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奇人コレクション 第3話

多重人格の男C

「そういえば、むかし、君の家に行ったよね。そして君に振られた。君のこと、大好きだったんだよ俺。そのあと数年して君は結婚した。赤ん坊抱いてたよね。あーよかったなーって、その時こころからそう思ったよ。」

「....あの、いろいろ端折られてますけど。。。省略しすぎなんですけど。(怒ると敬語)」

「え?なんで?すごく寒い日だったよね。電気ストーブがあって。。。」

「.....言っておきますけど、あなたが最後にわたしの家に来たのは、その日から5年後ですよ。」

「え?それって、君が結婚する前?」

「そう。結婚するちょっと前。電話してきて、急に今から行くって。」

「まったくおぼえてない。」

「知り合ったのが19歳。その電気ストーブの日は20歳。それから25歳まで、3か月おきぐらいに電話をかけてきたり、この店に来いって急に告げられたり、うちに来たり、クリスマスカードを送って来たり。。。」

「え、まったくおぼえてない。。。」

「腹立つわ。。。ほんと。わたし3度ほど、電話口で、私の人生をかきまわすのはもうやめて!とか怒鳴ったんですけど。」

「ごめん。まったく。。。そうだったのか。それは相当やばいなあ。いや、なんか君が電話口ですごく怒ってて、おかしいなあ、なんで修羅場みたいになってるんだろうと思ったんだ。。。どうやら、いまの奥さんによると、俺は多重人格者らしい。」

「ほうほう。それはそれは。何人いるの?」

「13人かな、いや14人。幼児からわがままな野郎、喧嘩っぱやいかなり危ないやつまで色々いるんだってさ。しょっちゅう記憶が飛ぶんだよ。ある朝、割れたビン持って血だらけで立ってたこともある。」

「へええ。じゃあ、わたしに時々コンタクトしてきたのも、その中の誰かなのかしらん。」

「7番目のやつだよ。」

「そこは即答?へえ。まあ、必要ないことは記憶から消去してるんじゃないんですか。」

「うちの長男がね、どうやら同じタイプらしいんだ。こないだ弟を叩いたんんだけど、こう言うんだよ。叩いたのは僕なのかもしれないけど、それは僕じゃない。僕は知らない。」

「あなたあんまり遺伝子残さない方がいいんじゃないんですか。。。」

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