個人投資家の逆襲~カネボウ事件

文字数20000字ちょっとです。私が初めて体験した裁判は、500人の集団訴訟でした。電子書籍と同じ内容です。

第1章
カネボウ事件
~裁判初体験
 
戦後最安値・・・・・277円
公開買付価格・・・162円
裁判所認定価格・・360円
事件の概要・・・・・・営業譲渡
私の立場・・・・・申請人団長
参加人数・・・・・・・約500人 
 
 
概要: 平凡なサラリーマン投資家だった私が、ひょんなことから申請人団長となり、裁判を初体験した事件。裁判なんて一生しないと思っていたのが、その後多数の裁判をするきっかけとなった思い出深い事件。
 
 
 
 
 
 1 村上世彰の予言
 
 「カネボウ株は、面倒くさいから売っちゃったあ」
 
 忘れもしない平成17年6月28日、所沢駅のホームで村上世彰にこう言われて、目の前が真っ暗になったのをよく覚えている。
 この日はカネボウより先に上場廃止となった西武鉄道の株主総会。西武鉄道は当初、500円での新株発行などというとんでもない案も出ていたが、村上氏が「少なくとも1,000円の価値がある」と株主総会で発言したことなどにより、それはなくなった。
 結局その後,西武鉄道は平成26年に西武ホールディングスとして再上場し、私が大半を売却した後に3,000円をつけた。
 村上氏はその後,インサイダー取引で逮捕されるが、当時は株主の味方という論調のマスコミが多く、西武での活躍はまさにそうだった。
 一部報道で、村上氏がカネボウを買ったとされていたので、私はカネボウでも村上氏の活躍に期待していた。村上氏のファンドからは、私のところに、「西武の株主様へ」という手紙が来ていたので、私は西武の株主総会後、所沢駅のホームで、村上氏に話しかけてみた。
 
 「お手紙を頂いた山口と申します。カネボウでもお世話になります」
 
 これに対する村上氏の答えが、冒頭のせりふである。
 なぜ、と食い下がったところ、
 「増資(注1)を見て面倒になった」というのが答えだった。
 呆然とする私に村上氏は
 
「大丈夫。なんとかなるって」
 
 そう言って私の肩をポンと叩き、離れていった。
 
 「カネボウはなんとかなるけど、面倒くさい」
 
 結果的に、村上氏の言うとおりになったが、当時の私は自分の置かれた状況に気づいていなかった。

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