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【第40回】未成年者② 参政権について #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

不可解な公職選挙法

未成年者の問題に関連して、国家に対する自由、参政権について説明してきました。実は、選挙権は権利であることは間違いないのですが、被選挙権はそもそも権利なのだろうかとか、いろいろ議論があるところですが、改めて未成年者の問題に戻りたいと思います。

必ずしも憲法上の人権とまでは言えない飲酒や喫煙については、未成年者に禁止しつつも、ペナルティーは大人に科していました。ところが、公職選挙法第137条の2第1項は、未成年者の選挙運動を禁止しています。そして違反者には第239条1項によって1年以下の禁錮または30万円以下の罰金が定められています。

選挙運動は、成人であれば表現の自由にかかわる問題ですから、そもそもなぜ未成年者に制限されているのかも問題ですし、もし仮に禁止することが合理的だという説明がつくのだとしても、罰則については、未成年者を使用した大人を対象とすれば済むことではないかという指摘はもっともだと思います。

かつて、私が新人議員の頃、「これおかしくないですか」と改正の必要性を訴えたところ、「理屈はわかるが、このことで陳情とかあったのか?」と先輩議員から怪訝な顔をされました。人権の獲得と同じように、法律の改正も、机の上での議論よりも、何らかの運動が背景に必要なようです。

成人年齢の引き下げ ―20歳から18歳へ―

日本では長い間、成年年齢、選挙年齢ともに20歳とされてきました。これが改まるきっかけとして大きかったのは、私自身も原案の作成にかかわった、日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法でした。

従前から、日本の成人年齢や選挙権年齢が諸外国に比べて高すぎるという指摘はありましたが、社会が複雑化していることや、昔の20歳に比べて、現在の20歳の若者は幼すぎる、という意見もあり改正には至りませんでした。

この問題の背中を押したのは、憲法改正国民投票法でした。国民投票法は投票権者を18歳以上としましたが、法成立時に附則が付いていて、民法の成年年齢や、公職選挙法の選挙年齢についても検討すべきことが当時、宿題として課されていたのです。

Due process of law

現在ではいずれも18歳で決着がついていますが、実は、国民投票法案を検討するに際しても、私自身が主張していたことなのですが、テーマによっては16歳まで引き下げることもあってよいのではないかと考えています。

公職の選挙の場合、たとえば衆議院選挙をとってみると、その時々の政権をどこに託すか、というもので、最長でも4年、最近では短いと2年程度の政権を付託するものです。地方選挙では、解散やリコールという異例のことがなければ、4年間の地方政治への付託にすぎません。しかし、憲法は、一度改正されると、かなり永続的なものとなることが予想されます。そして、例として教育を受ける権利が分かりやすいと思いますが、未成年者の人権にかかわることがテーマとなることもあり得ます。その場合に、大人だけの国民投票で結論を出すというのは、いかにもデュープロセス・オブ・ロー、法の適正な手続の観点から、当事者に投票権を与えないで決める、というのは望ましくないと思われます。障がい者の運動のスローガンに、Nothing About us without us(私たちのことを私たち抜きで決めないで)というものがありますが、このことは、憲法改正の国民投票に際してもテーマによっては妥当する考え方だと思います。

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