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職業作曲家の心得[2:人生編]

1) 志を高く持つ、幸運を信じる、タナボタを求めない

 音楽家として成功するために、最も大切なのは、運が良いことです。 どうすれば幸運になれるか、その方法については、占い師の本にお任せしますが、少なくとも、自分の幸運を信じることは、絶対に必要です。
 幸運は、高い志を持った人に訪れます。志の持ち方は人それぞれですが、せっかく音楽でプロになると決めたのですから、「俺の曲で地球を平和にする」「Billboardで全米1位を獲る」「人気作曲家になって世界一の美女と結婚する」等々、何でも良いので高い目標を持ちたいものです。
 気を付けたいのは、“棚からぼた餅”を期待することです。若い音楽家志望者に時々見かけるのは、「自分が知らない裏口や近道がある」と思っている人です。フリーメーソンが世界を支配している的な陰謀史観に通ずる感覚ですね(笑)。少なくとも、プロの音楽家で成功するために、 裏口や近道はありません。業界の偉い人や、大金持ちのバックアップがあっても、作品が良くなければ、相手にされません。

2) 縁を大事にする、チャンスを逃さない、恩義を忘れない

 知っておいてほしいのですが、ポップスの分野において、一番難しい のは、素晴らしい作品を作ることでは無く、その作品が多くの人に知られる“場”を得ることです。参加の機会が手に入ったら、チャンスを逃してはいけません。「幸運の女神に後ろ髪は無い」と言います。チャンスをかぎ分ける嗅覚と、全力をぶつける勝負強さを持ってください。
 私も何度か大きな“場”を作ってきました。それを活かして、ステッ プアップした人もいます。そこで自分を過信して、勘違いした人は、終わります。ユーザーには歌った人や作った人しか目に入りませんが、実際はリスクを背負って、その人達の活躍の“場”を作った人達が必ずいるのです。業界内の人たちは、そのことをよく知っていますので、音楽家の“勘違い”には敏感です。「最初に井戸を掘った人のことを忘れない」というのは中国の諺ですが、恩義を忘れてしまうと、言動に出ますので、やがて仕事が無くなっていきます。そういう残念な人も見てきました。面白いもので、恩義が分からない人は、音楽以外の分野に行っても必ず失敗しますね。

3) 作曲家は長期戦。成功に驕らず、失敗に腐らず

 音楽家について、プロのスポーツ選手に喩えることがあります。高校球児の中でプロ野球選手になれる確率、その中で一軍のレギュラーにな れる確率などを例に、音楽家の仕事の厳しさを説明するのです。
 ただ大きく違うのは、スポーツ選手には年齢的な限界がありますが、 作曲家には、年齢制限はありません。センスさえ古くならなければ、定年も無く、一生できる仕事です。
つまり、作曲家という職業は長期戦なのです。一時期の成功に驕ると、 落とし穴が待っています。謙虚さを忘れてはなりません。また、一度や二度の失敗で腐る必要もありません。チャンスは必ず巡ってくるものです。腐らずに、良い作品を作っていきましょう。

 『プロ直伝!職業作曲家への道』(2013年7月刊)Chapter7から

 改めて読み直して、「本当にそうだなー」と思います。「人生篇」という言い方は大げさですが、音楽家を仕事に選ぶということは、人生と音楽を重ね合わせて生きていくこととイコールです。自らの幸運を信じ、縁を一つ一つ大切にし、長期戦でポジティブに作品を作り続ける。そして作品が発表できる環境が得られていくことに感謝する。プロ作曲家になるというのは、そんな人生を選ぶという意味なんです。成功した人は、全員と言って良いくらいそのことを理解、実践しています。「山口ゼミ」を始めてから一流の作曲家と講座などにお招きして話す機会が増えましたが、「僕は運が良いだけなんです」「こうなれたのは**さんのおかげで、今でも仕事しています」という発言をする人がなんと多いことか!そういう考えの人が成功するのか、成功していくプロセスで学んでいくのかわかりませんが、おそらく両方なのでしょう。さらっと書いてしまいましたが、「ポップスでは、作品を創ることより場を得ることのほうが難しい」そのことを体感できるかどうかが長く続けられるかどうかの分かれ目ですね。説教臭く感じられたら本意ではないのですが、伝えずにはいられない「真実」です。

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