音楽家へのリスペクトを感じるSpotifyの新機能

●Spotifyがソングライターのページとプレイリストを公開

 素晴らしいニュースが飛び込んできました。
〜Spotifyは、ソングライターがこれまでに書いた曲や頻繁にコラボしているアーティストを紹介する「ソングライターページ」という新機能を公開した。このページには「Written By」(このアーティストが書いた)プレイリストも新たに登場し、リスナーはこのプレイリストを再生したりフォローしたり、Spotifyの検索でソングライターの作品を見つけたりすることができる。〜
 とのことです。

 経済的な側面ばかりで語られることが少ないのですが、Spotifyの最大の価値は、音楽体験を時代の変化に合わせてアップデートしたことと、そのサービス、機能に音楽と音楽家へのリスペクトがあることだと僕は思っています。創業者たちの想いが体現されていて、それが他のサービスとの一番の違いです。そのことがよく現ているニュースです。
 Spotifyには、サービスの根幹に音楽の創り手に対するリスペクトがあるのでしょう。
 
 配信が音楽体験の中心にになったことのマイナス面、アーティスト名以外の音楽家のクレジットが無くなったことはあるなと思い、僕も以前から感じていました。
 ソングライターだけでなく、レコーディングに参加したミュージシャンも含めた、クレジットの受容性について、2015年4月30日にblogでこんなことを書いてます。少し長いですが引用します。

〜〜〜さて、楽屋で聞いた話。「最近のレコード会社A&Rは、ミュージシャンクレジットを出すことを嫌がる」と聞いて、心の底からびっくりした。理由は「面倒くさいから」「ジャケットのデザイン的に見栄えが悪いから」だそうだ!!!!意味がわからないよ????
 一番、危機感を持ったのは、若いアレンジャーが「音楽業界はそういうものだ」と受けて入れてしまっているという話。全然「そういうもの」じゃないよ!!!!

 日本の音楽業界に課題もたくさんあるけれど、音楽が好きな人が多くて、音楽家をリスペクトするという考え方がベースにあるのは、素晴らしいところだと僕は思っている。今のレコード会社や事務所の上層部も音楽家へのリスペクトは強くお持ちの方ばかりだ。若手のA&Rが「面倒だから」ミュージシャンクレジットを嫌がっていると聞いたら、僕の100倍激怒する業界の重鎮方の顔が目に浮かぶ。

 音楽を売る側が、音楽家をリスペクトしなくなったら、音楽ビジネスは終わりだ。本当に死んでしまう。作曲家、編曲家、参加ミュージシャンなどをジャケット中面に載せるというのは、リスペクトとして最低限の当然の行為だ。音楽ファンの中には、このドラムは誰なんだろうという興味を持つような人もたくさんいる。音を聞いて「!」と思って、ジャケットを見て、「やっぱり**だ」とほくそ笑む、そんな音楽ファンを増やしていかなければいけないのに、「面倒だから載せない」とか言語道断だ。
(もし、そういう例があったら、本当に教えて下さい。日本のレコード会社は、そこまで腐っていないはずです。そのA&Rが勘違いをしているだけだと思います。考えを改めてもらいましょう。)

 コーライティングを推進している立場としては、作詞作曲者がたくさんいると著作権分配が面倒だという意見も懸念だ。「日本人ならユニット名にしてまとめてほしい」と乱暴なオーダーをするA&Rもいるそうだ。ユニット名にしたからって、分配の手間は変わらないので、論理的には成り立っていないし、そもそも作曲家として名前が載ることが、どれだけ彼らの励みになるのかわかっているのだろうか?プロはどんな環境でもきちんと仕事をするのが当然だけれど、一方でクリエイティブな作業にはモチベーションは大切だ。

 音楽出版社も作曲家が何人もいると分配作業が大変だなと忌避したりはしないで欲しい。国際基準で見ても、日本の音楽出版社の取り分は決して少なくない。代表出版社の矜持(プライド)として、「もちろんしっかり分配しますよ。どんどん良い曲を作ってください。」と言って欲しい。そういう意味でも、コーライティングした時の著作権料は「参加人数で等分」にするといううルールは重要だ。それ以外の変則的な分配率を出版社に押し付けるのは、作家側がやり過ぎだと思う。

 工業製品が国際競争力を失いつつある日本で、日本人のクリエイティブ力というのは、貴重な資源のはずだ。コンテンツ輸出に可能性があるのは、日本のクリエイターが高いレベルにあることが前提だ。クリエイターをリスペクトして育てていくことは国策に合致している。大げさに言えば、ジャケットのミュージシャン・クレジットを面倒がるレコード会社のA&Rは、政府の方針にも反しているし、日本の国力を下げている。クリエイターに高いプロ意識を求めて、切磋琢磨していかなければならない職業だと自覚して欲しい。

 そこで気になるのは、音楽配信だとクレジットが無いこと。作詞作曲編曲、参加ミュージシャン、レコーディングエンジニア、マスタリングエンジニアなどが誰でも簡単に見れるようなサイトが必要になっているのかもしれない。CDDBもそこまではフォローしていないから、WIKIPEDIA的なやり方でJポップだけでも作ることはできないだろうか?誰かやってくないかな?もちろん僕も協力します!

 テクノロジーの進化で変わらなければならいこともたくさんあるけれど、パソコンがあれば誰でも簡単に音楽が作れる時代に、真のプロの高いスキルは、むしろ重要性を増している。クリエイティブが日本人の価値だと改めて声高に言っておきたい。

〜〜〜以上、過去のブログ掲載ですが、ここで5年前に呼びかけたことは、結局、Spotifyが解決策を出しているということですね。とてもありがたいけれど、日本人音楽プロデューサー&エンターテックエバンジェリストとしては、世界の音楽業界も日本も、何も手を打ててこなかったことは、不甲斐ないなとも思いました。たかがクレジット、されどクレジット。神は細部に宿るとも言いますね。

 ちなみに、僕は基本的にストリーミングサービスに対してネガティブなことは原則的に口外しないようにしてきています。何故なら、日本の音楽業界にとってストリーミングの普及は死活的に大切だからです。そして「日本には合わない」みたいな根拠のない主張をする人が多かったからです。FaceBookが広まり始めたころ「日本に実名制はそぐわない、だからmixiが人気なんだ」と主張する人がいたのと似てています。デジタル化という大きな環境の影響でおきる必然的な変化に対して、自分の願望と外資系サービスへの違和感をまぜこぜにして、したり顔で語るのは迷惑千万です。何度もお話しているように、日本のレコード会社の経営陣はデジタル化に陰に日向に抵抗し、実際にストリーミングサービスの普及は、世界で最も遅れています。その間に、スマホの違法アプリの普及を野放しにて、最悪な対応だったのですが、1年半くらい前から、風向きは変わり、音楽業界全体でデジタル化を向くようになっています。
 数年以内に、月額課金型のストリーミングサービスが広まるかどうかが日本の音楽業界の命運を決めることでしょう。日本で有料会員が1000万人になるまでは、Spotify以外のイケテナイサービスについても、ネガティブな言説は控えて、応援のエールを送り続けるつもりです。

※podcastわかりやすく、もうちょとだけ踏み込んで話します。聴いてみてください!
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モチベーションあがります(^_-)