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私はヒトではない。           私はコートハンガー。

私はヒトである。

しかし、彼女というものができたことがない。

だから、今一番したいことは彼女と楽しいデートをすることである。

だが、そう簡単に彼女はできない。

早く生きた実感がほしい。

そうはいっても、私のような人間ではだめか。

自信は失われてゆく。

今日、エキナカの商業施設をふらついた。
私は、化粧品からPC関連商品まで取り扱う「スリーコインズ」の幅広い品揃えに舌を巻いていた。以前、「60cm×30cm」程の大きいマウスパッドを見て一目ぼれしたが、「やはり、おもしろい店だ。また見に来よう。」と心を新たにした。

その帰り際。

別の雑貨店で、彼女の荷物をそっと持とうとする彼氏の姿を見た。
私は、瞬時に「エウレカ!」と心の中で叫んだ。

彼氏のやさしさに感心し、そこから発想の転換に至ったからである。
その転換とは・・・
「私はヒトではない。私は、コートハンガーである。」
である。
これまでの私は、自分のことを人間と認識し、それゆえに「心の充足」が出来ていないことに悩んできた。
しかし、そうではない。
私は、コートハンガーなのである。
コートハンガーなのだから、荷物を持つことが出来れば十分で、それ以上自分に望むことはない。よくやってる。悩むことなんてない。

そんな我が身を見てみれば、なんと、神様というのは良心からか、私におしゃべり機能と、心という複雑な機能まで与えている。
これは、コートハンガーにしては、かなりの高スペック。
というか、オーバースペック。神様は、日本人エンジニアなの?
間違いなく、全コートハンガーに嫉妬されちゃうレベル。
そう、私は単なるコートハンガーではなく、高機能自律型コートハンガーだったのだ。

そんなコートハンガーな私が、私に言いたいのはこういう事だ。
いいか、基本はコートハンガーなんだから、自分に期待するな。(コートハンガーに失礼。)
プライドは日々削り取りなさい。
愛想笑いは、必要。
疲れたなら、休日に心から笑え。
心から笑うためには、お前には過ぎた機能である、おしゃべり機能と心機能を思いっきり使いなさい。
え?友達もいないのに、どうやってだと?
バッキャロウ!
自分で自分の限界を決めてどうする。

ありえないくらい嬉しいことが起きるのがこの世の中だ。
実際に今日だって、鳥の副産物が頭に落ちてきて、急遽温泉に入るという奇跡が起きたんだ。
そう信じて日々生きて行け。
出会いはスリーコインズ、デートはデニーズ、なんてこともあるかもな!
とにかくしゃべれ!話かけちゃいな!

というわけで、本日の夕方に「いい髪留めですね」って話しかけちゃったカフェの店員さん、こんな私を許してください。
できれば今度、「髪留め」のことをカタカナで何て言うのか、教えてください。




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