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paypal対応!中国法改正!仮想通貨とエンタメビジネス・著作権活用の近未来

 関連性は無い二つのニュースですが、同時期に出たことに時代の流れを感じます。

 ブロックチェーン技術の普及は、インターネットの普及と同じくらい社会に変化をもたらすと言われています。仮想通貨に対する投機的な期待やキャッシュレスで語られることも多いですが、お金のやり取りは信用のやりとりで、そこにはあらゆる契約、約束事のアップデートが含まれてきます。スマートコントラクトと言われていますが、エンタメビジネスを本質的に構造から変えることは間違いないでしょう。あまりにもこれまでの仕組みと違いすぎて、具体的にどうなるのかをイメージするのが難しいですね。

 Paypalのニュースは仮想通貨が一般化する大きな一歩という気がします。ビットコインなどの仮想通貨がわかりやすく解決することの一つが、海外送金の簡易化で、手数料を何十分の1にして、時間短縮などの利便性も著しく高めます。Paypalで使えるんだというのは、ユーザーとして対して海外入送金の必要性がそれほど高くない僕ですら、感覚的に便利になりそうだなと感じるニュースです。新しいサービスの普及にはこういう気分的なことも大きいですから、「Paypalで使えるよ」というのは実質以上に意味がある気がします。

 中国政府の法律改正も「いよいよ来るね」という感じがします。米中対立が本格化している中、アメリカ(+ヨーロッパ)中心の民主主義社会の秩序の外に、中国(共産党政府)中心の世界をつくろうとする中国の国家的野望とデジタル人民元構想は明らかに強くリンクしています。今後の国際情勢において仮想通貨は焦点の一つになるでしょう。
 民主主義を前提としつつ、かつ中国の隣国である日本は、難しい舵取りになります。その難しさをチャンスに変えることを日本の政治家と経済界の指導者に期待したいです。

 さて、中国のことは置いておいても、エンタメビジネスにとって仮想通貨の普及は大きな影響があることは間違いありません。エンタメコンテンツの使用と対価の払い方をブロックチェーン技術は構造的変化を促します。

 これまでは権利の許諾はアナログにやらざるを得ませんでしたし、許諾のタイミングで契約と金銭発生を行うのが、ビジネスモデルでした。ブロックチェーン技術が広がることで、クリエイター(権利者側)が条件を定めて、それを認めた使用者が著作物を利用し、対価が支払われるという仕組みが成立します。そこでは仮想通貨が使われるのは自然です。少なくとも現金は渡せないので(笑)、デジタル通貨にはなりますね。
 ブロックチェーン技術の存在を知ったときに、僕が反射的に思ったのは、クリエイティブ・コモンズの世界が実現するのだなということです。クリエイターがn次創作含めて、自分のコンテンツの使用法と対価を定め、それに同意したクリエイターはn次創作し、使用者は利用するという世界です。ルール設定は行われています。思想としては素晴らしく、共感しつつも同時に、エンタメビジネスの世界でプロフェッショナルの端くれとして仕事している身として実効性が全く無いので、「屁の突っ張りにもならないよ」(下品ですいませんww)と思ってました。ブロックチェーン技術はクリエイターズコモンズ的なクリエイター主導のビジネス生態系の成立を可能にします。

 ブロックチェーン技術とそれに関わる人達について、僕は強い関心を持ってウォッチングしていますが、本気で取り組んでいる人たちは大きく二つに分けられると思いました。お金儲けが興味の中心の人と、起こり得る社会変革を目指す人です。前者は既に資金を手にして「億り人」とも言われ、投資の分野で活躍を始めているのですが、僕は興味ないし、彼らも僕に興味ないでしょう。後者の視点で取り組んでいる若い人には共感しますし、教わることも多いです。
 エンタメビジネス生態系を最も大切なクリエイティブを軸に根本から作り直す動きが進んでいくと思うので、そこには積極的に関わっていきたいです。

 ちなみに、昨年は経産省の助成金(J-LOD)の「ブロックチェーン技術を活用して、コンテンツの流通に関するシステムの開発・実証支援」の枠を使わせてもらい、音楽著作権のブロックチェーン活用の実証実験をGinco中心に行いました。作曲家が自ら楽曲情報を登録し、リリースが決まったら音楽出版社がその情報をUPDATEし、そのままJASRACやNexToneの「作品届」にするという実験です。紙ベースで昭和を引きずっている著作権情報登録の現状を、世界で最先端の仕組みになれる画期的なものなのですが、まだ業界的に実装には至っていません、「HashTune」というサービス名で、来年にはその実証実験をベースにしつつ、ソングライターとシンガー&レーベルのマッチングがワールドワイドにできるサービスにしていこうと、Studio ENTRE ✕ Gincoで準備しています。
 まだ創業チームは揃ってないので、興味のある人は連絡下さい!


<参考>

僕が委員を務めた経産省の検討会です。豪華メンバーでブロックチェーンの可能性をポジティブに話しました。音楽業界の既存勢力も呼んでいるところに経産省コンテンツ産業課の皆さんの本気を感じました。
音楽著作権活用の実証実験で「HashTune」が採択された記録です。
読書記録でブロックチェーン関係のオススメ書籍を紹介しています!



モチベーションあがります(^_-)