老中とは

拙者『田沼殿と源内さん~ときどき徳川ファミリー~』という時代劇をグランドジャンプにて連載している山田しいたと申すもの。
この作品は18世紀の老中・田沼意次と浪人の平賀源内を軸に進めるコメディです。偶然にも明日、こちらが掲載されているグランドジャンプ最新号が発売です。みてね

さて、さらっと『老中』と書きましたが『かなりエラいだろう』ってことぐらいしか実はわかってないまま連載が始まりました。他にも歴史知識的なミスをいろいろやらかしてますがそれも含めてギャグ漫画時空ということで回避できるだろうと思っていましたが段々と苦しくなってきて調べました。

老中について簡単に調べると

『今でいう閣僚(なんとか大臣)』
『今でいう総理大臣』
『今でいう官房長官』
など色々出てきます。

前提としてだいたい老中は常時4-5人います。上に将軍がいます。
となると『閣僚(大臣)』がしっくりくるのですがどうも業務は分業しているわけではなく月ごとに持ち回りだったとか。
(※これは幕末までの話で、幕末からは分業し始めた)

全部の大臣の仕事をしているから『総理大臣』って筋はわかる。
けどなら将軍は…?となってしまった。
『官房長官』に関してはそれ自体をよくわかってないけど、霞が関の官僚の出世の終着点が『官房副長官』らしい。幕府官僚(お役人さん)のトップという意味ではぴったり。
『官房長官』は総理の補佐的な大臣という認識です。空母いぶきで読んだ

描き方悩むのでぼやあっと『大臣』と書いてたと思います。
ぼやあっとしたまま調べてみました。

江戸城本丸の物理的な構造と老中

年代によってニュアンスが変わるのですが、作中の年代江戸中期(8代吉宗~10代家治)で調べました。その印象ふくめた感想です。

・江戸城の物理的な構造は北から順に、大奥(+天守閣)/奥/表、という区画に分かれていて基本的に平屋[*1]
・今の制度に当てはめるのは無理があるので無理やりなのですが将軍を総理大臣として
 →大奥→? 性的なニュアンスより世継ぎのイメージ[*2]
 →奥 →首相官邸
 →表 →霞が関(幕末まで監督者を分けてないので庁舎も分かれない
 →※ →国会はない(徳川家の一族独裁なので必要ない)
・表の長官、老中 ≒霞が関的な事務方トップ官房副長官
・奥の長官、側用人≒総理を除いた官邸トップで官房長官
(※政治的な揶揄の意味はないです、あくまでシステム的に今の統治機構の用語を借りています)
(※今の統治機構の用語もにわりと適当ですすみません)

[*1]
5代綱吉(~1709)のころに、奥の内部、将軍の執務室隣で老中が刺殺される(1684)。将軍暗殺が起きたらたまったもんじゃないってんで、これを機に徐々に、表と奥の執務室が物理的に分かれて老中の執務室が奥から表に出る。

[*2]
性的なニュアンスというのは、ハプニングバーみたいなところかとちょっと思っていたんだけど、側室になれる人も決まっていたし伽がある晩は予め事前に連絡が要るとか。部屋の準備や、たしかに将軍の子だと確認する人員確保のためなど。
ただこれも世代による。11代家斉は側室が16人いて子供は55人いたらしい。11代になると作品の時代から外れてしまうと思うのでちゃんと調べてはいない。

奥(将軍+側用人)と表(老中)

江戸中期は表より奥の方が強そうなイメージです。おおよその統治機構の歴史的経緯

・初代家康~2代秀忠はなんかあわただしい感じ。四天王とかが側近やってた。
・3代家光のころ老中の事務方システムができた
・3代家光~4代家綱のころ老中とは別の将軍の補佐として保科正幸ががんばった
・5代綱吉~7代家継の時代に奥にて、将軍の近い立場で提案できる側用人という仕事ができた
・8代吉宗は将軍自ら執政するスタイル、老中と側用人の力を下げる
・9代家重~10代家治は、大岡忠光と田沼意次の側用人が強い
・11代家斉以降はちゃんと調べていないけど老中(松平定信・水野忠邦)中心になる気が。

おまけ:大奥について

正直よくわからんかった。

大奥は昔から将軍(と医者?)と以外成人男性は特定区域以外入れない。
将軍の子供は大奥で育てられる。身分の高い奥女中の子供もいたのかな。
特定区域は広敷、男性役人が施錠された壁を隔てて詰めている。
  →奥の監督する、警護職(お庭番)
  →表の監督する、警護職(小姓組)と大奥の経理的な役人(留守居)

大奥の監督者(『御年寄』)と側用人が打合せするときは、御年寄が奥に来る。たまに老中も混じる。

で、大奥の権力が『奥』・『表』まで及んだというのがいま想像しづらい状態どす。『権力』の定義は、いまのところ人事権と裁量権と考えています。(他にもあるかもしれないけど山田の想像力の範囲)

将軍の跡継ぎもシステム的に長男優位で他は養子に出されがちなのでレース要素も薄い印象がある。

『奥』・『表』で、人事/裁量 がぶつかるのは多少想像がつきます。『奥』・『表』が大奥とぶつかるところが小さい気がします。
留守居とお庭番の人事権とかもそんな影響力はない気がする。

はてさて。
おわり。

お菓子(糖質補給)、書籍(情報収集)、ホッカイロ(血流改善)、など制作する際によく購入するものに使わせていただくと思います。