特化するという戦略
会社員時代に米系航空会社をよく利用していました。
米国駐在中のみならず、東京本社勤務中も主にU航空に搭乗していたのですが、同社から米国シカゴへの旅行に招待されたことがありました。
それは当時「日本に住む日本人」として最も頻繁なU航空利用者なので、そのお礼に彼らが協賛する米国PGAゴルフトーナメントの前日レセプション、いわゆるプロアマ競技会に招待するというものでした。
往復フライトから現地ホテル代等もすべてU社持ちのとのことで、勤務先にコンプライアンス上問題ないことを確認して、有給休暇を取り招待を受けました。
ちなみに米国居住者は当然のこと、日本に住む米国人の中には、私以上にU航空太平洋路線に搭乗している顧客はもちろんいました。
しかし「日本に住む日本人」というところがミソで、招待にあたっては先方よりリクエストがありました。
それはU航空の太平洋路線営業VPとの会食をセットするので、どうすれば日系航空会社に対抗してU航空がより多くの日本人ビジネス客を取り込むことができると思うか、忌憚のない意見交換をして欲しいとの要請です。
実際、私の周りでも、ビジネスクラス以上を利用して米国出張が多い日本人はそのほとんどがJ派かA派であり、好んで米系航空会社を利用する人はほとんどいませんでした。
「日本食の導入、日本語が話せる客室乗務員の配置など我々はできることをやっている。それでも日本人ビジネス客が増えないのはなぜか?」
会食の半ばにU航空営業VPが切り出してきましたので、私は「忌憚なく」以下の意見を述べました。
「何をやっても無駄だと思うので、日本人を取り込むよりも、そのエネルギーを一人でも多くの米国人顧客を取りこぼさないことに使うべきと思う」
困惑の表情をうかべる相手に続けました。
「実もふたもない話をすれば、ほとんどの日本人社用客は、若く可愛く素直なフライトアテンダントから、機内でも会社の上司の如く取り扱われることを至福とする一方で、米系フライトアテンダントの基本は乗客との対等な関係。このギャップを埋めることはできないだろう」
「機内食にしても、日系の長距離路線では2食めは各乗客が好きな時間に、やれラーメン作ってもって来いとかと言うのが常態化。U社はそこで勝負するよりも、U社らしくアメリカ式のサービスを更に充実させて、米国人利用客が “機内は既に自宅” と感じるような工夫にこだわり続けるべきだと思う」
U社ビジネスファーストクラス機内サービスが食後のデザートタイムでした。
これはカートで運ばれてくるバニラアイスにお客1人1人が、ホットチョコレートやファッジ(キャラメル)、ホイップクリーム、ナッツ、チェリーなどの好きなトッピングを選んで、フライトアテンダントに自分好みのアイスクリームサンデーを作ってもらうというものです。
先ほどまで慣れない手つきで日本食注文者にインスタント味噌汁を不器用に溶かしていた米人フライトアテンダントの、アイスクリームトッピングへの手慣れた動作はとても同じ人間の技とは思えません。
一方、デザート時には日本人ビジネス客はすでに酔いつぶれて寝ているケースが多いのですが、そのような情景を見かけるたびに「これが彼女たちの最大の見せ場(big scene)なんだから相手をしてあげてよ」と内心苦笑していました。
さて、当FP事務所はHPにて「40歳代以上の退職後を意識し始めた会社(役)員、個人事業主・小規模企業オーナー並びに既に退職された方」が対象であると明確に定義付けています。
これは、FP相談には「子育て世代」「家計簿管理」のような需要分野が存在する一方で、それに応える優秀な主婦層FPが存在する中、私のような中高年男性FPが割って入ろうとすることは時間の無駄と自覚をしているからです。
「餅は餅屋」という諺は「物事はそれぞれの専門家に任せるのが良い」という意味ですが、これは正に最適化戦略の基本動作でありましょう。
追記:
私はゴルフが下手です。
それでも招待を受けたのは、プロを含めて4人1組での「ベストボール」競技であると聞いていたからです。
それは4人が同じ場所からそれぞれのボールを順番に打ち、一番良いものを採用して、そこからまた4人が打ち、チーム対抗でベストスコアを競争するものとの理解でした。
これならいくら私が下手でも、自分が打ったボールが採用されないだけで、「チーム」にかける迷惑は限定的です。
しかし、レセプション前日に知ったプロアマでのベストボールとは、全員が自分のボールを最後まで打ち続け、ホール毎にチーム内のベストスコアをHC勘案の上で採用するというものでした。
6000ヤード前後のコースでも「百獣(110)の王」である私にとって、本戦に備えてラフは深くグリーンは氷上のように滑る7000ヤード超えの18ホールは人生最大の試練の一つとなりました。
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