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続・脳科学の未来(11)コネクトミクスの工夫

今回から内容を「基礎編」と「発展編」に分けることにしました。
今回は「基礎編」です。発展編では、新しい論文を紹介していきます。

電顕では、あるひとつのニューロンの形をたどっていくという形でしか解析できません。ところが、例えばニューロンやそこから伸びる軸索や樹状突起の様子を画像上で、このニューロンのものだと同定できれば、作業はより簡単になります。

ハーバード大学の研究者らが開発したBRAINBOW(ブレインボー)は、そんなアイデアから生まれたコネクトミクスの方法論です。

http://www.cellimagelibrary.org/images/42753

この方法では、GFPなど異なった色の蛍光タンパク質を、近接したニューロンでランダムに発現させ、異なる色を持つ細胞突起をたどっていくことで、それぞれのニューロンが持つ神経回路を虹のような多彩な色で色分けすることで可視化できます。個々のニューロンの塗り分け技術ということになります。ランダムに違った色の蛍光タンパク質を発現させるには、ランダムに組み換えることができるCre-loxPなどの遺伝子組み換えシステムを利用しています。

https://en.wikipedia.org/wiki/Brainbow

これは、トランスジェニックマウスだけでなく、ウイルスでも使えるので、マウス以外の哺乳動物でも利用可能ではあります。ただ、現状では、この方法は、シナプスまで明確に同定できる電顕の解像度に及ばないなど限界があります。解決策として、PALM、STORMのような超高解像度顕微鏡システムを使って、高解像度で調べるような技術も利用できます。いずれにしても、このような方法は、マクロとミクロのコネクトームの中間、つまりメソスケールのコネクトーム解明の方法論として有用になります。

(1週間に1度程度のペースで更新しています)


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