木漆家 北村真梨子さん「二人展」のお知らせ

江戸時代後期に活躍した外科道具師 源安則(眞龍軒)の手によって造られた香割道具の修復をご依頼いただいたことを契機にそれらの「用の美」に魅せられて複製を志してから、あっと言う間に10年ほどの歳月を経てしまいました。
(「外科道具師」とは、本人が書き遺した肩書による表記です)

特殊な形状の香鑿(のみ)を真似できる職人さんが東日本には見つからず、探し回った末に兵庫県三木市に打刃物の名人(髙橋和巳氏)が居られることが判明し、訪問して何とか引き受けて戴きました。『こんな小さい鑿、作ったことないなぁ…』と考え込んでおられた姿が忘れられません。
(驚くべきことに、ご子息の典三さんは自家製のたたら製鉄装置を開発し、玉鋼を造り出しておられました。)

また鋸の名人も三木市に居られて、何度も試作を重ねていただき、試しに挽いてみてダメ出しを繰り返して、試行錯誤の末に、やっと納得のいく香鋸を造り上げて下さいました。
三木市の職人さん達の底力は、凄まじいものがありました。
訪ねるまでは存じ上げなかった「打刃物の町」三木市の存在なくしては、香割道具の複製は、叶わぬ夢に終わったことと思われます。

そして諸般の事情で難航しながらも徐々に進みつつある柄の制作は、現在東京芸術大学取手キャンパスで非常勤講師を務めておられる北村真梨子さんにお任せしています。
(最初にお会いした当時は、まだ院生でした。懐かしいです。)

取手キャンパス①

詳しい進捗状況の報告等は別の機会に改めることとして、今日は掲題の二人展を宣伝したいと思います。
近年に取り組んでいる画期的な技法「藍+漆」の面白さを追求する過程の作品群が展観されるとのこと、久しぶりの外出先候補の一つに、ぜひ京王百貨店新宿店6階を加えて下さいます様、謹んで案内申し上げます。

2人展(表)

2人展(裏)


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