雪さん20200302

芸術家は時に、見たことのない世界を創らなきゃいけない。~butoh of yukoyuki~

2020年3月2日に行われた雪 雄子(yukoyuki)の舞踏公演。

弘前で昭和初期に23歳で早逝した詩人・工藤正一の詩集『ある北方的な風景』の復刊に当たって開催された展覧会にて。舞台美術とヘッド・ドレスは造形作家・宮地令子の作。

雪 雄子の舞踏は、何年見続けていてもいつも驚かされる。なぜなら、観客にそれまでに見たことのない風景を彼女は創り、見せつけるから。

まるで、鳥が巣で目覚めるように。彼女が人であることをしばし忘れる。

こわいくらいに、美しいという言葉を私は覚える。雪 雄子は今年、70歳を迎える。

舞踏は、動く芸術なのだと思う。音楽と共に展開する物語は、時折、音のない世界をも生み出し、静かな息遣い、小さな笛の音、極小の世界から極大の世界(雪の言葉)まで、意識を宇宙へと膨らませる。

この世界を写し取ることは、並みの写真家にはできない。同じ風景なのに見たことのない世界、写真家の見ている美しさに私は驚く。写真家・片山康夫の見ている世界は、現実を超えて幽玄な世界に私たちを連れ去る。

展覧会初日の舞踏では、最終日とは全く違った衣装で世界を構成した雪 雄子。暗黒舞踏の創始者・土方巽に1970年に出会い、舞踏を踊り続け、今年で半世紀。彼女は踊り続けている。

撮影 片山康夫

雪 雄子 プロフィール

舞踏家。東京都目黒生まれ。1970年、暗黒舞踏の創始者土方巽に出合う。1972年、大駱駝艦創成に紅一点として参加。1975年、北方舞踏派(山田一平主宰)と共に山形県出羽三山麓へ移住。1984年、土方巽演出・振付の『鷹ざしき』で女鷹を舞う。1988~1992年、独舞踏『蝦夷面』(山田一平演出)をサンフランシスコなどで上演。北国の生命力を現出する舞踏家として高い評価を受ける。1993年秋、津軽へ移住。偶然のようにして出会う縄文をはじめ、津軽に息づく原初そのものの命との出会いを創作の原点としている。

近年では、2005年ウィーン・パリ・ワルシャワ公演、2007年サンクトペテルブル・モスクワ公演など、海外での活動も積極的に行っている。サンクトペテルブルグバレエホールでは神秘的でシャーマニックな舞い姿に1700人の観客が魅了された。少女から老婆まで、0歳から100歳までの身体感覚の中で舞う。

展覧会 詩集『ある北方的な風景』によせて

弘前市 鳴海要記念陶房館

2020年2月23日~3月2日(企画 松田耕一郎・松田左衛子)

本 松田耕一郎 絵画 境航 佐藤慎吾 写真 片山康夫 叶芳隆
ガラス 間山ふみこ オブジェ 宮地令子 舞踏 雪 雄子
朗読 鈴木恵子

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