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外貨建て一時払終身保険は仕組債並みに悪なのか

少し古い話ですが、昨年6月末に金融庁は仕組債と外貨建て一時払終身保険の販売について喚起を促す文書を公表しました。

リスク性金融商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について(2022事務年度):金融庁 (fsa.go.jp)

仕組債に関しては私も以下の記事で「食べてはいけない毒饅頭」と警笛を鳴らしたことがあります。

「選挙で買収される有権者と仕組債を購入する投資家」https://note.com/yamada_nick/n/n627b610d9b9d?sub_rt=share_pw

一方で、外貨建て一時払終身保険が仕組債と同等に危険な金融商品と取り扱われたことには違和感を覚えました。

もちろん本保険を販売する際には為替リスクや中途解約による元本割れ可能性等があることを説明する必要があります。

しかしその「リスク」を正しく理解できるのであれば、外貨建て一時払終身保険は現状まだ運用利回りが高い「旬な商品」であると考えています。

その理由を7つほど述べます。

① 外貨建て資産組み入れの手段

「保有金融資産のすべてが円建てであることの方がリスク」と考えるべき時代です。米ドルなどの先進国通貨建て金融資産を組み入れることは「守り」の意味でも必要であり、外貨建て一時払終身保険はその一手段となります。

② 現状高い積立利率

2023年以降の欧米各国の政策金利引き上げにより、外貨建て一時払終身保険の利率も上昇し、例えば米ドル建ての場合、2024年3月24日現在4%超です。無論これがいつまで続くかは不明です。

③ 10年間の当初利率固定

高利率期待であれば外貨定期預金で十分に見えますが、預金では利率固定期間が最長3年程度なのに対して外貨建て一時払終身保険の場合、契約当初の利率が10年程度継続する商品が多くあります。

④ 外貨建て債券購入より低い敷居

一時払終身保険は債券で運用されている場合が多いので、直接債券投資をする方が効率が良いというのは事実です。しかし一時払い終身保険は証券会社経由の債券投資よりも敷居が低く買いやすい特性があります。

⑤ 生命保険保護機構対象

債券を含めた証券投資は日本投資者保護基金の対象ですが投資家一人当たり1千万円までであり、外貨定期預金はペイオフ対象ですらありません。一方、一時払い終身保険は生命保険保護機構の対象となり保険会社責任準備金の90%まで保護の対象です。

⑥ 相続対策

一時払い終身保険の本質的な意味合いは相続対策です。遺産分割対策では民法上その保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産となり、代償分割の原資にもなります。また法定相続人x5百万円までは相続税法上「みなし相続財産」としても非課税です。

⑦ 定期支払金という不労所得

外貨建て一時払終身保険の一部商品には「定期支払金」として、毎年の増加分を保険契約者本人が存命中に受け取れる商品設計のものがあります。相続税対策としては元本以上に成長させる必要がないので、定期支払金化で不労所得を確定させることが可能です。

外貨建て一時払終身保険の注意点も併せて記載しておきます。

先ずは金融庁が指摘した「為替リスク」ですが、上述のとおり金融資産ポートフォリオの一部を外貨建てにすること自体は正しいと考えます。ただし相続設計上利用するのであれば、円高気味に為替を想定しないと非課税枠全額を享受できない可能性が出てきます。

また最低10年は「中途解約元本割れリスク」が発生する商品設計が多いので、あくまで余裕資金で購入することが重要です。

長期運用となりますので生命保険保護機構対象商品とはいえ、信用度の高い保険会社を選択することもポイントになりましょう。

テクニカルな観点でいえば「積立利率」と「予定利率」の違いには注意が必要です。詳細解説は省きますが予定利率表示の商品の場合、実際の利回りは積立利率よりも低くなります。

また、毎年の生存給付金は源泉分離課税対象の「利子所得」でもなく「配当所得」でもなく「雑所得」として総合課税の対象となります。

追記:

外貨建て一時払終身保険がいつの時代も魅力的と言うつもりはありません。正しくその商品設計を理解するのであればまだ「旬」であり、一方的に敵視されるものでもないとの主張です。

金融庁発表への違和感は上述のとおりですが、それでも外貨建て一時払終身保険は売れ筋ということですので影響は大きくはなかったのでしょう。

最後に私自身が外貨建て一時払終身保険の販売や紹介手数料等の業務に一切かかわっていないことを誓約致します。本稿はあくまで「或る独立FPの視点」の1つです。

一方私自身も分散投資の一環として昨年2社から合計15万米ドル分ほど、法定相続3人分に合わせて本商品を余裕資金を元に購入したことを申し添えます。現在の為替レートであれば年間100万円程度の不労所得を今後10年間確定させることができました。

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