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【薬剤師国家試験】食品添加物(衛生)

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

食品添加物は多くの食品に含まれ、私たちにとって非常に身近な存在でありながら、その役割や効果は、あまり知られていない。

「食品添加物=体に悪いもの」という誤った認識を持っている人も少なくない。
大切なのは、食品添加物について正しい知識を持つことである。それでは、食品添加物とはどのようなものだろうか。

そこで、今回は食品添加物について、まとめたいと思います。


1.食品添加物とは

食品添加物は、法律で次のように定義されている。

「食品の製造の過程において又は食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物をいう」(⾷品衛⽣法 第4条第2項)

つまり、平たく言えば、以下のようになる。

保存性を高めたり、品質の改良や風味、外観の向上のために食品に添加されるもの

また、食品添加物は、以下の4つに分類される。

  • 指定添加物…安全性と有効性を確認し、厚生労働大臣が指定したもの

  • 既存添加物…長年使用された実績があるものとして使用が認められているもの

  • 天然香料…動物や植物から得られるもので、香りをつける目的で使用されるもの

  • 一般飲食物添加物…通常は食品として食べられるものが、食品添加物として使用されるもの

2.食品添加物の安全性

平成15年(2003年)に⾷品安全基本法が制定され、⾷品安全⾏政に「リスク分析」の考え⽅が導⼊された。リスク分析とは、「リスク評価」「リスク管理」、および「リスクコミュニケーション」の3つの要素からなり、食品添加物のリスクを科学的に評価するとともに、人の健康に悪影響を及ぼさない安全なレベルが保たれるよう管理する体制が整えられている。

また国際的には、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が協力してJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)を設立し、食品添加物の安全性を評価している。

① リスク評価

食品安全委員会が実施している。
どのくらい⾷べても安全か調べて、決める。

動物試験の結果から有害な影響が見られない最⼤投与量(無毒性量)を求め、そこからヒトが一生毎日食べ続けても健康への悪影響がないと考えられる一日当たりの摂取量(ADI)を設定する。ADIは、無毒性量の通常1/100である。

② リスク管理

厚生労働省、農林水産省および消費者庁などが行う。
食べても安全なようにルールを決めて、監視する。

日常の食事を通して摂取される食品添加物がリスク評価で定められた一日許容摂取量(ADI)を超えないように、どの食品にどの程度の食品添加物を使って良いか、使用基準を設定する。また、定期的に摂取量調査を行い、実際の摂取量がADIを超えていないかを確認する。

③ リスクコミュニケーション

食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省および消費者庁などの⾏政機関、消費者、事業者など関係者全員で情報を共有、意⾒を交換し、納得できるように話し合う。

⾷品添加物の規制を新しく設定したり、改正したりする場合、リスク評価やリスク管理の過程は公開され、広く意⾒・情報の提出が呼びかけられるなど透明性が確保されている。また、消費者庁や⾷品安全委員会等は、全国各地で⾷品添加物等を題材にした勉強会や意⾒交換会を開催しているほか、動画、パンフレット、SNSなどさまざまな⼿段で情報を発信している。

3.食品添加物のメリット

  • 食品を長持ちさせ微生物の増殖を防止する

(例)保存料、酸化防止剤

  • 見た目や食感・風味がよくなる

(例)着色料、発色剤、甘味料

  • 栄養を強化できる

(例)栄養強化剤

  • 品質を保ち安定供給できる

4.食品添加物のデメリット

  • 既存添加物で検証不足な部分がある

食品添加物のなかには、科学的な検証が乏しい場合がある。特に、既存添加物は検証不足な部分があり、現在でも安全性の再評価と見直しが行われている。

  • 複数摂取による影響がわからない

個々の添加物の安全性は確保されているが、複数の食品添加物を摂取した場合の体への影響は分かっていない。現在の科学技術では、食品中に含まれるすべての成分との相互作用を検証できないためである。

食品添加物同士が影響しあって毒性が生じる可能性もあれば、食品添加物以外(タンパク質や脂質など)の成分と相互作用が起こる可能性も考えられる。

  • 糖分や脂質・塩分などを過剰摂取しやすい

食品添加物によっておいしさが増し食べやすくなることで、ついつい食べすぎて糖分や塩分の過剰摂取につながる場合がある。糖分や塩分の過剰摂取は健康を害するおそれがある。

5.わが国における食品添加物の事情

海外に比べて日本は食品添加物の使用量が多いと聞いたことはないだろうか。日本が食品添加物大国と呼ばれる背景を詳しく調べてみたが、詳細の記述がある資料が見当たらなかった。

実際のところ、国によって食品添加物の定義や対象食品の範囲、使用可能な量などが違うため、単純な比較はできないが、アメリカに比べると日本の方が少ないこと分かる。
しかし、日本では1品目として認められているものが、アメリカでは成分を細かくわけて登録していることもあるため、一概に多いとも言えない。

なお、食品添加物の品目だけで比較してみるとそれぞれ以下の通りである。
・日本…830品目
・コーデックス…392品目(香料を除く)
・アメリカ…1,612品目(香料を除く)
参考:添加物規制に関する国際比較|厚生労働省

日本における食品添加物の使用量が多いと言われる背景には、日本の技術力の高さ、日本人の味に対する主張、法律の違いなどが考えられる。

また、日本では安全性が認められていても、海外では人体に影響があるとされ、使用が禁止または制限されている食品添加物もある。

  • タール系色素

主にお菓子や清涼飲料水などに着色料として使われている添加物である。タール系色素の一種である赤色2号は「発がん性について安全性が確認できない」として、アメリカでは使用が禁止されている。しかし、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議によって行われた再評価により「発がん性は認められない」ことが分かっている。

  • 臭素酸カリウム

小麦粉処理剤とも呼ばれ、食パンの製造に使われている添加物である。発がん性によるリスクが指摘されているため、EU諸国や南米では使用が禁止されている。

  • クチナシ色素

和菓子やアイス、加工肉やケチャップなどの調味料に着色料として使用されている天然色素である。クチナシに対するアレルギー反応を引き起こす恐れや、過剰摂取による頭痛や吐き気などの症状を引き起こす恐れがあるため、アメリカやEU諸国では使用が禁止されている。

  • トランス脂肪酸

ショートニングやマーガリンを使用したパンや菓子に含まれ、WHOによって心筋梗塞や脳卒中、肥満などと関連することが明らかになっている。

さらに、認知症などのリスクが高まるとして、アメリカをはじめ台湾やカナダ、イギリス、スイスなどで禁止または使用制限がかかっている。

また、シンガポール・中国・韓国・台湾などでは、トランス脂肪酸濃度の表示を義務付けを行っている。

アメリカやEU諸国に比べて、和食が国民食として親しまれている日本では、トランス脂肪酸の摂取量が少ないことから、対応が後回しになっていることも使用制限などのない原因と言われている。食文化の違いはあれど食の欧米化が進む現代では、注意したい。

  • たんぱく加水分解物

インスタントラーメンや加工肉、鍋の素や醤油などに含まれている、たんぱく加水分解物は肉・魚・大豆・小麦などのたんぱく質を分解して得たアミノ酸を中心とした化学調味料である。

日本では規制のないが、アメリカやEU諸国で規制がかけられている。

加水分解には主に2つの方法があり、微生物を培養して作られた酵素で分解する方法と強い塩酸を使用した分解方法がある。強い塩酸を使用した分解方法では発がん性が懸念されている。

また、牛肉が原料の場合、アミノ酸を得るタイミングでたんぱく質から多糖類や脂肪などの成分も分解され、このタイミングで一緒に生成された化学物質に発がん性の危険性があると言われている。

6.最後に

食品添加物によって食品の品質は安定し、私たちの食生活は豊かになった。

食品添加物の使用基準や量は、さまざまな安全性試験に基づいて厳密に決められているため、その摂取に関してそこまで神経質になる必要はない。

とはいえ、一部食品添加物の安全性の検証不足や、複数摂取による影響など、まだよくわかっていないことがあるのも事実である。

食品添加物は試験を重ね安全性が十分に担保されている。また、魚の焦げや揚げ物や野菜には極微量に発がん物質を含み、水や食塩においても過剰摂取によって中毒死する症例が報告されている。すなわち、もし食品添加物の危険性を指摘するならば、それは食品添加物に限った話ではないし、その量が大きく影響している。安全性が100%に限りなく近い中で生活しているのである。

どうしても食品添加物の影響が気になる場合は、原材料表示をチェックして食品添加物の少ないものを選ぶのもよい。普段の行動を少し変えるだけでも食品添加物の摂取量は減らせるので、できることから試してください。

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