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Princeの『Purple Rain』を聴いて、日米の商標を検索した話


私のいちばん好きなアーティストはプリンス

 私は15年前から、歌手のプリンスが好きです。
 プリンスと出会ったのは、高校2年生の時です。

 当時、マイケル・ジャクソンが亡くなり、テレビでミュージックビデオや彼の功績を称える番組が放送されていました。
 気づくと、マイケル・ジャクソンを始めとする、80年代の洋楽にどっぷり浸っていました。
 ある日、「マイケル・ジャクソン対プリンス」といった特集の載った音楽雑誌を見つけ、「プリンスって知らないな……でも、マイケルと比べられるくらいなんだからよっぽどの人なんだろうな」と関心を抱きます。

オーディオのイメージ

 そしてプリンスのベストアルバムを聴いたところ、衝撃を受けます。
 一曲一曲が、まるで異世界に引きずり込むような力を持っているのです。
 すっかりプリンス沼にはまり、曲によっては歌詞を見ずに歌えるほどになりました。

 今もオリジナルのアルバムを集めています。数が多いので、コンプリートするにはまだ年月を要しそうです。

40年前、世界的にヒットしたアルバム『Purple Rain』

 今年(2024年)は、プリンス最大のヒットアルバム『Purple Rain』が発売されてから、40周年の年です。
 アルバムを構成する9曲はどれも違った魅力があり、通しで聴くとジェットコースターのように感情を揺さぶられます。

ラジカセのイメージ

 1曲目『Let's Go Crazy』は、羽生結弦さんがショートプログラムで使用したことで、近年有名になった曲です。魂のこもったギターソロや、天国と地獄を歌った歌詞が印象的な、ロックです。
 2曲目『Take Me With U』は、ときめく恋心を歌った、女性歌手とのデュエット曲です。
 3曲目『The Beautiful Ones』は、可憐なファルセットと激しいシャウトを駆使したバラードです。
 4曲目『Computer Blue』は、火傷しそうに熱いギターの音色が耳に残る、ハードロックです。
 5曲目『Darling Nikky』は、悪い女性に誘惑されて夢中になる男性の話(詳しくは書けませんが……)を、粘着質な声で歌った曲です。

 6曲目『When Doves Cry(邦題:ビートに抱かれて)』は、分かり合えない男女の悲しみを描いた曲です。ベースラインがないとは思えないほど、ダークな曲調です。
 7曲目『I Would Die 4 U』は、タイトル通り「君のためなら死ねる」という純愛を歌った、浮遊感たっぷりのユーロビートです。
 8曲目『Baby, I'm a Star』は、「スターになっちゃうかも」という期待を込めた、とにかく楽しいハイテンションな曲です。
 最後の曲『Purple Rain』は、世界の終わりの日を歌ったロックバラードです。演歌のように情念の籠った歌声と、感傷的な響きのギターが、涙を誘います。

商標「Purple Rain」を拒絶するアメリカ、登録する日本

 「Purple Rain」は、商標としては日米で全く違う扱いを受けています。
 アメリカ特許商標庁は、プリンスのレコード会社でない第三者による「Purple Rain」の商標登録出願を、登録しませんでした。

 2020年、バング・エナジー社が「Purple Rain」を、エナジードリンクなどの範囲について商標登録出願しました。
 プリンスの楽曲を管理するプリンス・エステートは、訴えを起こしました。
 2022年、アメリカ特許商標庁は「需要者がPurple Rainという名前のエナジードリンクを見たら、プリンスが売っていると勘違いする。登録できない」と判決を出しました。
 『Purple Rain』がプリンスのアルバムや楽曲、映画の名前として浸透しているために、出所の混同を起こす可能性がある、ということです。

 一方で、日本の特許庁で「Purple Rain」(カタカナも含む)を検索すると、プリンス関連でない人が出願したものも登録されています。
 「化粧品」を指定商品とする登録例(登録第5155936号)、「果実酒」を指定商品とする登録例(登録第6758634号)があります。
 しかも、途中で拒絶理由通知(この商標は登録できませんという、特許庁からの通知)を受けることなく、登録されています。
 日本では、『Purple Rain』は文字通り「紫の雨」とのみ認識し、特定の出所を連想しない人が多いことが、うかがえます。

プリンスのギター(ハードロックカフェ六本木の店内にて)

 同じ「Purple Rain」なのに、商標としては日米でこんなに違う扱いを受けているなんて、驚きですね。ファンとしては、複雑な気持ちです。

まとめ

 6月は、プリンスのドキュメンタリー映画『プリンス ビューティフル・ストレンジ』が上映されます。
 大スクリーンで彼の功績を観るのが、楽しみです。

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