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昭和的・家父長的なリーダーシップ理論があった~Paternalistic Leadership~

こんにちは。今回はPanternalistic Leadershipについて解説します。Panternalisticは「家父長的」という意味で、Panternalistic Leadershipに対しても「家父長的リーダーシップ」「父権的リーダーシップ」「温情主義的リーダーシップ」などの訳語があるようです。
家父長のように慈愛に満ちるとともに服従も求める、ちょっと昭和的なリーダーシップを見ていきましょう。

今日の一言サマリ

家父長的リーダーシップは東アジア共通のリーダーシップスタイル


参考にした論文

石川淳、2022、『リーダーシップの理論』、中央経済社
Cheng, Bor-Shiuan et al. 2014. “Paternalistic Leadership in Four East Asian Societies: Generalizability and Cultural Differences of the Triad Model.” Journal of Cross-Cultural Psychology 45 (1): 82–90.



家父長的リーダーシップの特徴

家父長的リーダーシップは、強い規律や威厳と、愛情深い慈悲を混ぜ合わせたようなリーダーシップです。
paternalisticという言葉には「温情的」というニュアンスと「自由を制限する」というニュアンスを含み、Paternalistic Leadershipはこの両面を持つリーダーシップと言えます(石川 2022)。

家父長的リーダーシップは次の3つの下位概念を持ちます。
権威主義:部下に対してコントロールを行い合理性を超えた従順を要求する慈愛:フォローワー個人やその家族が幸せかどうかまで気を配り、大事にしようとする
道徳:高い道徳基準を持ち、自己の利益よりも集団の福祉を優先する

日本でも有効なのか

リーダーシップの理論は欧米が発祥のものがほとんどなのですが、家父長的リーダーシップは中国の研究者が提唱し、アジアや南米などで研究が盛んになりました。伝統的に家父長が権威を持ってきたアジアの文化的背景から生まれたリーダーシップ理論です。

家父長的リーダーシップは、日本でも有効なのでしょうか。Cheng (2014)は、中国、日本、韓国、台湾の4つの東アジア社会で家父長的リーダーシップの3つの要素が適用できるかを検証しました。
その結果、3つの要素は4か国のすべてで有効であることが示されました。一方で、各要素の影響の強さは国によって違いました。例えば、日本においては権威主義的なリーダーシップ行動が他の三国に比べてより低い評価を受ける傾向があることがわかりました。


実践への示唆

ビジネスの現場では、今回の知見をどのように活用できるでしょうか。

まずリーダーシップのあり方の多様性を挙げることができます。どのようなリーダーシップが効果的か、というのは組織の置かれた状況、フォローワーの状態や、組織の属する文化など様々な要因で異なります。
どんな状況にも適用できる万能のリーダーシップスタイルというのは存在しないということに気づかされます。

また、どのようなリーダーシップが求められるかは、時代によっても変化します。今回紹介したCheng(2014)が発表されてから10年が経過しており、家父長的リーダーシップが今の日本でも有効かどうかは新たな研究を待つ必要があるかもしれません。

家父長的リーダーシップは、フォローワーへの愛情からフォローワーのプライベートな生活にまで関与し、フォローワーのためではあるもののフォローワーの意志を尊重しないという、今の日本で「昭和的」として嫌われそうなリーダーシップスタイルに見えます。
このようなリーダーシップスタイルが、主に海外で研究分野として確立されていること、すなわち研究対象となるほどよく観察される事象だということが興味深いですね。

paternalisticという家族的な言葉を含むリーダーシップ論を、家族について思いを馳せつつ考えてみました。


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