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182.伝わらない事

人にはそれぞれ趣味趣向というものがある。

服あたりは分かりやすいのでは無いだろうか。モヒカン、鋲ジャンが好きな人からフォーマルなスタイルが好きな人まで色々ある。音楽もそれぞれだ。パンク、ロック、ポップス、ヒップホップ、レゲエなどなど。

それは感性で判断している事なので、大体の人はそこに共感が得られようと得られなかろうと好きなものは好きなのだと、その趣向に傾倒する。

笑う事もそうである。笑うツボがそれぞれある。お笑いだとこの系統が好きだとか、この芸人が好きだとか、好みのジャンルがあると思う。会話をしていてもあの人にはウケた話がこの人にはウケないといった事もある。

その中に《誰も笑っていないのに自分だけが1人で腹を抱えて笑っている瞬間》というジャンルがあると思う。

個人的にはどう考えても面白いのに、明らかに自分しか笑ってないあの瞬間。他の人に説明してもそれの何が面白いのかと懐疑の目を向けられるあの瞬間。音楽や服は《それぞれだよね》感があるのに何故か少し冷たい目で見られるあのジャンル。

まあこれも好みであるが、残念ながら《これ面白いけど、多分伝わらないから人に言うのはやめとこう》と、人に伝えるのをやめてしまった話が幾つもある。

私は今回、陽の目を見るはずの無かったその話を浄化すべく、人と共有出来なかった事例を少しだけ並べてみようと思う。そのほとんどが伝わりにくいものなので結局理解されず《何言ってんだこいつ?》となる可能性が高いが勇気を持って浄化をしてみる。

説明を求められても説明出来ないものばかりであるが、出来る限りの言葉で伝えてみようと思う。

【団体名】
昔から"暴力団"という言葉の響きに面白さを感じている。"暴力"の"団"なのである。パワーバイオレンスコレクティブである。集合体の総称に暴力という名称を使っているのも面白いし、それを"団"という括りにしているのも面白い。これ以上なく荒々しさをストレートに表現した名称。ニュースでアナウンサーが『暴力団が』と真面目な顔で話していると『真面目な顔して何を言ってるんだ』と込み上げてくるものがあるのだ。本来そこの頭は団長となるはずだが誰もそうは呼ばない。不思議な言葉である。
これを形容する言葉を他の言葉で作れたと思うが、メディアが何かしらの意図を持って、あえてこんなチョイスをしたとしか思えない。

【落書き】
私が住む街に廃鉄というか、鉄のスクラップ工場の様な所がある。そこの外壁にスプレーで悪意ある落書きがされていたのだが、その中にめちゃくちゃ下手な字で"鉄"と書かれた落書きがあった。これがどうにもツボなのだ。勿論うまくは説明出来ない。だが面白い。なんというか、悪口にもなっていないとも思えるが、最上級の悪口にも思える。メガネ屋に"メガネ"と落書きされている様なそんな感覚である。伝わらないと思うが、結構お気に入りだった。残念ながら消されてしまったが。

【あだ名】
小学生の頃、サッカー部に入っていたのだが、その時のコーチのあだ名。そのコーチは動きが妙にカクカクしてぎこちない動きだったのだが、そこから着想を得て私の友人が付けた名前が《ブリキ》だった。単純に言葉の響きが面白いのだが、それよりもぎこちない動きのものを形容するのに用いた言葉がブリキというのが凄く良い。普通の小学生だったらロボとかそんな言葉を選びがちだろう。その当時は何とも思っていなかったが、大人になって思い返した時にジワジワ面白さを感じると同時に、なんてセンスのある言葉選びなのだろうと感心すらしている。

そして大トリ

【スクールウォーズ】
近年で言えばこれはダントツの1位である。
ある日の夜中、酒を飲みながらふと思ったのだ。"そういえばスクールウォーズ"って見た事無いな"と。なにせ私が生まれた頃のドラマ。見た事無いのも当たり前なのだが、酒の勢いで動画サービスにあがっていたスクールウォーズを見る事にした。そして淡々と眺めていたその1話目。

廃退した不良校のラグビー部の練習風景。先輩がマットを持って後輩のタックルを受け止めるシーン。後輩のタックルを受け止める寸前で先輩が『オラァ!』と言いながら闘牛士の様に後輩をかわす。勢い余った後輩が地面に転ぶ。そして先輩が『次ぃ!』と言ってまた同じ事を繰り返すこのシーン。

いやもう、めちゃくちゃ笑った。久々に涙を流すほど笑った。いまだに何故こんなに面白いのか全く分からない。後輩いびりなんだろうが、もちろんそれが面白いというわけでは無い。全く練習になってないし、受け止める気ゼロだし、かわす時の『オラァ!』という掛け声も意味分からない。総じて無意味で、無意味な事を全力でやっている事が面白いのだろうか。いや、今でもよく分からん。

1人で腹を抱えて笑っていた所に嫁さんが部屋に入ってきたので、『良い所に来た!これを見てくれ!』と見てもらったがほぼ無反応だった。だが誰とかと共有したくて仕方なくなり、ダメ元で幼馴染の男にプレゼンした所『これは名作だ!』というリアクションが返ってきた。見る人によって両極端な反応なのである。

という、伝わりにくい話を幾つか浄化させてもらった。これら1つでも伝わった方はいるだろうか。いたら喜ばしい限りである。

は?と思った方もいるかもしれない。それは素直に面目無い。

という事でこれにて浄化は完了。

ありがとうございました

おわり

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