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TOu-KYOu

去年の12月に引っ越しをした。
東京に来て2度目の引っ越し。

初めて上京するとき、東京の土地勘が一切なかったので練馬の中村橋というところに住んだ。
マジで不便やった。
まだその頃大阪から同世代で上京した人がほとんどいなくて、相方の舘野に色々とどこが便利だとか聞いて中村橋に決めた。
舘野曰く、とにかく中野から近い方が良いということを聞いたので、中村橋にした。
近いの定義から聞いたら良かった。
僕は5キロ圏内は近いという感覚やった。
500キロくらい遠いところから引っ越してきた訳やし、100分の1やん、くらいに思ってた。
まぁまぁ中村橋から中野って遠かった。電車で行くのも乗り換えとかめんどかった。
あの時、中野に住め!って言って欲しかった。

でも立地を除けば今まで住んだ家で1番気に入っている。
2LDKの風呂トイレ別¥75000。
中村橋から10分。練馬から25分。

作家の人と内見をした。
その人と一緒に東京へ出てきた。
大阪から不動産屋さんとやりとりをして、前もって物件を送ってもらい気になるところを、東京へ来て内見した。1日で決めると意気込んで来た。
僕は弟と住む家を探していたので2LDK。
内見に来た時めちゃくちゃ気に入った。
家の前にだだっ広い駐車場があってその駐車場から大きい鉄塔がニョキっと見えたところがとても気に入った。
前のブログのタイトル鉄塔大和路線に取り入れるくらい鉄塔が好きだ。
この家は内見というより外見で気に入った。

そこに2年半住んだ。
芸人はほとんど来たことがない。呼んだことがないに近い。
来たことあるのは大阪からの同期、先輩が数人。
一回、大阪から東京でライブがあるからといっぱい先輩が来てくれたことがあった。
アキナさん、アインシュタイン河井さん、守谷日和さん、トット多田さん、バイク川崎バイクさん(当時はまだ大阪)、斎藤紳士さん。
何もないが皆んなで銭湯いったり、前の駐車場で僕らネコニスズのネタを見てもらったりした。
ネタはコンビニでモメるという内容のコントだった。初めて出来たネタ。
管理人が出てきて喧嘩やめて下さいと言われた。
芸人が囲んでネタ見てるんって、ヤンキーがタイマン張ってる構図に見えるんやなと思った。
にしても舘野と僕なら、完全に僕が舘野呼び出してしばくイジメにしか見えへんなとも見た目の切なさも感じた。

みんなが帰って行く時ほんま寂しい気持ちになった。
僕はこの頃、まだこっちに馴染めず、芸人で仲良い人もいなかった、というよりなんか勝手に拗ねてたような気もするが、大阪が最高やわ〜みたいな気持ちがあった。

おとんが生前唯一来た東京の家でもある。
今も売れてるわけやないが、何故か当時はより金がなかった。良く弟と2人で通った道に、ちょっと高そうな焼き鳥屋があってこういうとこ行きたいな〜と言ったりしていた。
おとんが来たときにちょっとえぇとこ行こやとそこに連れてってもらったり、銭湯行ったり、いつも来るたびに涙腺が崩壊しそうなメンタルで飲んだ。弟もそんな感じだったと思う。

おとんが一度うちに来たことをブログに書いたことがある。
駅の改札を出て、左に進む、そこを真っ直ぐ行くとファミリーマートが出てきて、、、、
興奮してんのかなんかわからんけどめちゃくちゃ家の行き方を説明してた。

真っ直ぐ行くと駐車場が出てくる、家をグルーっと見ると窓際に大きなキングジョーのフィギュアが置いてある!
お!間違いない!この家や!このキングジョーのフィギュアが目印!!

いや、目印やないねん!載したらあかんねん!
ご丁寧に自分の目線で撮った写真を20枚くらい使って説明していた。絶対たどり着けるやつ。
おとんにその記事を消す様に言うと、あんま理解でけへんみたいなテンションでダルがりながら消した。なんでや。

居候がいた時もあった。
弟の高校の同級生のやすという見た目はチャラーい線の細い男。こいつは9ヶ月くらい一緒に住んだ。
映画の主人公の様なスタンスのやつで見た目とは裏腹熱いやつだった。
やすが弟の駿にちょっと出かけてくると言って行き先を伝えず出てった日があった。
帰って来たらタトゥーを入れていた。
右腕にバーンとチェゲバラの顔、その下に英語が入ってた。
英語の意味を聞くと「革命か、死か」とだけ言われた。
やすは居酒屋でバイトしていた。僕はどゆことや、と思ったがあいつの自信満々の顔見てたらどうでも良くなった。
やすは寝てるときに痒かったのかチェゲバラを搔きむしりまくった。本人に意識はない。
気づいたときにはチェゲバラの右目が伸びて変な顔になっていた。
変な革命が起きないことだけを思った。

やすは中野で居酒屋のバイトをしていた。
ほぼ毎日入っていて、その後飲んで帰ってくる。
3回に1回は泣きながら帰ってくる。
何で泣いているかは説明を聞いてもいつも分からなかった。多分このとき、色々と悶々とした感情が酒を飲むと泣いてリフレッシュするルーティンやったんやと思う。
弟の駿と「今日やす泣きながら帰ってくるかな?泣いてないかな?」と2人で予想したりして楽しんでいた。
やすが泣いてないに予想して泣いてないのはあんま盛り上がらんかったので、いつも2人で泣いてるに予想した。
やすが泣いてると盛り上がった。やすが泣いてると嬉しいルーティンになった。
やすはすぐ泣くルーティンから外れて泣きながら帰ってくるんをやめた。
あ、やめれんねや。と思った。


そんなやすは飲み屋で知り合った、まぁナンパみたいなもんだと思う。女性と結婚して北海道でお坊さんになった。
意味がわからないが、それがやす。
東京も何も言わず急に出てきてウチに転がりこみ、急に結婚すると彼女の北海道の実家の寺を継ぐことになったりと、革命起きまくりやった。

結構思い出の詰まった家やったな〜と今書きなが思う。
やすと3人で暮らしていたとき毎日飲んでいたので騒がしかったから無茶苦茶に苦情が来ていたらしい。
大家さんが僕らに告げてくれたのは家を出るときだった。
芸人と俳優を目指している兄弟を陰ながらめちゃくちゃ応援してくれていた。ほんまに有り難かった。名前も思い出せないが顔は薄〜く覚えてる。

そんな引っ越しの日、自分たちでハイエースで何度もピストンして荷物を運び出した。
最後の荷物を運び出して、すっかり暗くなった駐車場から周りを噛みしてるように見渡していた。
駐車場の向こうにアパートがあり、シャワー室らしき窓に明かりが点いた。シルエットがくっきり浮かび上がる。
えっ!!!!女性や!!!!
めちゃめちゃにロケット型だった。クッキリとロケット型やった。基準の様なロケットやった。
漫画のエロいやつって現実で起きたときその破壊力は2、3倍へ跳ね上がるくらいエロいんやと知った。
全然引っ越したくなくなった。
あと1週間でえぇから早よ知りたかった。
と思いながら中村橋の家に別れを告げた。


次に住んだのは、中野やった。
中野の近くは本当に便利と知って東中野にした。
ほぼほぼ用はないがテレビ局のアクセスとかも良かった。
ただ駅から15分歩く。
こういうのも慣れれば苦じゃないと思い、何年か住んだ。
ずっとしんどかった。雨とかむっさだるかった。
雪とかむっさうっとかった。

この家は2LKのメゾネットタイプ、風呂トイレ一緒、¥98000。

ここの家へ引っ越して色んな芸人と家はが近くなり、仲良くなれた気がする。
広い家だったので家にも色んな芸人を呼んだ。
大阪からアキナ山名さんや、トット多田さん、吉田たち こうへいが泊まりに来てくれたりもした。
大半この家にいたのは同じ事務所、タイタンのウエストランドふとし。
暇さえあれば良く来て一緒に飲んだ。
のちに、同じ事務所のシティホテル3号室の亮太。
良く3人で飲んだ。

なんのエピソードもない。
亮太が飲んでるとき、夜中2時を回るくらいに決まってコンビニでおにぎり2つを買ってきて夢中になって食べるくらい。
なにもない。

飲んでる時に騒ぎすぎて窓ガラスに石当てられてみんなが銃声や思って伏せたってのはあるくらい。
なにもない。

酔っ払ったふとしが寝てる弟にちょっかいをかけて
「ふとしくん、ほんまやめて。ほんまにおもんない。」て言われたくらい。
なんもない。

2人とも良く時計を忘れて帰ったとか、そんな感じ。
なんもない。

こんなにコスパの悪い飲みはなかった。芸人が集まってるのに何も起きず何もなく帰る。でも心地は良かった。これが危ない。

1度タイタンの若手ライブでふとしと2人でMCをする事があった。こんなに普段から飲んでるから大丈夫だろうと高を括って臨んだが、えっ!?ここホームやんな!?ってくらいアウェーな空気にしてしまった。スベり散らした。
その日は今まで1度なかったが、2人で飲まずに王将でご飯だけ食べて帰った。飲まない方が良いとなった。


僕はその家を出て今、世田谷に住んでいる。

今住んでいる家は今から文句を書くので場所とかは書かない。

引っ越して2日後、まだ部屋の中は段ボールで散乱していた。
バイトやらライブやらで0時近くに帰宅する。
物音を立てないように静かに段ボールから荷物を取り出していた。
夜中2時に回って寝ようかなと思った時。

ピンポーンとインターフォンが鳴った。
えっ!?と思ったが騒いでないし、こんな夜中に来るかね?と思いインターフォンのモニターを確認した。何故か家は古いのにインターフォンだけ新しい、ジジイやのにモアテン履いてる感じ。

モニターを見ると坊主にヒゲの大男がいた。
僕は怯んだ。怖すぎる。
そこからインターフォンが7回くらい鳴った。
僕はこの人にまだ会ったことがない。
この人は僕がどんな奴かも知らずに夜中2時過ぎに、インターフォン7回押せる男なんやと思ったら根性の決まり具合に震えた。
軽トラ乗ってても黒塗りベンツにクラクション鳴らせる男やと思う。
うるさい、とのことやった。
片付けていたのは事実やけど、ほんまに常識の範囲内でやってたんですーってことはわかってほしい。

そこから数日後、僕は焼酎の空き瓶を倒してしまった。
コロン。

ピンポーン!!!

嘘やろ!?
これで来る??

「はい?」
「うるさいんですよ〜。今なんか倒されましたよね?」
「はい、気をつけます」

それくらいえぇやん!!!倒されましたよね??は??
ジャッジ激辛やん。倒すこととか、これからも絶対あるやん。ノーミス生活は無理やて。

僕はある仮説を立てた。
多分奴は下に住んでいる。
奴は昔から強面アーマーを振り回して生きてきた。
引っ越してきて一発強面アーマーでぶちかましとけば静かに暮らすであろうと思てんちゃうか?
空砲ぶっ放してんちゃうか?
過敏な強面を演じることでかまし入れて来とる。
奴はポストにドラえもんのシール貼ってたし、絶対ほんまは優しいやつやと。

僕はそこからそんなに物音を立てないように立てないにしていた無音ライフをやめた。家賃はろてるし、普通に暮そ。

あれから半年何もない。
よっしゃー!!!有音ライフトライアル期間終了!
今はオフィシャル有音ライフを楽しんでいる。
良かった。


今の家の下に蕎麦屋がある。
僕はなんとなくその蕎麦屋に行った。

僕はカレー蕎麦が好きや。
実家の近所にあった蕎麦屋がカレー蕎麦が看板メニューやった。片栗粉多めのベトンッとした重めのカレー蕎麦。
僕はそれが好きでおかんと良く行った。
初めてそこの蕎麦屋に来たらしき人がカレー蕎麦を頼んだ。その人はその重めなカレー蕎麦が気に入らなかったらしく水を入れた。
亭主キレた。
僕はそのこだわりも含めてそこのカレー蕎麦が好きやった。

家の下の蕎麦屋でもカレー蕎麦を頼んだ。あと半ライスと。おにぎりがあれば最高やのにと思いながら半ライスを頼んだ。
絶品やった。めちゃくちゃあの蕎麦屋のカレー蕎麦に似てる!僕は1口目で常連になる決意を決めた。

その蕎麦屋はご年配の方だけで回している。厨房にじいさん2枚のばあさん1枚、ホールにおばちゃん1枚。2-1-1のフォーメーションだ。1トップを張っているホールのおばちゃんはメンバーの中では若いのでスタミナが豊富だ。

僕はホールのおばちゃんの虜になった。
おばちゃんはいつもお会計でボケる。
万札で払うと「お釣りはいいよね。」
「いやあかんあかんー!」を絶対やる。
ピッタリ出すと「あともう一声」とかめちゃくちゃ金回りでボケるのが好きや。

でも、次第に通うにつれお漬もんを持ってきてくれたり、頼んでもない半ライスを持ってきてくれたりと僕へのサービスがとまらなくなった。

すぐそこに住んでるということを前に言ったのを覚えてて、最近はいつも遠いところからわざわざどうもというボケをかましてくる。
最初はずっと「いや、近いねん!」と蕎麦屋のレジ前でツッコみ続けてたがイマイチはまってない感じが出てた。

で、ある日を境に
「そやねん、ここまで片道2時間かかるねん〜。帰ったころには腹へってんねん〜。」と返した。
おばちゃんはめちゃくちゃ笑顔になった。
ハマった!完全にこれや!
おばちゃんはツッコミ待ちやない!ノリ待ちや!

僕がノリ出してからおばちゃんは半ライスは絶対サービスで出してくれるし、漬けもんも塩分過多なるんちゃうかってくらい出してくれる。おまけに最近メニューに書いてある金額より安い。
なんか東京きて初めて常連的になるお店に出会った。
大阪の頃行ってた大国町のたこ焼き屋を思い出した。

ご満悦でカレー蕎麦を食べてると僕と同い年くらいの男の人が入って来た。
彼は席に着き「あついね。」とおばちゃんに言った。
おばちゃんは「いつもので良い?」と聞き、彼は
「うん、ありがと。」と返した。
瓶ビールとアテが出てきた。
彼は無言でビールを呑み、アテをつまみ店内のテレビを見ていた。
しばらくすると、ざる蕎麦が出てきた。
当たり前の動作、息をするように蕎麦をすすっていた。

僕は嫉妬した。
その当たり前のそれに嫉妬した。
しっくりきていたのだ。彼とおばちゃんの間にはぎこちなさが一切なく、お互い力の抜けた状態で当たり前のことのように事が進んでいく様。
僕とおばちゃんの関係は付き合いたてのカップル。
その2人は長年連れ添ったそれ。

今カノの元カレとの会話の自然さを知ってしまったかのような感じ。
今カレでも元カレでもないが、例えるならそんな感じ。

その日もお会計は安かった。
張りぼての優しさのように感じて喜べなかった。

僕はおばちゃんに虜になっている。
カレー蕎麦のあのベトンっとした感じ。


色んな町で色んなことがあるな〜。
色んなところに住んでみたいなと思う。

長っ!ほんで文あっち行ったりこっち行ったり。
まぁえぇわ。ほな。


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