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春分の京都旅行「京都市学校歴史博物館Ⅱ」給食とバンカラの思い出


前回は京都大神宮と京都市学校歴史博物館の入口手前までを紹介しました。

元は番組小学校と呼ばれる日本で最初の学区制小学校の一つで、1869年に開智小学校として開校、1992年惜しまれながら閉校となり、1998年に京都市の学校の歴史を学ぶ「京都市学校歴史博物館」として開館しました。

後篇では館内にある展示品に関連したお話をしていきます。館内の様子は公式サイトが詳しいのでそちらを御覧下さい。明治から昭和期までの小学校の雰囲気が感じられて建物そのものが博物館になっているので、皆様もぜひ立ち寄ってみて下さい。私のイチオシです。




はじめに


今回のテーマは「歴史教育」ということで社会問題の話が出てきます。一応多方面への配慮はしておりますがもし不快に感じたらごめんなさい。写真もいくつか載せましたのでそちらだけでも見ていただければ大変嬉しく思います。



台湾の学生たちとともに


京都市学校歴史博物館
(元開智小学校)
御幸町通の石塀

京都市内の観光施設では団体客とバッティングするのがだいたいのお決まりになっています。先日、立命館大学国際平和ミュージアムへ訪れたのですが、ロビーに私と受付以外誰一人いなかったのに館内に入ったらたくさんの集団がいて驚愕したことがありました。

混雑を嫌う私でありますが、団体客はさほど嫌いではありません。なぜなら彼らは迷惑にはならないからです。さり気なくガイドさんの解説を盗み聞くことができますし、統率がしっかり取れているので邪魔になることはありません。また、下調べせずとも彼らのリアクションから重要な展示を窺い知ることが出来ます。そして彼らには決められたスケジュールがあるので一定時間が過ぎれば別の場所へ向かいます。じっくり解説を読んでいたところ、彼らはいつの間にか消えていました。

施設管理者曰く、台湾から来た学生たちとのことでした。推測ですが日本統治時代の台湾と京都市番組小学校の教育史を彼らは比較していたのかもしれません。一階の常設展示を全部見終えて出口へ向かおうとしたところ、ミニ黒板を発見しました。誰でも自由に書き込めるローカル線の「駅ノート」をイメージすると分かりやすいでしょうか。何が書いてあるのかなと覗き見してビックリ。とても日本人が書いたとは思えない内容の五文字が書かれていました。

『毛沢東万歳』

オープンしてすぐの時間帯なのでさっきの人たちの可能性大ですが真相は闇の中。しかしこんな事を書くのは中華圏の人物で間違いありません。それにしても毛沢東ですか。日本で例えるなら一体誰になるのかなぁ。田中角栄とか。私はこれをみて二つの意味を考えました。称賛と皮肉です。まぁ前者ではないでしょうね。いくら中国共産党員の関係者であっても、今の時代に毛沢東を崇拝している人はいないはずです。今の中国経済は資本主義そのもの。政治は権威主義に乗っ取られて共産主義は完全に形骸化しました。学校で毛沢東の理念を押しつけられて海外でささやかな鬱憤を晴らした。そんなところでしょうかね。

意外な場所で意外な異文化交流となった旅の1ページです。



学校給食イメージの乖離


政府広報オンラインが平成・令和の給食メニューをSNSに投稿したところ、こんな豪華じゃないと今年四月に炎上したことがありました。私はちょうどその数週間前に明治時代から現代までの給食の変遷を見ています。個人使用の撮影は許可されていましたのでその時に撮った写真と見比べてみました。うーん、政府広報と農林水産省は給食イメージをかなり盛りましたね。ネットの声が正しかったです。

農林水産省に写真を提供したのは日本スポーツ振興センター。前身は1955年に設立した日本学校給食会です。天下り組織の一つとされ運営費の一部は税金が使われています。所管は文部科学省とこども家庭庁です。

京都市学校歴史博物館では納得のいく給食サンプルが展示されていましたが、日本スポーツ振興センターの給食写真は専門家ではない私がみてもツッコミどころ満載。私の小学校時代の給食は銀色のアルマイト食器。もちろんおじいちゃん・おばあちゃん世代ではありません。なぜ両者の給食イメージが大きく乖離したのでしょうか。

「見栄」これが一番の原因でしょうね。博物館は真実に近いモノを展示する責務があります。多少外の空気に流されることがありますが虚勢を張ることはしません。博物館の価値が一気に消えてしまうからです。一方、官公庁は体裁と面子をとても気にします。彼らの願望を形にした結果があの現実離れした給食イメージとなったのでしょう。


そもそも給食イメージを国の機関が"ひとまとめ"にしたのが大間違い。私の地域は小学校ごとに給食を作る設備がありました。供給されるメニューは市町村単位で大きく異なります。日本の給食イメージを単一にするのは絶対に不可能なんです。

株式会社ゼンリンさんが『みんなの声で作った全国牛乳マップ』を公開しています。北海道だけでも十種ほどありましたよ。炎上したページには人気メニューとして「ソフト麺」が挙げられていますがそれがローカルフードであることは意外に知られていません。少なくとも大阪の給食にソフト麺が提供されたことは一度としてありませんでした。(中学給食実施もつい最近のことです。)

プロパガンダの意図はさすがにないようですが、結果として官公庁によって給食の歴史が大きく歪められてしまいました。これは大変危険なことです。官僚たちは選挙で選ばれた人ではないので責任を取ることは絶対にしません。本来このような間違った情報を正すのは国民の声ではなく、国会議員と担当大臣のおしごとなんですけどね。

農林水産省は依然として誇張した給食イメージを掲載しています。体裁を気にする彼らに何を言っても届きません。我々としては歴史の証人となる博物館をもっと大切にしていきたいです。



旧制高等学校記念館と比較して


校舎からの眺望

初めて長野県へ旅行したときに今でも強く印象に残っている場所があります。松本市にある旧制高等学校記念館です。その時に学んだ『バンカラ』があまりにかっこよくて彼らの気風に強い憧れを抱きました。京大出身者の多い任天堂社員もその影響を大きく受けたのでしょう。スプラトゥーン3というゲームにバンカラ街が出てきます。分かる人にはわかるゲーム会社の遊び心というやつですね。

あがたの森公園で食べたローソン「赤ワイン仕込みの焼き肉弁当」美味しかったなぁ。旅行のときに食べたものって強く記憶に残るそうですよ。ホンマでっかTVで言ってました。なので旅行の食事は多少高くても思い切って支払うようにしています。

《余談》

その時の衝撃を京都市学校歴史博物館に期待したのですが、まぁ日本初の学区制とはいえ小学教育ですからね。我々が通っていた小学校と大差なく、違いは絢爛豪華な設備くらいでした。おそらくプロトタイプの番組小学校を参考にして全国各地に量産型の小学校を建設していったのでしょうね。



熱意と情熱の番組小学校


京都市学校歴史博物館
全景と校庭

京都国際マンガミュージアムでも感じたことなのですが、約150年前とは思えないくらいしっかりした作りで、50年そこらで老朽化が目立つ我らの小学校とは段違いの立派さでした。

オリンピック開催費三兆円が都知事選2024の争点にならないほど東京には富が集中していますが、遷都直後とはいえ当時の京都も元気そのものでした。その中で作られた小学校ですから貴賓室は大臣クラスも対応できる豪華さで、石造りの階段手すりはそれはもう何度でも触りたくなる心地よさ。

京都市民の熱意と情熱は祇園祭へと受け継がれましたが、明治の雰囲気を直接手で触れる事ができる貴重な場所となっています。前回は京都国際マンガミュージアムを、今回は京都市学校歴史博物館を見学しました。次に行くべきは元明倫小学校の京都芸術センターですね。時間があれば立ち寄りたかったのですが制限があったので今回は断念しました。京都市内の学校レトロ建築を巡るのは本当楽しいです。



施設優待のご報告


そうそう忘れてました。

入館料は通常200円。京都市の公共施設なのでコスパ抜群です。訪問当時は企画展が開催されていたので400円となっていましたが、京都検定3級合格証を持参していたので無料で入館することが出来ました。

もちろん通常の料金でもその価値以上の見応えがあります。ちなみに入館料は変動することがありますので公式サイトをご確認下さい。



次回予告


京都市学校歴史博物館の紹介は以上となります。ご精読ありがとうございました。次回、本願寺を遥かにしのぐ勢力だった浄土真宗のとあるお寺へお参りします。こちらもご期待下さい。



今回の観光スポット


追記

『私のイチオシ』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!

2024/07/15


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