祭りの日
母が朝からそわそわしていた。何故なら神輿が町内を練り歩くからだ。
各家々を神輿が巡って家内安全、無病息災を祈ってくれる。
遠くで祭りの太鼓が聞こえてくると母は何度も玄関までやってきた。
「あんた、もうそろそろかなー」
「お母さん、いつになるかは分からんよ、近くに来たら教えるけんね」
「ほんならよろしく」そんな会話をして、母はベッドで神輿を待っていた。
我が家のチャイムが鳴った。「神輿がきますよ」事前に知らせてくれたのだ。母はシルバーカーで慌てて玄関に出た。
今年も神輿を見ることが出来ると母は笑顔だった。
宮司さんが祝詞を上げてくれた。母は幸せそうだった。
生憎の雨だったが担き手には気合いが入っていた。
私はその後、鉢合わせを見物に出掛けた。
予定の場所には、子どもから大人まで祭り好きが集まっていた。
朝美地区の黒の神輿がやってきた。
古照地区の赤い神輿もやってきた。
いよいよ鉢合わせだ。
「もーてこい、もーてこい」と、闘志を駆り立てる掛け声が響く。
見ている私も熱くなる。
迫力のあるぶつかり合いに血が騒ぐような感覚になった。
見物して本当に良かったと思った。
鉢合わせの写真を母に見せて二人で盛り上がり、私たち親子の秋祭りは終わった。
母は神輿をイラストに描いていた。
母のイラストにも気合が入っていた。
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