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あいまいさを受け入れるチカラ。『ネガティブ・ケイパビリティ』を読んで思うこと。

ネガティブ・ケイパビリティ
答えの出ない事態に耐える力
https://www.amazon.co.jp/dp/B0772WGXFS/

読み終わった後に、なんとも言えぬ余韻が残る。

作家であり精神科医である箒木蓬生さんが2017年に書いた本。医学的な話から、シェイクスピア、紫式部、戦争、共感の話が出てくるのだけど、作家さんだからなのか、文章が物語のようになめらかに表現されていて、読み終わった後に、なんとも言えぬ余韻が残る。その余韻こそが、ネガティブ・ケイパビリティなのかもしれないと思ってしまうほど。

あいまいさを受け入れるチカラ

タイトルを辞書を引くと、ネガティブは「消極的、否定的」。ケイパビリティは「才能や能力」とあり、副題には、「答えの出ない事態に耐える力」とあり、はじめにで、「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」と表現されている。

わたしにとって馴染みやすい言葉で言い換えるなら、ネガティブ・ケイパビリティは、「あいまいさを受け入れるチカラ」かな。これもまた、それぞれの解釈があって、それぞれの理解があって、それでいい(ネガティブ・ケイパビリティ)。なのだと思う。

好きだなと思ったフレーズはここ

身の上相談に必要なネガティブ・ケイパビリティ
こうしていると、身の上相談には、解決法を見つけようにも見つからない、手のつけどころのない悩みが多く含まれています。主治医の私としては、この宙ぶらりんの状態をそのまま保持し、間に合わせの解決で帳尻を合わせず、じっと耐え続けていくしかありません。耐えるとき、これこそがネガティブ・ケイパビリティだと、自分に言い聞かせます。すると耐える力が増すのです。

日薬と目薬
(日薬とは、何かをしているうちになんとかなる。時が解決する。目薬とは、あなたの苦しい姿をちゃんと見てるよ。見てくれている人がいるよ。という言葉がけ)

ネガティブ・ケイパビリティとトリートメントは臨床の両輪
(トリートメントとは、傷んだ髪を治すことはできないけど、ケアすることで、それ以上傷まないようにすることはできる。治療ではなくトリートメントする)

ラットの実験
(溺死する寸前までストレスと加えたラットと隣のゲージでそれを見ているラットの実験で、痛めつけられたラットにストレス性の胃潰瘍が生じていたのは無論だが、見ていたらっとにも同様な病変がみられた。これが動物における「共感」の原型)

共感の成熟に寄り添うネガティブ・ケイパビリティ
ヒトは生物として共感の土台には恵まれているものの、それを深く強いものにするためには、普段の教育と努力が必要になるのです。
この共感が成熟していく過程に、常に寄り添っている伴走者こそが、ネガティブ・ケイパビリティなのです。ネガティブ・ケイパビリティがないところに、共感は育たないと言い換えてもいいでしょう。

ネガティブ・ケイパビリティ
()内は解釈

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