夕焼け   2021/7/11

見慣れたものはもう見えない

たとえばこのテーブルの上
何だろうこれは
百枚くらいの紙の束

本か

思った瞬間もう見えない

あるいは天井に張りついた
何だろうこれは
薄くて丸い光るもの

照明か

それきりもう見えない

もちろん見えてはいるのだけれど
本当に見えないわけではないのだけれど
視界からは早抜け落ちている

すべてそう

椅子か
時計か
テレビか

もう見えない
ただの言葉になりさがる

いつか君の顔も
見えなくなる日が来るのだろうか

俺の目よ
しっかりと見ろ

ありのままを
あるがままに

言葉にするのは
その後でいい

でもだめだ

脳内は
言霊たちの今日も乱舞だ

たまりかねて外に出る

空 が赤い
雲 が染まる
月 が金に光り始めた
鳥 がねぐらへ帰りゆく

嗚呼
夕焼けはどこへ行った

子供の頃見た
あの燃えるような

近頃、夕焼けを見ない

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