれた。

「こんな物語を書いてみたい」

 このとっぴで素晴らしい思いつきを一刻も早く誰かと共有したくて、私は佳代の家へ向かった。

つづく

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