千年後のキミへ 2024/5/30
うちにペンギンがいます
亜熱帯の部屋に しかも三羽も
その名も
シャンプー
コンディショナー
ボディソープ
くちばしの向きをそろえて
いや そうでもないですね
自由な向きで立っています
くちばしからは普段は液体
でもときどき空砲が出ます
すると私も空砲を出す
ああ また〝儀式〟の日が来たか
ため息という名の空砲を
よかったら想像してみてください
夜浴室でいい歳をした男がひとり
裸でシャンプーを詰め替える図を
こんなわびしさ あるでしょうか
でもいま気がつきました
ひょっとしたらこの儀式
百年後 いや千年後にも
続くものではあるまいか
千年後だってさすがにそこまでは
自動化されていないでしょうから
ペンギンの頭を外しつつ
(このペンギン 頭がとれるんです)
いわく「千年後のキミへ」
千年後
いったいそれはどんな世界?
AI ロボット 宇宙開発
それこそ今とはもう別世界?
悲しいとか わびしいとか
そんな言葉 まだあるかな
でもキミもたまにするでしょう
浴室で詰め替えというこの儀式
そしてキミは知るでしょう
わびしいというこの気持ち
今のボクとおんなじ気持ち
何だか少しホッとしました
キミとつながった気がして
やがて儀式は無事終了
空のボトルは満タンに
千年前のボクもまた満ち足りて
ペンギンの頭をまたつけました
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