ambient tune 聴取の詩学III

世界はたったふたつのものでできている。
反復するもの。
変容するもの。

以前、個展の案内に添えた言葉です。
バッハのゴールドベルク変奏曲に触発されたイメージ。
音楽ってやっぱり世界の縮図だなって。

変奏曲を作る…やってみたいけど残念ながら能力が追いつきません。
ならば変奏曲ではないけれど、
単純に繰り返すフレーズと絶対繰り返さないフレーズを組み合わせてやってみようと。
それがこの曲。
繰り返す和音ははただただ繰り返すだけです。簡単です。
ニュアンスや微妙な間合いは自然に揺らいできて、それも一興。
問題は繰り返さないフレーズ。絶対繰り返さないって難しいものです。
のめり込んで弾いているうちに、思いっきり繰り返しのフレーズやっちゃってます。
全体としても、同じような調子が延々と続く感じ、何かが繰り返されている感じ。
その世界に埋没しているとやはり基本的には繰り返しがメインになるようです。
蟻や蜂、昆虫の生活形態みたいな。

「変化をつける」ためには、その世界の有り様、世界の成り立ち、世界に働く作用を
俯瞰して見ることができなければならないんじゃないかと思います。
こうした即興演奏でいうなら自分の奏でるフレーズひいては演奏している自分自身を
どれだけ客観的に捉えられるかということが必要。

(話はそれますが、以前お話した「作る」と「成る」の話にあえて関連づけると、
対象を俯瞰してスタンスからできてくるのが「作る」
対象に埋没したところからできてくるのが「成る」(←オートポイエーシスのイメージ)
これ、今のところ思いつきですが、まんざら的外れでもないように思います)

まあその意味では、ついつい繰り返しが出てくるのは、その世界にどっぷり浸ることができた証、かも。それはそれで結構うれしいことです。
打ち寄せる波、そよぐ風、流れる小川…繰り返されるものって
時に心地よさであり、時に力強さであり、時に躍動感であり。

私のやってるような曲、起承転結とかないので
どうやって終わらせるのかがよくわからないんです。
疲れたから、ふと我に返ったから、飽きたから、興ざめするような失敗したから、電話が鳴ったから、偶然終わりっぽい響きがしたから…。
今はだいたいそんな感じで終わってます。

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