「ヤバい」について
たとえば、「ヤバい」(「やばい」「ヤバイ」)…
という単語は、最近では
「あやしい」
「きびしい」
「びっくりした」
「おもしろい」
「たのしい」
「おいしい」
「かんどうした」
…ほか、さまざまなシチュエーションで使用できる、
「もっとも便利な形容詞」
…の一つとして重宝されています。
【使用例】
・歴史的円安! 1ドル=150円は何がヤバイのか?(※某経済系ネット記事タイトルより抜粋)
・表参道の◯◯のパンケーキ、なんぼでも食べ(ら)れてヤバすぎ〜♡
・今度の『ゴジラ(-1.0)』、かなりヤバめっす!
・大谷の今日のホームラン、ヤバくね!?
(大谷のスライダー、変化の角度ヤバすぎだろ!)
【類語】
・エグイ
・エモイ
・スゴイ
【反意語?】
・ショボイ
・ダサイ
・しょっぱい
しかし、その語源は江戸時代にまで遡り、当時はかなりネガティブでヤクザな言葉であった…と言います。(※十辺舎一九の『東海道中膝栗毛』でも「やばなこと」という表現が用いられています)
「やばい」の由来は諸説ありますが、そのなかでも
有力とされているのは、
・昔は牢屋を守る看守のことを「厄場(やば)」と呼んでおり、犯罪者のあいだで「あまりよろしくない
状況」を表現する際の隠語として使用されていた。
・昔は射的場のことを「矢場(やば)」と呼んで
おり、江戸時代の矢場は一部で悪事の巣窟ともなっていたため、「迂闊に近づいたら役人に目を付けられてしまう場所」というニュアンスで使用されていた。
…の二つで、いずれにせよ、現在のように
「汎用性の高い気軽な感嘆詞」
…的な扱いではなかったみたいです。
記事の見出しや収録映像のテロップなどで
あまり無用心に乱用しすぎると、
「きちんと本来の意味を調べてから
正しい使い方をするべき!」
…なんてクレームが入りやすい、じつはメディア側にとってもなかなかにデリケイトな言葉…との話ですが、ぼくもプライベートな会話においては、けっこうな頻度でつい口にしてしまいがちな
「ハイポテンシャル・ワード」
…であることは認めざるを得ません。ちなみに、昨日の早朝草野球でもたった2時間で、味方チームのナイスヒットや敵チームのナイスピッチング…ほかを目の当たりにし、ぼくは少なく見積もっても20回以上は
「ヤバっ!」
…を連発しておりました(笑)。
ただ、一文筆業者として執筆へと取り組むにあたっては、この「ヤバい」に頼りすぎることが、
表現力・語彙力の低下へと直結するのも間違いのない事実であります。
なので、もしこのコラムを読んでくださっているあなたも、そういった同様の危機感を一片でも抱いてしまったのなら──ぼくが女性ファッション誌の仕事を受けていたころに実践していた
「かわいい」
「美しい」
「キレイ」
「素敵(ステキ)」
…の4単語を禁句とする
…という訓練を「ヤバイ」に置き換え、LINEやSNSの文章を打ってみてはいかがでしょう?
コレですねぇ…いざ実際やってみると……
けっこう大変ですから(笑)!